知り合って仲良くなった夫婦なら、いい関係でいたいと思うのは当たり前ですよね。でも、「友達」だとこちらは思っていても、相手にとってはちょっと違う存在かもと気がつくと、それまで向けていた好意も消えてしまうもの。
「仲のいい友人に、ゴミを渡しますかね?」 佐々木美恵さん(36歳)は、PTA活動で知り合った夫婦との短い付き合いを振り返りながら苦い顔で言います。
それまでの違和感がはっきりと形になった瞬間について、お話を聞きました。
◆小学校のPTAで出会ったある夫婦
美恵さんがその夫婦と知り合ったのは、娘が通う小学校のPTAでした。部会で隣の席になったとき、夫婦で参加しているのが珍しくて思わず声をかけたそうです。
「おふたりとも笑顔で『うちは自営業で時間があるから』と話してくれて、我が家は夫が忙しくてPTAは私しか動けなかったので羨ましいなと思ったのを覚えています。子どものこととかいろいろ話していたら近所だとわかり、それからお付き合いが始まりました」
LINEのIDを交換し、それからは世間話や家族のことなどを少しずつ話すようになった美恵さん。
あっけらかんとした性格の奥さんと、おおらかな雰囲気だけど存在感のある旦那さんは、時間のあるときなど美恵さんを気軽にお茶に誘ってくれて、家にお邪魔しては三人で話すときが多かったといいます。
◆押しの強さにモヤッ
最初のうちは学校のことなどで盛り上がることが楽しかった美恵さんですが、「たまに困った」のは、野菜のおすそ分けで連絡をもらい「今うちにもたくさんあるから」と断っても家まで持ってきたり、忙しくて遊びに行けないと話しても「ご飯を作ったから待ってる」と子を連れて遊びに来ることを強要されたり、向こうのペースにのまれること。
「押しの強い夫婦だなと思っていました。でも、好意で野菜を分けようとしてくれるのもわかるし、むげに断るのが申し訳なくて、本当はいらないけれどお礼を言って受け取ることがよくありましたね」
そんな美恵さんの気遣いを知ってか知らずか、ご夫婦はそれからも「余っているから」とノートをくれるなど、一方的な関わりを続けていました。
◆ゴミ袋を渡されてア然、中身は?
ある日、ご夫婦に「遊びに来ない?」と誘われた美恵さんは手土産を持って向かいました。
「その少し前に『買いすぎたから』とお菓子をいただいていて、お礼をしたかったのでちょうどよかったとそのときは思いました。もらいっぱなしでは申し訳ないし、うちはあげるものなどないから、それまでの感謝もこめてちょっと高めのお菓子を買っていきました」
美恵さんが部屋に入ると、リビングにはたくさんのゴミ袋が置かれていてびっくりします。
どうしたのか聞いてみると「明日、不燃物で捨てるものなの」と言われ、納得してソファに座ったらすぐに奥さんが袋の一つを美恵さんの前に持ってきました。
何だろうと見ていたら、「これ、あげる」と言われたので開いてみると、なかには焦げたフライパンに使い古しのおもちゃのブロックが。
◆「それ有名なブランド品なんだぞ」
「え?」「意味がわからず思わず声を挙げた」と話す美恵さんは、奥さんの意図がわからずに混乱したそうです。
「まだ使えるのよ。もったいないから」と重ねて言うけれど、持ち手は焦げて錆びの浮いたフライパンをこちらに渡そうとする奥さんの姿は、美恵さんには受け入れられないものでした。
「いえ、フライパンは間に合っているから……」と何とか答えた美恵さんに、「それ、有名なブランド品なんだぞ。名前を見てみたらいい」とおどけた調子で言ってくるのは旦那さん。

「ありがたいけれど、この間買ったばかりのものがあって」 と、とっさの嘘を口にしました。
◆不用品を「思いやり」で押し付ける夫婦
そうか、と旦那さんは残念そうに答えましたが、問題は奥さんのほうでした。
「せっかく用意したのに。じゃあ、ブロックは持って帰る? この間、足りないと言っていたでしょう」と袋を漁ると、「これ、まだ使えるから」と子どもの落書きがされた一つをつまみ上げました。
薄汚れたブロックは、「触るのも嫌でした」と美恵さんは振り返ります。
◆急用ができたふりをして逃げる
「ああ、それもこの間新しいのを買ったから」とすぐに答え、この話は切り上げようとしたそうです。
「せっかく用意したのにって、どう考えても不用品を押し付けているようにしか見えなかったですね。本当にあげるつもりなら、そもそもゴミ袋なんかに入れないと思って。掃除の途中に渡すことを思いついて、そのまま処分しようとしたのでしょうね」
まだ何か言いたそうな奥さんを無視して、美恵さんは手土産をテーブルに置くと電話がかかってきたフリをしていったんリビングを出て、戻ると「急用ができた」と言い訳してすぐに家を出ます。
「このままリビングにいれば、押しの強いふたりに言い負かされる」と思った美恵さんは、とにかくその場を離れることで精一杯だったといいます。
◆それは「好意」じゃない
「思い返すと、それまでも私にくれたものって、不用品が多いんですよね。余ったノートとかお菓子とか、邪魔だから私にあげるって感じだったと気が付きました。私なら、錆びたフライパンなんてどれだけ有名なブランド品であっても人にあげようとは思わないです」
夫婦の気持ちは本当に好意や善意かもしれないけれど、じゃあすべて受け取らなければならないかというと、そうではないですよね。
「せっかく用意したもの」を断る美恵さんに夫婦が不満げな様子でも、関係が対等なら当然NOと言われる可能性はあり、それを責めるのは間違いです。自分の提案はすべて通るべき、となるとそれは友達ではありません。
◆なるべく会わないようにしている
「これまでのお礼もあってお菓子を買って行ったけれど、置いてきてよかったと思います。今まであげてきたことをネチネチと言われるなら困るし、断られて嫌な顔をするのって、私を下に見ている証拠じゃないですか」
そう言ってため息をつく美恵さんは、それ以来ご夫婦とは会う回数を減らし、家に行くのもやめているそうです。
善意や好意だとしても、押し付けられる側の気持ちを考えられない人とは、良い関係を築くのは難しいのが現実です。家も近所で完全に縁を切るのが難しい距離感なら、ストレスのない付き合い方を自分でコントロールしていくことも大切ですね。
―あなたの知らない“ヤバい夫婦”―<文/ひろたかおり>