4月入社直前「メールで内定辞退」はあり?なし? SNSで議論

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「4月1日に入社できません」
【写真】企業による「オワハラ」の主な例
新年度スタートを目前に、採用内定者から「内定辞退」のメールが来たというX(ツイッター)の投稿が議論を呼んでいる。企業にとっては「まるで結婚式直前のドタキャン」という見方もあるが、入社直前の辞退に問題はないのか。就職情報サイトや内定辞退の「代行」を担う弁護士に内情を聞いた。
「顔にドロをかけられた」
Xの投稿によると、3月22日、採用担当者に1通のメールが届いた。
「他の会社にご縁を感じたので、貴社には入社できません。申し訳ありません」
職場の空気が張り詰めたといい、投稿者はこう続けた。
「こんな大切なことをメール1通で済ませられたことが重くのしかかる。怒りを通りこしてあきれてしまう。顔にドロをかけられたような気分だ」
投稿したのは「プライム上場企業で人事担当15年」という人物。3月25日に投稿されると4万以上の「いいね」が付き、26日には「内定辞退」がトレンド入りした。
これに対し、投稿を読んだ人からは「別にメール1本で内定辞退してもよくないか」「就活生の皆さんは内定辞退するときはメールでいいのでできるだけ早く企業に連絡してあげてください」などと、さまざまな反応があった。
採用難で人事は悲鳴
就職情報サイト大手「リクルート」の担当者は、入社直前の内定辞退について「企業の人事担当者は胃が痛いでしょうね」と同情を寄せる。
新卒一括採用を行う企業では、3月には入社後の配属先決定や研修、地方支社の寮の手配などが済んでいる場合が多いという。
「3月の内定辞退は『結婚式直前でのドタキャン』に近い。昨今の採用難に加え、追加募集をかけることも難しく、(新入社員が)『マイナス1』で新年度を迎えることになりかねません」と解説する。
その上で「入社を悩んでいるのであれば、人事担当者に率直に話すことで不安材料が改善される可能性もあります。辞退を決めたのであれば、一刻も早く伝えることが大事ではないでしょうか」とアドバイスする。
賠償請求され「代行」へ駆け込み
インターネット上では、内定辞退の代行業者も数多く見つかる。
フォーゲル綜合法律事務所(大阪府)は、企業への連絡と書面作成などによる内定辞退を依頼者の代わりに実施しており、費用はおよそ2万~5万円という。
同事務所の嵩原(たけはら)安三郎弁護士(大阪弁護士会)によると、民法上、労働契約の解約はいつでも申し入れることができ、申し入れから2週間で成立するため、内定式などで「内定承諾書」を書いていても辞退に問題はないという。
代行依頼は年々増えているといい、年間のピークは3月。利用者の半数ほどは自力で内定辞退を試みたものの、「損害賠償を請求する」「誓約書を書いただろう」などと強硬な態度を取られ、駆け込んでくるという。
また、内定後に会社への違和感や不安が募ったものの、自分からは言い出せず代行に頼るケースも多いという。
嵩原弁護士は「今の若者は将来に強い不安を感じています。終身雇用制度が崩壊し、入社すれば即安泰という状況ではありません。残業時間や有給休暇、社内教育などにシビアな目を向け、不安が解消できない場合は内定辞退につながりやすいです。今の若者はけしからん、で済ますのではなく、辞退された理由を冷静に分析することが大切ではないでしょうか」と話している。【西本紗保美】

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