都内ベイエリアの高層マンションで暮らす恵美さん(仮名・42歳)は、小学生の娘(11歳)と大手通信会社に勤務する夫(43歳)の三人家族。イケメンで高収入の夫は「いいご主人」、専業主婦の恵美さんは「勝ち組」だと、女友達からの羨望を集めてきた。
だが、実際には夫のモラハラ、精神的暴力で日々追い詰められているという。
「夫はもともと理屈っぽい人で、神経質なところがありました。ひどくなったのはコロナ禍で完全テレワークになってからです。洗濯機や掃除機の音がうるさいと、すごい形相で怒り出す。仕方なく拭き掃除のみで音を出さないようにして、洗濯はすべてコインランドリーで済ませるようになりました」
在宅勤務の夫のために、1日3食を用意するのも一苦労だ。食卓に箸が並んでいないだけで、「どうやって食えばいいんだ!」と怒鳴り散らす。おかずが冷めていたり、盛りつけが崩れたりすると、「食べる気がしなくなった」と不貞腐れて席を立ってしまう。
Photo by iStock
献立に悩む恵美さんが、「今日は何が食べたい?」と尋ねると暴言が返ってくる。「いちいち俺に聞かなきゃ、わからないのか。最低のクズだな」たまらず言い返すと、夫は荒々しくドアを閉め、自室にこもって出てこない。それでいて自分だけフードデリバリーを頼み、恵美さんに見せつけるように「やっとまともな飯にありつけた」とニヤニヤしながら食べたりする。在宅勤務でモラハラがエスカレート出勤の必要がなく時間に余裕があるせいか、家庭内の些細なことにも口出しする。夫が脱いだスラックスをハンガーに掛けたときにはこう言われた。「このやり方じゃ型崩れするだろ。おまえはまともなことがなんにもできないな」調味料ケースの醤油とソースの位置が入れ替わっているだけで注意される。「整理整頓がなってない。主婦のくせに、どこ見て家事をやってるんだよ」 冷蔵庫への食品の収納、食器棚の食器の並べ方、観葉植物の配置など、夫は自分の思い通りにならないと気が済まないという。「夫はテレワークの合間に、何度もコーヒーを飲むんです。私が気を遣ってコーヒーを出すと、何が気に入らないのか全部捨てて自分で入れ直す。それなら好きなようにやってもらったほうがいいのかなと思うでしょ?」自分の都合のいいタイミングで飲みたいのだろう、 恵美さんはそう思ってコーヒーを出すのをやめた。すると夫は、ダイニングテーブルをドンとこぶしで叩き、冷たく吐き捨てた。「俺のカネで生きてるくせに、コーヒー1杯も出さない。結婚する女を間違えたよ」スマホの履歴も「監視」される度重なる夫の暴言だけでもビクビクする恵美さんだが、1年前からは別の問題にも悩んでいる。「ウチでは子どもにスマホを持たせていない。でもユーチューブを見たがるので、ときどき私のスマホやパソコンを使わせていたんです。もちろんパスワードは設定してましたが、夫が子どもから聞き出したんです」 夫は恵美さんに無断でスマホのロックを解除、LINEのトークやネットの閲覧履歴をチェックするようになった。まるで「監視」だ。「そういうことはやめてほしいと頼みました。そしたら意外なことを言い出したんです」「おまえのためを思ってやっている」――それが夫の言い分だという。「以前、私が宅配便を名乗るメッセージに返信し、危うくフィッシング詐欺に引っかかりかけたんです。夫は通信会社で働いているので、セキュリティやトラブルに詳しい。だから私を守るためのチェックだ、感謝しろと言うんです」そういう理屈を持ち出されるとは思っていなかった恵美さんは、それ以上抗議できない。「妻を守るためのスマホチェック」という名の監視を、受け入れるしかなかった。「何度も離婚を考えたし、そのための情報収集や仕事探しもしたいんです。でも、検索履歴で私の考えが夫に筒抜けになるんじゃないか、そしたらもっとひどい目に遭うかもしれないとつい後ろ向きになってしまいます」モラハラで自己否定がクセに検索履歴が残らないよう設定を変えても、夫がいつの間にか元に戻してしまう。LINEで友人に相談したくても、いつなんどきトーク画面をのぞき見されるかと思うと怖くて躊躇する。これまで受けたモラハラの数々で、恵美さんは不眠や動悸など精神的不調に陥っているという。Photo by iStock 「夫から『おまえなんか世間じゃ絶対通用しない』『バカは家の中でおとなしくしてろ』と言われつづけたせいか、どうしても自分を否定しちゃう。私では無理だ、離婚せず我慢しよう、そういう思考になりやすいんです」夫は殴ったり蹴ったりするわけではなく、生活費も自由に使わせてくれる。機嫌がよければ高級レストランでの外食に誘うなど「落差」が大きい。おまけに専業主婦の恵美さんは、経済的な問題も考えざるを得ない。私立小学校に通い、バレエやピアノ、英会話などの習い事をする子どもの教育費だけでも年間約200万円だ。「もしも離婚を選択すれば、子どもは夫の元に置いていくことになるかもしれない。そもそも夫の性格上、円満離婚できるとは思えません。嫌がらせやストーカー行為も十分考えられるし、子どもの親権を争って裁判になる可能性もあるでしょう。そういうことを考えただけで、やっぱり今の生活に耐えるしかないかなって」*当事者のプライバシーを考慮し、取材内容の一部を改変していますモラハラに苦しむ女性は誰に相談すればよいのか。そしてモラハラに我慢続ける日々に終止符を打つにはどうすればよいのか。後編記事『エリート夫のヤバすぎるモラハラ…悩み苦しむ42歳妻が勇気をもらえた「小さなきっかけ」』で引き続き紹介する。
献立に悩む恵美さんが、「今日は何が食べたい?」と尋ねると暴言が返ってくる。
「いちいち俺に聞かなきゃ、わからないのか。最低のクズだな」
たまらず言い返すと、夫は荒々しくドアを閉め、自室にこもって出てこない。
それでいて自分だけフードデリバリーを頼み、恵美さんに見せつけるように「やっとまともな飯にありつけた」とニヤニヤしながら食べたりする。
出勤の必要がなく時間に余裕があるせいか、家庭内の些細なことにも口出しする。
夫が脱いだスラックスをハンガーに掛けたときにはこう言われた。
「このやり方じゃ型崩れするだろ。おまえはまともなことがなんにもできないな」
調味料ケースの醤油とソースの位置が入れ替わっているだけで注意される。
「整理整頓がなってない。主婦のくせに、どこ見て家事をやってるんだよ」
冷蔵庫への食品の収納、食器棚の食器の並べ方、観葉植物の配置など、夫は自分の思い通りにならないと気が済まないという。「夫はテレワークの合間に、何度もコーヒーを飲むんです。私が気を遣ってコーヒーを出すと、何が気に入らないのか全部捨てて自分で入れ直す。それなら好きなようにやってもらったほうがいいのかなと思うでしょ?」自分の都合のいいタイミングで飲みたいのだろう、 恵美さんはそう思ってコーヒーを出すのをやめた。すると夫は、ダイニングテーブルをドンとこぶしで叩き、冷たく吐き捨てた。「俺のカネで生きてるくせに、コーヒー1杯も出さない。結婚する女を間違えたよ」スマホの履歴も「監視」される度重なる夫の暴言だけでもビクビクする恵美さんだが、1年前からは別の問題にも悩んでいる。「ウチでは子どもにスマホを持たせていない。でもユーチューブを見たがるので、ときどき私のスマホやパソコンを使わせていたんです。もちろんパスワードは設定してましたが、夫が子どもから聞き出したんです」 夫は恵美さんに無断でスマホのロックを解除、LINEのトークやネットの閲覧履歴をチェックするようになった。まるで「監視」だ。「そういうことはやめてほしいと頼みました。そしたら意外なことを言い出したんです」「おまえのためを思ってやっている」――それが夫の言い分だという。「以前、私が宅配便を名乗るメッセージに返信し、危うくフィッシング詐欺に引っかかりかけたんです。夫は通信会社で働いているので、セキュリティやトラブルに詳しい。だから私を守るためのチェックだ、感謝しろと言うんです」そういう理屈を持ち出されるとは思っていなかった恵美さんは、それ以上抗議できない。「妻を守るためのスマホチェック」という名の監視を、受け入れるしかなかった。「何度も離婚を考えたし、そのための情報収集や仕事探しもしたいんです。でも、検索履歴で私の考えが夫に筒抜けになるんじゃないか、そしたらもっとひどい目に遭うかもしれないとつい後ろ向きになってしまいます」モラハラで自己否定がクセに検索履歴が残らないよう設定を変えても、夫がいつの間にか元に戻してしまう。LINEで友人に相談したくても、いつなんどきトーク画面をのぞき見されるかと思うと怖くて躊躇する。これまで受けたモラハラの数々で、恵美さんは不眠や動悸など精神的不調に陥っているという。Photo by iStock 「夫から『おまえなんか世間じゃ絶対通用しない』『バカは家の中でおとなしくしてろ』と言われつづけたせいか、どうしても自分を否定しちゃう。私では無理だ、離婚せず我慢しよう、そういう思考になりやすいんです」夫は殴ったり蹴ったりするわけではなく、生活費も自由に使わせてくれる。機嫌がよければ高級レストランでの外食に誘うなど「落差」が大きい。おまけに専業主婦の恵美さんは、経済的な問題も考えざるを得ない。私立小学校に通い、バレエやピアノ、英会話などの習い事をする子どもの教育費だけでも年間約200万円だ。「もしも離婚を選択すれば、子どもは夫の元に置いていくことになるかもしれない。そもそも夫の性格上、円満離婚できるとは思えません。嫌がらせやストーカー行為も十分考えられるし、子どもの親権を争って裁判になる可能性もあるでしょう。そういうことを考えただけで、やっぱり今の生活に耐えるしかないかなって」*当事者のプライバシーを考慮し、取材内容の一部を改変していますモラハラに苦しむ女性は誰に相談すればよいのか。そしてモラハラに我慢続ける日々に終止符を打つにはどうすればよいのか。後編記事『エリート夫のヤバすぎるモラハラ…悩み苦しむ42歳妻が勇気をもらえた「小さなきっかけ」』で引き続き紹介する。
冷蔵庫への食品の収納、食器棚の食器の並べ方、観葉植物の配置など、夫は自分の思い通りにならないと気が済まないという。
「夫はテレワークの合間に、何度もコーヒーを飲むんです。私が気を遣ってコーヒーを出すと、何が気に入らないのか全部捨てて自分で入れ直す。それなら好きなようにやってもらったほうがいいのかなと思うでしょ?」
自分の都合のいいタイミングで飲みたいのだろう、 恵美さんはそう思ってコーヒーを出すのをやめた。
すると夫は、ダイニングテーブルをドンとこぶしで叩き、冷たく吐き捨てた。
「俺のカネで生きてるくせに、コーヒー1杯も出さない。結婚する女を間違えたよ」
度重なる夫の暴言だけでもビクビクする恵美さんだが、1年前からは別の問題にも悩んでいる。
「ウチでは子どもにスマホを持たせていない。でもユーチューブを見たがるので、ときどき私のスマホやパソコンを使わせていたんです。もちろんパスワードは設定してましたが、夫が子どもから聞き出したんです」
夫は恵美さんに無断でスマホのロックを解除、LINEのトークやネットの閲覧履歴をチェックするようになった。まるで「監視」だ。「そういうことはやめてほしいと頼みました。そしたら意外なことを言い出したんです」「おまえのためを思ってやっている」――それが夫の言い分だという。「以前、私が宅配便を名乗るメッセージに返信し、危うくフィッシング詐欺に引っかかりかけたんです。夫は通信会社で働いているので、セキュリティやトラブルに詳しい。だから私を守るためのチェックだ、感謝しろと言うんです」そういう理屈を持ち出されるとは思っていなかった恵美さんは、それ以上抗議できない。「妻を守るためのスマホチェック」という名の監視を、受け入れるしかなかった。「何度も離婚を考えたし、そのための情報収集や仕事探しもしたいんです。でも、検索履歴で私の考えが夫に筒抜けになるんじゃないか、そしたらもっとひどい目に遭うかもしれないとつい後ろ向きになってしまいます」モラハラで自己否定がクセに検索履歴が残らないよう設定を変えても、夫がいつの間にか元に戻してしまう。LINEで友人に相談したくても、いつなんどきトーク画面をのぞき見されるかと思うと怖くて躊躇する。これまで受けたモラハラの数々で、恵美さんは不眠や動悸など精神的不調に陥っているという。Photo by iStock 「夫から『おまえなんか世間じゃ絶対通用しない』『バカは家の中でおとなしくしてろ』と言われつづけたせいか、どうしても自分を否定しちゃう。私では無理だ、離婚せず我慢しよう、そういう思考になりやすいんです」夫は殴ったり蹴ったりするわけではなく、生活費も自由に使わせてくれる。機嫌がよければ高級レストランでの外食に誘うなど「落差」が大きい。おまけに専業主婦の恵美さんは、経済的な問題も考えざるを得ない。私立小学校に通い、バレエやピアノ、英会話などの習い事をする子どもの教育費だけでも年間約200万円だ。「もしも離婚を選択すれば、子どもは夫の元に置いていくことになるかもしれない。そもそも夫の性格上、円満離婚できるとは思えません。嫌がらせやストーカー行為も十分考えられるし、子どもの親権を争って裁判になる可能性もあるでしょう。そういうことを考えただけで、やっぱり今の生活に耐えるしかないかなって」*当事者のプライバシーを考慮し、取材内容の一部を改変していますモラハラに苦しむ女性は誰に相談すればよいのか。そしてモラハラに我慢続ける日々に終止符を打つにはどうすればよいのか。後編記事『エリート夫のヤバすぎるモラハラ…悩み苦しむ42歳妻が勇気をもらえた「小さなきっかけ」』で引き続き紹介する。
夫は恵美さんに無断でスマホのロックを解除、LINEのトークやネットの閲覧履歴をチェックするようになった。まるで「監視」だ。
「そういうことはやめてほしいと頼みました。そしたら意外なことを言い出したんです」
「おまえのためを思ってやっている」――それが夫の言い分だという。
「以前、私が宅配便を名乗るメッセージに返信し、危うくフィッシング詐欺に引っかかりかけたんです。夫は通信会社で働いているので、セキュリティやトラブルに詳しい。だから私を守るためのチェックだ、感謝しろと言うんです」
そういう理屈を持ち出されるとは思っていなかった恵美さんは、それ以上抗議できない。「妻を守るためのスマホチェック」という名の監視を、受け入れるしかなかった。
「何度も離婚を考えたし、そのための情報収集や仕事探しもしたいんです。でも、検索履歴で私の考えが夫に筒抜けになるんじゃないか、そしたらもっとひどい目に遭うかもしれないとつい後ろ向きになってしまいます」
検索履歴が残らないよう設定を変えても、夫がいつの間にか元に戻してしまう。LINEで友人に相談したくても、いつなんどきトーク画面をのぞき見されるかと思うと怖くて躊躇する。
これまで受けたモラハラの数々で、恵美さんは不眠や動悸など精神的不調に陥っているという。
Photo by iStock
「夫から『おまえなんか世間じゃ絶対通用しない』『バカは家の中でおとなしくしてろ』と言われつづけたせいか、どうしても自分を否定しちゃう。私では無理だ、離婚せず我慢しよう、そういう思考になりやすいんです」夫は殴ったり蹴ったりするわけではなく、生活費も自由に使わせてくれる。機嫌がよければ高級レストランでの外食に誘うなど「落差」が大きい。おまけに専業主婦の恵美さんは、経済的な問題も考えざるを得ない。私立小学校に通い、バレエやピアノ、英会話などの習い事をする子どもの教育費だけでも年間約200万円だ。「もしも離婚を選択すれば、子どもは夫の元に置いていくことになるかもしれない。そもそも夫の性格上、円満離婚できるとは思えません。嫌がらせやストーカー行為も十分考えられるし、子どもの親権を争って裁判になる可能性もあるでしょう。そういうことを考えただけで、やっぱり今の生活に耐えるしかないかなって」*当事者のプライバシーを考慮し、取材内容の一部を改変していますモラハラに苦しむ女性は誰に相談すればよいのか。そしてモラハラに我慢続ける日々に終止符を打つにはどうすればよいのか。後編記事『エリート夫のヤバすぎるモラハラ…悩み苦しむ42歳妻が勇気をもらえた「小さなきっかけ」』で引き続き紹介する。
「夫から『おまえなんか世間じゃ絶対通用しない』『バカは家の中でおとなしくしてろ』と言われつづけたせいか、どうしても自分を否定しちゃう。私では無理だ、離婚せず我慢しよう、そういう思考になりやすいんです」
夫は殴ったり蹴ったりするわけではなく、生活費も自由に使わせてくれる。機嫌がよければ高級レストランでの外食に誘うなど「落差」が大きい。
おまけに専業主婦の恵美さんは、経済的な問題も考えざるを得ない。私立小学校に通い、バレエやピアノ、英会話などの習い事をする子どもの教育費だけでも年間約200万円だ。
「もしも離婚を選択すれば、子どもは夫の元に置いていくことになるかもしれない。そもそも夫の性格上、円満離婚できるとは思えません。嫌がらせやストーカー行為も十分考えられるし、子どもの親権を争って裁判になる可能性もあるでしょう。そういうことを考えただけで、やっぱり今の生活に耐えるしかないかなって」
*当事者のプライバシーを考慮し、取材内容の一部を改変しています
モラハラに苦しむ女性は誰に相談すればよいのか。そしてモラハラに我慢続ける日々に終止符を打つにはどうすればよいのか。後編記事『エリート夫のヤバすぎるモラハラ…悩み苦しむ42歳妻が勇気をもらえた「小さなきっかけ」』で引き続き紹介する。