「習近平(シージンピン)、下台(シャータイ・辞めろ)!」中国語のシュプレヒコールが上がったのは、東京・新宿駅南口。11月30日午後7時、500名以上の中国人が集まり、ゼロコロナ政策反対デモが行われた。
【写真を見る】習近平を揶揄する強烈な風刺画も 新宿で「辞めろ」と言われても、習近平には痛くもかゆくもないかもしれないが、彼にとっての問題はこうしたデモが国内外で広がっていることだろう。 発端は24日、新疆ウイグル自治区の封鎖されたマンションで起きた火災事故。これをきっかけに、中国全土にデモが広がっている。

政権批判が禁じられている中国では、まさに異例の事態である。新宿駅で行われた中国人デモ ここから、これまでたまった不満を晴らすかのように、日本を含む世界各地で在外中国人による反政権の動きが高まっているのだ。 奇しくもデモ当日は、江沢民元国家主席の逝去が報じられたばかり。早速、彼の肖像が現場にも登場。 騒然とする中で特に目立っていたのが、穏健派と過激派のすみ分けを促す看板だ。掲げていた中国人男性は、「どのような考えをもっているかは人それぞれ。静かに火災の犠牲者を追悼したい人、政権批判をしたい人が共存できるようにした」 と語る。「ほんとはやっちゃダメなんだけどね」 過激派ゾーンでは、習近平を「コロナに支配されている」と揶揄する風刺画や、香港独立を支持するプラカードなどが並ぶ。 夜の新宿駅前というと、人の往来も多い。近くにいた警官は、こう困惑する。「このデモは無許可です。ほんとはやっちゃダメなんだけどね……」 そんな声も、怒りに燃える中国人たちには届かないようだった。 これらの運動の影響もあって、現在、ゼロコロナ政策は緩和傾向にあるという。 それ自体はデモをしている人たちにとっては歓迎すべき事態なのだろうが、一方で中国では感染者数が急増しているという事実もある。なぜか日本では中国人観光客を取り込もうという動きが前向きに報じられることが多いものの、その対応でいいのかについては、今後、日本国内でも国論を二分するポイントになるかもしれない。 なお、中国の感染爆発については、行動制限に重きを置きすぎて、ワクチン接種が進まなかったことが原因だとの見方をWHOは示している。 緩和の結果がどうなるか。感染爆発が起きた場合、別種の不満が生じないか。その時、日本はどう対応すべきか。この先の展開は、まだ誰にも読めない。撮影・山県大吉「週刊新潮」2022年12月15日号 掲載
新宿で「辞めろ」と言われても、習近平には痛くもかゆくもないかもしれないが、彼にとっての問題はこうしたデモが国内外で広がっていることだろう。
発端は24日、新疆ウイグル自治区の封鎖されたマンションで起きた火災事故。これをきっかけに、中国全土にデモが広がっている。
政権批判が禁じられている中国では、まさに異例の事態である。
ここから、これまでたまった不満を晴らすかのように、日本を含む世界各地で在外中国人による反政権の動きが高まっているのだ。
奇しくもデモ当日は、江沢民元国家主席の逝去が報じられたばかり。早速、彼の肖像が現場にも登場。
騒然とする中で特に目立っていたのが、穏健派と過激派のすみ分けを促す看板だ。掲げていた中国人男性は、
「どのような考えをもっているかは人それぞれ。静かに火災の犠牲者を追悼したい人、政権批判をしたい人が共存できるようにした」
と語る。
過激派ゾーンでは、習近平を「コロナに支配されている」と揶揄する風刺画や、香港独立を支持するプラカードなどが並ぶ。
夜の新宿駅前というと、人の往来も多い。近くにいた警官は、こう困惑する。
「このデモは無許可です。ほんとはやっちゃダメなんだけどね……」
そんな声も、怒りに燃える中国人たちには届かないようだった。
これらの運動の影響もあって、現在、ゼロコロナ政策は緩和傾向にあるという。
それ自体はデモをしている人たちにとっては歓迎すべき事態なのだろうが、一方で中国では感染者数が急増しているという事実もある。なぜか日本では中国人観光客を取り込もうという動きが前向きに報じられることが多いものの、その対応でいいのかについては、今後、日本国内でも国論を二分するポイントになるかもしれない。
なお、中国の感染爆発については、行動制限に重きを置きすぎて、ワクチン接種が進まなかったことが原因だとの見方をWHOは示している。
緩和の結果がどうなるか。感染爆発が起きた場合、別種の不満が生じないか。その時、日本はどう対応すべきか。この先の展開は、まだ誰にも読めない。
撮影・山県大吉
「週刊新潮」2022年12月15日号 掲載