児童相談所を設置する全国の77自治体のうち、宗教を背景とした子どもへの虐待が疑われる通告や相談を2017~22年度に児相が受けたのは29自治体で、計78件に上ることが毎日新聞の調査で判明した。そのうち4割の12自治体は「対応に迷ったことがある」と回答し、憲法が定める「信教の自由」との関係に悩む意見が多かった。親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」の問題が注目される中、国による支援や対応指針の策定が求められる。
【旧統一教会側との接点を認めた国会議員】 児相は都道府県と政令市に設置が義務付けられている他、中核市や特別区(東京23区)も任意で設置できる。毎日新聞は10~12月、77自治体にアンケートで件数や対応種別(複数回答)、課題などを尋ね、全自治体から回答を得た。 29自治体のうち、本人や同居家族から相談を受けたのは5自治体。学校や警察、医療機関など第三者から通告を受けたのは27自治体だった。両方は3自治体。一時保護や親権停止の対応も 児相の対応は「関係機関と協議した」(18自治体)、「在宅で保護者らを指導した」(15自治体)との回答が多かった。一方で、10自治体が子どもを一時保護、5自治体が家庭裁判所に親権停止の申し立てをするなど、一時的に親子を引き離す措置をしていた。 多くの自治体は通告や相談の詳細を明らかにしていないが、子どもの通院を拒否▽治療に必要な投薬を拒否▽治療上輸血が必要であったが親権者が同意しない――などと医療関連が少なくとも16件あった。輸血拒否を教義とする宗教もあり、医療機関からの通告が多いとみられる。 その他、子どもが宗教行事に連れ回されて長期間不登校▽親の信念で新生児に限定的な栄養しか与えず、生命の危険がある――などのケースがあった。 「対応に迷ったことがある」という12自治体の回答には「信教の自由にどこまで踏み込めるのか分からない」という意見や、「子どもの生命に危険があっても保護者が教義に逆らえない」と親を説得する難しさを指摘する声があった。 宗教に関連した対応指針を定めているか尋ねたところ、独自に策定している自治体はゼロ。20自治体は「必要」、42自治体は「必要ない」と答えた。 法整備の必要性については、9自治体が「はい」、7自治体が「いいえ」と回答した。「どちらとも言えない」が57自治体に上ったが、自由記述では「現状のままでは届かぬ声をすくい取れない」と課題を指摘する声もあった。 厚生労働省は児相などで対応する際の留意点をまとめたQ&Aを年内をめどに作成する方針だ。【野口由紀、森口沙織、宮川佐知子】
児相は都道府県と政令市に設置が義務付けられている他、中核市や特別区(東京23区)も任意で設置できる。毎日新聞は10~12月、77自治体にアンケートで件数や対応種別(複数回答)、課題などを尋ね、全自治体から回答を得た。
29自治体のうち、本人や同居家族から相談を受けたのは5自治体。学校や警察、医療機関など第三者から通告を受けたのは27自治体だった。両方は3自治体。
一時保護や親権停止の対応も
児相の対応は「関係機関と協議した」(18自治体)、「在宅で保護者らを指導した」(15自治体)との回答が多かった。一方で、10自治体が子どもを一時保護、5自治体が家庭裁判所に親権停止の申し立てをするなど、一時的に親子を引き離す措置をしていた。
多くの自治体は通告や相談の詳細を明らかにしていないが、子どもの通院を拒否▽治療に必要な投薬を拒否▽治療上輸血が必要であったが親権者が同意しない――などと医療関連が少なくとも16件あった。輸血拒否を教義とする宗教もあり、医療機関からの通告が多いとみられる。
その他、子どもが宗教行事に連れ回されて長期間不登校▽親の信念で新生児に限定的な栄養しか与えず、生命の危険がある――などのケースがあった。
「対応に迷ったことがある」という12自治体の回答には「信教の自由にどこまで踏み込めるのか分からない」という意見や、「子どもの生命に危険があっても保護者が教義に逆らえない」と親を説得する難しさを指摘する声があった。
宗教に関連した対応指針を定めているか尋ねたところ、独自に策定している自治体はゼロ。20自治体は「必要」、42自治体は「必要ない」と答えた。
法整備の必要性については、9自治体が「はい」、7自治体が「いいえ」と回答した。「どちらとも言えない」が57自治体に上ったが、自由記述では「現状のままでは届かぬ声をすくい取れない」と課題を指摘する声もあった。
厚生労働省は児相などで対応する際の留意点をまとめたQ&Aを年内をめどに作成する方針だ。【野口由紀、森口沙織、宮川佐知子】