「過干渉な親に『裏切者!』と責められ…」“穏健派キッズ”の10代男女がそれでもトー横に通う「切実な理由」とは… から続く
歌舞伎町・新宿東宝ビル横の広場などに集う少年少女たち、通称“トー横キッズ”。その“原因”として「家庭崩壊」「家に居場所がない」という言葉がよく聞かれる。となれば非難はキッズの親に集中することになる。
【写真】太ももをあらわにした格好でくつろぐキッズ
トー横に通うようになった娘のA子さん(15)について、時折涙を流しながら語りはじめたのはその母親だった。
かなり幼く見える女子がスーツケースを引いて広場に現れることも
「トー横の記事を読むたびに、子どもたちの『居場所がない』という言葉が当たり前のように使われていて正直傷つきます。家族の仲はよかったと思っていたのに、A子はそれを居場所だと思っていなかったのか、って。A子が出入りしていると知る前から『トー横』という言葉は知っていました。でもそれはあくまでテレビの画面の中の話で、自分の子供が関係することになるなんて普通思わないじゃないですか……」
メディアを通して見る「トー横」は、飲酒やパパ活は当たり前、大麻や薬物のオーバードーズも横行する狂気の場所に見えたという。そんな場所に娘のA子さんを奪われたことに、母親は大きな喪失感を味わっていた。
A子さんは現在中学3年生で、10月から児童相談所に一時保護されて家を離れている。酒に酔って暴れたところを、保護されたのだ。
「子供の変化に気づけない親の責任」「親から虐待を受けている」などと、トー横キッズが生まれた“原因”が語られるたび、A子さんの母親は周囲に相談もできず、ひとり頭を悩ませ続けてきた。トー横なんて場所さえなければ――と。 娘のA子さんは神奈川県で、サラリーマンの父親と専業主婦の母親のもとで育った。小学校ではいわゆる「一軍女子」で、学年の人気者で成績もよかったという。中学校に入っても部活動では部長を務める責任感が強い女子だった。「学校の先生からの評判はよかったですね。制服を着崩すこともなかったし、ピアスも『したいけど高校まで我慢する』と自制していました。小学生の頃に塾に通いはじめて、成績もどんどん伸びていきました。自他ともに認める優等生だったと思います。でもいま振り返れば、半年前ぐらいから友達と新宿に出かけることが増えたり、妙に高いテンションで帰ってきて『お酒を飲んでいるのかな』と思うことは確かにありました。YouTubeにトー横の動画の視聴履歴が残っていたこともあり、『ママ、そういうのやだからね』と声をかけたこともあります」 服を買ってくると言って新宿へ出かけたり、地雷系ファッションに興味を持ち始めた時にも、母親は「世間では“中2病”という言葉もあるし」と自分に言い聞かせていた。 しかし8月、A子さんのトー横通いが決定的になる事件が起きた。「ある日、A子はいつもと同じように『友達と遊んでくる』といって出かけていきました。でもその夜、突然警察から『A子さんを補導したので来てほしい』と連絡がきたんです。慌てて迎えにいくとA子は明らかに泥酔していて、帰ろうと言っても『お前なんかとは絶対帰らない』と聞いたこともない言葉遣いで罵倒されました。何をしていたの? 友達はどうしたの? と聞くと、『そんなの全部嘘なんだよ! ネットで知り合った人と新宿行ってた!』と突然カミングアウトされました」「『居場所がない』というのが、私には何のことなのかわからなくて……」 後日、警察からは「家に居場所がない。ママが嫌いだからトー横に行ってお酒を飲んだ」というA子さんの言い分を伝えられた。「『居場所がない』という意味が、私には何のことなのかわからなくて……。A子が勉強している時は1人の時間を大切にできるように近づかないようにしていました。家の中で会話がないとかネグレクトとか、そういうのは絶対なかったはずで、休日に一緒に買い物に行くこともありました。A子とは話をして寄り添えばよくなるんじゃないかなと思っていました」 警察からのアドバイスは「トー横へ行くなと言っても隠れて行くケースが多いので、コミュニケーションをとって見守ることが大切」というものだった。 母親はA子さんと話し合い、トー横に行くこと自体は認めるが、8時に帰って来るという門限を決めた。しかし門限が守られることはなかった。最初の1、2回は「ごめん、時間過ぎるけど急いで帰る」といった連絡こそあったが、その後は泥酔して立てない状態で帰って来ることも珍しくはなくなった。そして9月、ついに救急隊からA子さんがトー横広場で急性アルコール中毒で倒れたという電話が入る。オーバードーズで倒れたA子さんが「広場にいきたい」「A子が帰ってきたら夕飯を食べようと思っていた7時ごろに電話がきました。トー横へ急いで1人で向かうと、近くの交番の前に救急車が停まっていました。A子は瞳孔が開いていて、薬物を大量に摂取していると救急隊の人に言われました。とにかく頭が真っ白で、よくショックで倒れそうになるという話がありますけど、本当にそんな感じ。すぐに病院に搬送され、点滴を受けて2時間もすると回復してきたので家に帰ろうと言ったら、A子から出てきた言葉は『広場にいきたい』でした」 翌日、母親は学校に行きたくないというA子さんを車に乗せて学校に向かった。するとA子さんは車内で「最近メンブレ(メンタルブレイク)がひどいから、病院にいきたい」と呟いた。母親は8月にトー横の出入りが発覚してから、非行に走るA子さんに通院を勧めていたというが、ようやく本人が納得してくれた。まだなんとかなるかもしれない、と母親は思っていた。(#4に続く)「すみませーん虐待です! 虐待されてます!」母親を厚底の靴で蹴った15歳の娘が交番に駆け込んで発した“衝撃の一言“とは へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「子供の変化に気づけない親の責任」「親から虐待を受けている」などと、トー横キッズが生まれた“原因”が語られるたび、A子さんの母親は周囲に相談もできず、ひとり頭を悩ませ続けてきた。トー横なんて場所さえなければ――と。
娘のA子さんは神奈川県で、サラリーマンの父親と専業主婦の母親のもとで育った。小学校ではいわゆる「一軍女子」で、学年の人気者で成績もよかったという。中学校に入っても部活動では部長を務める責任感が強い女子だった。
「学校の先生からの評判はよかったですね。制服を着崩すこともなかったし、ピアスも『したいけど高校まで我慢する』と自制していました。小学生の頃に塾に通いはじめて、成績もどんどん伸びていきました。自他ともに認める優等生だったと思います。でもいま振り返れば、半年前ぐらいから友達と新宿に出かけることが増えたり、妙に高いテンションで帰ってきて『お酒を飲んでいるのかな』と思うことは確かにありました。YouTubeにトー横の動画の視聴履歴が残っていたこともあり、『ママ、そういうのやだからね』と声をかけたこともあります」
服を買ってくると言って新宿へ出かけたり、地雷系ファッションに興味を持ち始めた時にも、母親は「世間では“中2病”という言葉もあるし」と自分に言い聞かせていた。
しかし8月、A子さんのトー横通いが決定的になる事件が起きた。
「ある日、A子はいつもと同じように『友達と遊んでくる』といって出かけていきました。でもその夜、突然警察から『A子さんを補導したので来てほしい』と連絡がきたんです。慌てて迎えにいくとA子は明らかに泥酔していて、帰ろうと言っても『お前なんかとは絶対帰らない』と聞いたこともない言葉遣いで罵倒されました。何をしていたの? 友達はどうしたの? と聞くと、『そんなの全部嘘なんだよ! ネットで知り合った人と新宿行ってた!』と突然カミングアウトされました」「『居場所がない』というのが、私には何のことなのかわからなくて……」 後日、警察からは「家に居場所がない。ママが嫌いだからトー横に行ってお酒を飲んだ」というA子さんの言い分を伝えられた。「『居場所がない』という意味が、私には何のことなのかわからなくて……。A子が勉強している時は1人の時間を大切にできるように近づかないようにしていました。家の中で会話がないとかネグレクトとか、そういうのは絶対なかったはずで、休日に一緒に買い物に行くこともありました。A子とは話をして寄り添えばよくなるんじゃないかなと思っていました」 警察からのアドバイスは「トー横へ行くなと言っても隠れて行くケースが多いので、コミュニケーションをとって見守ることが大切」というものだった。 母親はA子さんと話し合い、トー横に行くこと自体は認めるが、8時に帰って来るという門限を決めた。しかし門限が守られることはなかった。最初の1、2回は「ごめん、時間過ぎるけど急いで帰る」といった連絡こそあったが、その後は泥酔して立てない状態で帰って来ることも珍しくはなくなった。そして9月、ついに救急隊からA子さんがトー横広場で急性アルコール中毒で倒れたという電話が入る。オーバードーズで倒れたA子さんが「広場にいきたい」「A子が帰ってきたら夕飯を食べようと思っていた7時ごろに電話がきました。トー横へ急いで1人で向かうと、近くの交番の前に救急車が停まっていました。A子は瞳孔が開いていて、薬物を大量に摂取していると救急隊の人に言われました。とにかく頭が真っ白で、よくショックで倒れそうになるという話がありますけど、本当にそんな感じ。すぐに病院に搬送され、点滴を受けて2時間もすると回復してきたので家に帰ろうと言ったら、A子から出てきた言葉は『広場にいきたい』でした」 翌日、母親は学校に行きたくないというA子さんを車に乗せて学校に向かった。するとA子さんは車内で「最近メンブレ(メンタルブレイク)がひどいから、病院にいきたい」と呟いた。母親は8月にトー横の出入りが発覚してから、非行に走るA子さんに通院を勧めていたというが、ようやく本人が納得してくれた。まだなんとかなるかもしれない、と母親は思っていた。(#4に続く)「すみませーん虐待です! 虐待されてます!」母親を厚底の靴で蹴った15歳の娘が交番に駆け込んで発した“衝撃の一言“とは へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「ある日、A子はいつもと同じように『友達と遊んでくる』といって出かけていきました。でもその夜、突然警察から『A子さんを補導したので来てほしい』と連絡がきたんです。慌てて迎えにいくとA子は明らかに泥酔していて、帰ろうと言っても『お前なんかとは絶対帰らない』と聞いたこともない言葉遣いで罵倒されました。何をしていたの? 友達はどうしたの? と聞くと、『そんなの全部嘘なんだよ! ネットで知り合った人と新宿行ってた!』と突然カミングアウトされました」
後日、警察からは「家に居場所がない。ママが嫌いだからトー横に行ってお酒を飲んだ」というA子さんの言い分を伝えられた。
「『居場所がない』という意味が、私には何のことなのかわからなくて……。A子が勉強している時は1人の時間を大切にできるように近づかないようにしていました。家の中で会話がないとかネグレクトとか、そういうのは絶対なかったはずで、休日に一緒に買い物に行くこともありました。A子とは話をして寄り添えばよくなるんじゃないかなと思っていました」
警察からのアドバイスは「トー横へ行くなと言っても隠れて行くケースが多いので、コミュニケーションをとって見守ることが大切」というものだった。 母親はA子さんと話し合い、トー横に行くこと自体は認めるが、8時に帰って来るという門限を決めた。しかし門限が守られることはなかった。最初の1、2回は「ごめん、時間過ぎるけど急いで帰る」といった連絡こそあったが、その後は泥酔して立てない状態で帰って来ることも珍しくはなくなった。そして9月、ついに救急隊からA子さんがトー横広場で急性アルコール中毒で倒れたという電話が入る。オーバードーズで倒れたA子さんが「広場にいきたい」「A子が帰ってきたら夕飯を食べようと思っていた7時ごろに電話がきました。トー横へ急いで1人で向かうと、近くの交番の前に救急車が停まっていました。A子は瞳孔が開いていて、薬物を大量に摂取していると救急隊の人に言われました。とにかく頭が真っ白で、よくショックで倒れそうになるという話がありますけど、本当にそんな感じ。すぐに病院に搬送され、点滴を受けて2時間もすると回復してきたので家に帰ろうと言ったら、A子から出てきた言葉は『広場にいきたい』でした」 翌日、母親は学校に行きたくないというA子さんを車に乗せて学校に向かった。するとA子さんは車内で「最近メンブレ(メンタルブレイク)がひどいから、病院にいきたい」と呟いた。母親は8月にトー横の出入りが発覚してから、非行に走るA子さんに通院を勧めていたというが、ようやく本人が納得してくれた。まだなんとかなるかもしれない、と母親は思っていた。(#4に続く)「すみませーん虐待です! 虐待されてます!」母親を厚底の靴で蹴った15歳の娘が交番に駆け込んで発した“衝撃の一言“とは へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
警察からのアドバイスは「トー横へ行くなと言っても隠れて行くケースが多いので、コミュニケーションをとって見守ることが大切」というものだった。
母親はA子さんと話し合い、トー横に行くこと自体は認めるが、8時に帰って来るという門限を決めた。しかし門限が守られることはなかった。最初の1、2回は「ごめん、時間過ぎるけど急いで帰る」といった連絡こそあったが、その後は泥酔して立てない状態で帰って来ることも珍しくはなくなった。そして9月、ついに救急隊からA子さんがトー横広場で急性アルコール中毒で倒れたという電話が入る。
オーバードーズで倒れたA子さんが「広場にいきたい」「A子が帰ってきたら夕飯を食べようと思っていた7時ごろに電話がきました。トー横へ急いで1人で向かうと、近くの交番の前に救急車が停まっていました。A子は瞳孔が開いていて、薬物を大量に摂取していると救急隊の人に言われました。とにかく頭が真っ白で、よくショックで倒れそうになるという話がありますけど、本当にそんな感じ。すぐに病院に搬送され、点滴を受けて2時間もすると回復してきたので家に帰ろうと言ったら、A子から出てきた言葉は『広場にいきたい』でした」 翌日、母親は学校に行きたくないというA子さんを車に乗せて学校に向かった。するとA子さんは車内で「最近メンブレ(メンタルブレイク)がひどいから、病院にいきたい」と呟いた。母親は8月にトー横の出入りが発覚してから、非行に走るA子さんに通院を勧めていたというが、ようやく本人が納得してくれた。まだなんとかなるかもしれない、と母親は思っていた。(#4に続く)「すみませーん虐待です! 虐待されてます!」母親を厚底の靴で蹴った15歳の娘が交番に駆け込んで発した“衝撃の一言“とは へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「A子が帰ってきたら夕飯を食べようと思っていた7時ごろに電話がきました。トー横へ急いで1人で向かうと、近くの交番の前に救急車が停まっていました。A子は瞳孔が開いていて、薬物を大量に摂取していると救急隊の人に言われました。とにかく頭が真っ白で、よくショックで倒れそうになるという話がありますけど、本当にそんな感じ。すぐに病院に搬送され、点滴を受けて2時間もすると回復してきたので家に帰ろうと言ったら、A子から出てきた言葉は『広場にいきたい』でした」
翌日、母親は学校に行きたくないというA子さんを車に乗せて学校に向かった。するとA子さんは車内で「最近メンブレ(メンタルブレイク)がひどいから、病院にいきたい」と呟いた。母親は8月にトー横の出入りが発覚してから、非行に走るA子さんに通院を勧めていたというが、ようやく本人が納得してくれた。まだなんとかなるかもしれない、と母親は思っていた。(#4に続く)
「すみませーん虐待です! 虐待されてます!」母親を厚底の靴で蹴った15歳の娘が交番に駆け込んで発した“衝撃の一言“とは へ続く
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))