『クソ会社』『謝罪文を書け』宅配業者への“カスハラ”横行 クレーマーに泣き寝入りの運輸業界に変化

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客による理不尽な要求や言動=カスタマーハラスメントが社会問題となっています。この「カスハラ」にどう対処すればよいのか――特に深刻化する運輸業の現場を取材しました。
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厚労省の動画より、サービス業・小売業で起きた事例(買い物会計レジ)です。
客)「あんた本当に鈍いな。頭悪いんじゃないの?」店)「すいません」客)(手でカウンター叩き)「この役立たずが。客に向かって何だその態度は。人を散々待たせておいて」店)「すいません」客)「こっちはお客様だぞ。だいたいこの店サービスがなってないんだよな。この間の覚えている?タバコ銘柄間違えたよね」店)「申し訳ありません」客)「何年目なの」
客の立場を利用して理不尽なクレームをつけたり、暴言を吐いたりする迷惑行為「カスハラ」。サービス業をはじめ、様々な業種で問題視されています。
こうした経験があるのか街の人に聞いてみました。
(飲食店アルバイト)「土日とか待ち時間が多いので怒ってくる客がちらほらいる」
(接客業)「お客さんと解決には向かおうとするけど、説明しきれなかったら責任者を呼ぶ」
(飲食店アルバイト)「私たちも一人の人間だから、そこも考えてほしいなとは思う」
深刻化しているうちのひとつが運輸業です。全日本交通運輸産業労働組合協議会が実施したアンケート調査では『カスハラを受けたことがある』と答えた人が半数近くに。また『カスハラが増えている』と感じている人は57%にのぼっています。
宅配便の受け取りをめぐり、大分県内で運送会社の営業所長に土下座をさせる事件が起きました。
去年2月、大分市内に住む男が、宅配便の誤配送トラブルが2回続いたことから運送会社の受付カウンターで、営業所長に「どう責任とるんか」「ミスした奴をクビにしろ」などと大声で怒鳴り、土下座をさせました。また、その様子を自分の携帯電話で撮影しました。
この事件で大分地裁は、「クレームの域を明らかに超えた非難に値する行為」として、被告に懲役10か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
大手ECサイトの宅配を請け負う大分市の「AEトランスポート」でもカスハラと見られるケースがたびたび起きているといいます。
AEトランスポート 野田慎太郎社長:「時間指定の配達で『時間ぴったりに持ってこい』とか、『荷物をきれいに並べろ』など業務妨害的な要素が強い」
会社によりますと、荷物の受け取りを巡って真夏の炎天下の中、長時間にわたって説教をされたケースや、謝罪文・改善報告書を書かされたこともあったということです。
AEトランスポート 渡辺悠平取締役:「これまで多かったのは『責任者を出せ』『謝罪文を書け』というケースですね。暴言は結構多いですよ。『バカ』『クソ会社』とか」
「改善策を伝えるのですが、冷静に話ができないし、相手も納得できずに怒りも収まらない。会社としては謝罪するしかないので、解決が長引くこともあります」
この会社では350人いるドライバーで、顧客とのトラブル情報を共有する対策に乗り出しています。アプリを使って各ドライバーがカスハラのケースを報告。原因を分析し、共有することで被害を未然に防げるケースもあるといいます。
AEトランスポート・渡辺悠平取締役:「ドライバーは事前にトラブルをチェックして配達に行く。ここのお客さんは前回こういうことがあったので注意しようとか。お客様からしても前回こういうことがあったけど注意してくれている部分も見てもらえる」
AEトランスポート 野田慎太郎社長:「配達をした先が全部お客さんになるわけなので、選べないというところでいうと被害を受けやすいし、インターネットにもネガティブな書き込みもされます」
「ただ、事を大きくしたくないから、クレーマーに対して泣き寝入りする風潮をつくってきたのは運送業界なんです。弊社も例外ではありません。やはり酷いクレームであれば、社としてきちんと姿勢を見せるべきです。大分で起きた土下座事件の判決は一歩前進したなと思います」
「対策としてはトラブルの情報共有のほか、過度なクレームについては、ドライバーに会話を録音するよう指示を出しています。クレーマーの人間性は変えられないので、被害を最小限に抑えるしかないです」
厚労省では動画で対応策を解説するとともに企業向けのマニュアルを公表し、従業員を守るよう呼びかけています。
正当なクレームとの線引きが難しいカスハラですが、内容によっては犯罪が成立する可能性が指摘されています。
うめもと法律事務所 梅本哲平弁護士:「怖がらせるような言動は脅迫罪。『謝罪をしろ』など義務のないことを求めることになれば場合によっては強要罪が成立します。モンスタークレーマーへの対応を社員個人に委ねるのは、実は会社にとって大きなリスクがあって、会社が組織としてどういう風に対応するのかしっかり検討していくことが大事」
違法行為にもなり得るカスハラ。身を守るためには必ず勤め先に報告すること。そのうえで国や県などの相談窓口を活用することが大切です。

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