リチウムイオン電池が原因の火災、ごみの収集車・処理施設で年間1万件…自治体が対策に苦慮

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新潟県長岡市のごみ処理施設「中之島信条クリーンセンター」で19日、リチウムイオン電池が原因とみられる火災が発生し、損傷した設備はいまだに復旧のめどが立っていない。
同市ではごみを破砕する前に職員が手作業で危険物がないか確認しているが、それでも歯止めがかからず、対策に苦慮している。
市消防本部などによると、同日の火災は、燃やさないごみや粗大ごみを処理する建物で、ごみを破砕する機械から出火した。職員が爆発音を聞いて現場を確認したが、初期消火で対応できず消防が出動した。
けが人はいなかったが、燃やさないごみや粗大ごみは今も処理できない状況という。市は、最終処分場にごみを仮置きし、収集や持ち込みの受け入れを続けている。
市は2020年4月、リチウムイオン電池が原因の火災が増加したことを受け、市民が正確に分別できるよう同電池が含まれる区分の名称を「有害危険物」から「スプレー缶類・発火物・有害物」に変更した。
ごみを破砕する機械は常に水がかかる状態で、施設内にはスプリンクラーも設置されているという。
だが、ごみ処理施設での火災件数は高止まりが続く。市環境施設課によると、調査を始めた19年度は72件だったが、20年度は113件、21年度は147件と増加が続き、22年度は111件だった。原因の大半はリチウムイオン電池という。
市の担当者は、リチウムイオン電池を使用した製品が増え、広く流通するようになったことが要因とみて、市民に「適切な分別をお願いしたい」と呼びかけている。
リチウムイオン電池が原因とみられる火災は全国各地で後を絶たない。環境省によると、同電池が原因とみられるごみ収集車やごみ処理施設の火災は2021年度、1万1140件に上った。
同省は自治体に対し、処理前の目視での危険物除去や消火設備の増設、市民への周知強化を呼びかけている。今月からは、市民にごみの捨て方を説明するポスターのひな型を配布し始めたという。
新潟市では、ごみ処理施設の火災件数が減少傾向にある。市内で唯一燃やさないごみを処理する新田清掃センターの火災件数は、15年度の17件からピークの19年度には129件に達したが、23年度は63件に減った。
市循環社会推進課によると、火災報知機やスプリンクラーの増設といった対策に加え、リチウムイオン電池を取り外さなくても内蔵した電化製品ごと「特定5品目」として捨てられるようにしたことが減少要因とみられる。
同課の担当者は「火災件数は減少傾向だが、まだ危険物の混入はある。電池が使われているか認識しにくい製品があるのが課題だ」と話している。

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