原因は「勘違い」「勉強不足」「放置」…セクハラパワハラ町長2人の“言い訳だらけ”の辞職会見で見えた無自覚性

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約20年間に渡り15人へのセクハラが認定された岐阜県池田町の岡崎和夫(76)町長と、「死ね」などのパワハラ発言が明らかになった愛知県東郷町の井俣憲治(57)町長の辞職会見が25日、行われた。
岡崎町長は5回ほど頭を下げ謝罪したものの認識の違いを訴え、井俣町長は不満の言葉を口にするなど、どこか他人事のような振る舞いが目立った。
なぜ町長ら自治体トップのハラスメントが相次ぐのか。ハラスメント対策専門家の山藤祐子さんに聞いた。
ーーなぜパワハラやセクハラが起きる?考えられる要因としては、3点ほどあると思います。1つは、勘違い。町長になり偉くなったことで、「これぐらいは許される、相手に受け入れられる」と思い込み、大きな勘違いをしてしまった。2つ目は、勉強不足。2022年の4月にすべての企業に対してハラスメント防止法が義務化され、大きく報道されたにも関わらず、「知らなかった」「聞いていない」「研修を受けていない」などと話していました。市区町村の公共の仕事をしている人は、民間の見本となるべきなのに、不勉強で知らなかったでは困ります。3つ目は、止める人がいなかった。周りの人が止める状況を作れなかったほど、権力を手に入れてしまったことが大きいのではないかと思います。「町長が言うんだったら仕方ないね」と、注意する人がいなかったために長年放置されてしまった可能性があります。
ーー周りも諦めていた?岐阜県池田町の岡崎和夫町長は、職員に注意されていると聞きましたが、それでも続けたというのは無自覚性です。「これぐらい大丈夫」という考えがあって続けてしまったのだと思います。ハラスメント行為者は、相手の気持ちに無関心というか、気付かない人が多いです。
私はセクハラやパワハラの検証をやっていますが、特にセクハラをする人は相手の感じ方に無自覚です。相手にキスしようとした時に、相手も同じように感じていると勘違いしているのです。自分が感じたことは相手も感じていると思い込んでしまう傾向がとても強いです。
会見で岡崎町長は、「親しみを持って肩に手を置いた」などと身振り手振りで釈明。一方、井俣町長は、「お前、死んだら香典いくらぐらい?」「飛ばすぞ」「辞めたら」などと信じがたい暴言を吐いていたことが明らかになった。2人の行為に山藤さんは、「被害者は一生涯忘れない傷を負った」と厳しく指摘する。
ーーなぜ言い訳をする?2人の会見はとにかく話が長かったです。話を長くすると、矛先がすごくぼやけやすくなります。2人ともおそらく仕事を一生懸命頑張ってきたのに、セクハラやパワハラで訴えられて辞職することに「なぜ自分だけ」という恨めしさがあるのだと思います。
会見の中で、「ハラスメントと言えないようなこともあった」と言っていたので、「この程度で?」という思いがあり、納得されていないのだと感じます。特に井俣町長は、幹部40人のうち9割が小中高の同窓で構成されているという話をされていましたが、慣れ親しんだ環境で、自分だけがこんなことになってしまったことに納得していないことが言葉の端々に聞こえて、引き際の悪い会見だったと思いました。
ーー被害者の受け止めは?私自身もパワハラ、セクハラを受けた経験がありますが、加害者は自分が言ったことや、やったことを忘れているかもしれませんが、言われた側、された側は、何度も何度も繰り返し思い起こして恐怖に感じたり、吐き気がするほど気持ち悪かった記憶が残ります。被害者は忘れることなくずっと覚えています。しかもセクハラの場合は、自分に隙があったのではないか、自分が悪かったのではないかと考えて自己嫌悪に陥ったりもします。
井俣町長から「育休一年取ったら殺すぞ」とか「三流大学以下」などと言われた人は、本当に殺されることはないと分かっていても、この人に逆らったら何を言われるかわからない、仕事を失うかもしれないという恐怖を感じたはずです。パワハラを受けた人、セクハラを受けた人は一生涯忘れない傷を負ったことになります。

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