「味噌汁が臭くて飲めない」子供の食生活が危機的

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味噌を「臭い」と感じる子どもが増えています(写真:マハロ/PIXTA)
70万部の大ベストセラー『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発した8万部突破のレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』に続き、『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん2 ベスト107レシピ』が発売され、発売7日で増刷するなど反響を呼んでいる。
『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選したレシピ集だ。
いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が「味噌汁が『臭い』といって飲めない子どもたち」について語る。
*味噌シリーズの1回目:味噌の「米・豆・赤・白」の違い、正確に言えますか?*味噌シリーズの2回目:平気で「安い味噌」買う人が知らない超残念な真実*味噌シリーズの3回目:平気で「だし入り味噌」使う人の超深刻すぎる盲点*味噌シリーズの4回目:平気で「減塩味噌」使う人が知らない超残念な真実
「子どもが味噌汁を飲んでくれない」

これは私が全国を講演や食育セミナーで回るとき、必ずと言っていいほどお母さん・お父さんから聞く悩みです。
子どもが味噌汁を飲まないというのは、今に始まったことではありません。私が講演や食育セミナーを始めた20年前から聞く言葉です。
しかし、この4、5年は特に、子どもたちの味噌汁離れが顕著になっているような気がしています。
近年、私は食育の一環として、幼稚園・保育園で「味噌作り教室」を開催しています。
そこでは「こういうものができますよ」と言って出来上がりの味噌を見せるのですが、匂いを嗅いで「うわー、臭い!」と顔をしかめる子どもと「いい匂い!」という子どもの二通りに分かれます。
現役の先生たちに聞くと、だいたいクラスに30人いたら1~2人は「味噌汁が臭い」「苦手」といって飲まない子がいる感覚のようです。
「臭い!」という子どもは普段から味噌汁を飲んでいない子ども、「いい匂い」という子どもは普段、飲んでいる子どもだと思います。
あくまで私の感想ですが、味噌汁を飲まない子どもは野菜嫌いの子が多いし、和食を食べられない、和食嫌いの子が多いように感じます。
和食が減って家庭で味噌汁が作られなくなった、塩分が強いとして嫌われる傾向にあるなど、味噌が子どもに好かれない原因はいろいろあると思います。
安部司さんの<実演付き>トークイベント『みんな大好き添加物の真実』を4月10日(水)に紀伊國屋書店梅田本本店にて開催します。詳しくはこちら。
今どき、味噌汁を出さなくても、インスタントのコーンポタージュやワカメスープなど、便利で手軽な汁物がいろいろあります。
手間のかかる味噌汁はますます嫌われがちです。飲んでもインスタント、フリーズドライの味噌汁です。
でも、私は子どもたちに、いい味噌を使った手作りの味噌汁を飲んでほしいのです。
「和食という、日本が世界に誇る食文化を子どもたちに伝えていかなければならない」という強い思いが私にはあり、味噌汁こそ「和食の要」「食育の要」だと考えているからです。
「『カップ麺の牛乳戻し』子どもの食生活が危機的だ」でも述べたことですが、子どもの舌を作るのは親の責任です。
そのためにも天然だしでとった味噌汁をぜひとも食卓に出してほしいのです。
食育講座で「味噌が臭い」と嫌がる子どもに対して、とっておきの「秘策」があります。
安部氏が開発した「魔法の調味料」さえあれば、簡単に作れる「絶品おにぎり」。一番上が「甘みそおにぎり」(『安部ごはん』より/撮影:佳川奈央)
炊きたてのご飯でおにぎりを作って、私が15年かけて開発した「安部ごはん」の「魔法の調味料」のひとつ「甘みそ」を薄く塗って、焼いて食べさせるのです。
「甘みそおにぎり」は、みんな「わー!」といって、飛びついて食べます。
「味噌が臭い、食べられない」と言っていた子どもも、一緒になって、大喜びでパクついてくれます。
いろいろな料理に使える万能調味料でもある「甘みそ」は誰もが好む味だし、焼くことで味噌臭さが薄まるからだと思います。
こうやって「おいしさ」を一度体験すると、もう味噌に対して抵抗感がなくなります。
2回目に食育講座を開催するときには、みんな味噌汁が飲めるようになります。
どれだけコーンポタージュで育ったといっても、やっぱり日本人なのです。
拙著『食品の裏側』では、「加工食品の実態」と「一般の日本の和食の素晴らしさ」を詳しく解説しましたが、本来、味噌はすばらしい健康食品です。たんぱく質、糖質、脂質の3大栄養その他にビタミン、ミネラルも豊富に含まれています。

「医者に金を払うよりも、味噌屋に払え」「味噌の医者殺し」、これは江戸時代の格言です。
近年は「育菌」ということが注目されています。これは「善玉菌」を元気にして増やしてくれる食品を積極的に摂取することを言うそうです。
この善玉菌を元気にして増やす食品の代表格が「食物繊維」です。
そして味噌こそ、食物繊維が豊富な食品。
それも「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の両方が含まれているのです。
水溶性は味噌汁の汁自体に溶けていて、不溶性は底に沈殿している沈殿物に含まれているそうなので、ぜひ沈殿物も残さず飲み切りましょう。
ほかにも味噌には乳がんや大腸がんのリスクを下げる、脳卒中、心臓疾患などの生活習慣のリスクを下げる、老化を防止する、コレステロールを抑制するなどの機能があることがわかっています。
まさしく味噌汁こそ「日本が世界に誇るスーパー健康スープ」だと思います。
味噌汁はどれだけ飲んでも飽きがきません。味噌汁は朝昼晩3食飲むことができます。でもコーンポタージュは、3食は飲めません。
スパゲティも3食食べられません。でも「ご飯と味噌汁」は3食食べられます。それが日本人のDNAなのだと思います。
味噌汁は野菜、きのこ、海藻類とどんな具でもOKです。残り野菜を放り込めば冷蔵庫のかたづけにもなります。
大の味噌汁党の私は味噌汁のすばらしさを広げるべく「あべごはん」のテーマ曲で「みそしるごはん」という歌を作ってしまいました。これが我ながらいい歌で(笑)、「味噌汁は具を選ばない」ということを教えています。
福岡県水巻幼稚園の園児たちが歌ってくれている映像があるので、よかったら見てみてください。
朝、できたての味噌汁をすすると、しみじみ日本に生まれて良かったと思います。ぜひみなさんも、おいしい味噌で、おいしい味噌汁を作ってみてください。
*味噌シリーズの1回目:味噌の「米・豆・赤・白」の違い、正確に言えますか?*味噌シリーズの2回目:平気で「安い味噌」買う人が知らない超残念な真実*味噌シリーズの3回目:平気で「だし入り味噌」使う人の超深刻すぎる盲点*味噌シリーズの4回目:平気で「減塩味噌」使う人が知らない超残念な真実
「あべごはん~水巻幼稚園~」(動画:株式会社オオガプロモーション/YouTube)

(安部 司 : 『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事)

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