【齋藤 孝】「圧巻の景色だね」は大間違い!…多くの大人が間違って覚えている、恥ずかしい「日本語3選」

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毎日使う「ことば」。何気なく意味と使い方を知り、特に疑うこともないまま覚えているのでは。だが、今まで当たり前に使ってきた日本語は実は誤って使用しているかもしれない。言葉によっては相手を不快にさせたり、自分自身が恥をかいてしまうこともある。
今回は『二度と忘れない! イラストで覚える 大人の教養ことば(著者・齋藤 孝)』から大人として身につけるべき間違えやすい日本語をいくつか抜粋してご紹介する。
「えっ?これも間違いだったの?」と思わず人に話したくなる言葉もあるかもしれない。
解説
曲の「サビ(一番の聞かせどころ)」こそが「触り」である!「曲の触り」「触りの一節」などというと、冒頭部分のことだと勘違いする方もいますが、正しくは一番よいところ、という意味合いです。
今ではすっかりサブスクの時代となりまして、昔の曲のように、イントロやAメロを経ての「触り(=サビ)」というスタイルが通用しなくなっていますね。イントロがどんどん短くなり、そもそも「触り」から始まる曲もあるほど。学生とカラオケに行って昔の名曲を歌っても「触り」以外は「何を歌っているのかわかりません」と言われる始末です。
正しい使い方「時間がないので話の触りだけ聞いたが、十分に理解できたと思う。」
誤り「曲のサビではなく、とりあえず冒頭の触りだけ聴かせてほしい。」
「あの映画の触りだけ教えてよ」と聞かれたら、つい話の“冒頭の部分”を答えてしまう人も多いのでは。本来は音楽や物語のもっとも印象的な部分や肝心なとこを意味するため、映画のオチ、クライマックスを指すのである。会話の中で「話の触りだけ聞かせてくれない?」と言われたときは、見当違いな回答をしないように気をつけたい。
解説
間違った使い方をしている人が多い表現の一つです。役が「不足」していて軽いわけですから、その人にとっては、いささか軽い役割、ということですね。よく、謙遜の意味で「私では役不足です!」などとおっしゃる方がいますが、この場合、本来は「力不足」と言わなければいけないわけです。
ちなみに、正しい意味合いで「自分には役不足だな」と不満に思う仕事もあるかもしれませんが、かの日銀総裁で元内閣総理大臣でもあった高橋是清は「どんな取るに足らないと思われる仕事でも“役不足”などと思ってはいけない。どんな仕事であっても、丁稚奉公に戻ったつもりでやり直すものだ」と話したそうです。
豊臣秀吉も織田信長の草履を自らの懐であたためるところからスタートしましたし、鉄鋼王として名高いアンドリュー・カーネギーも、もともとは電信技手だったわけです。たとえ役不足だと思う仕事であっても、しっかり務め上げることで出世していくもの。あなたの仕事ぶりも、きっと誰かが見ているはずですよ。
正しい使い方「事業部長でもある彼女に、この仕事は役不足の感がある。」
誤り「新人の私にはまだまだ役不足ですが、頑張りたいと思います。」
「力不足」と「役不足」。似ているがゆえに、ついつい深く考えず使ってしまうかもしれない。だが、上司や先輩からもらったせっかく成長の機会を「自分には役不足です」と言って、チャンスを逃さないようにしたいものだ。
解説
広大な景色などを前に「圧巻だね!」と言う方がいらっしゃいますが、これは実は間違い。本来は「壮観だね!」と言うべきところです。「圧巻」は比較対象があるときに使います。
「圧巻」とは、昔の中国で役人になるための試験があり、その合格者の答案(巻物)が積み上げられていき、頂点に載せられたのが、もっとも優れた「1位」の答案だったことに基づく言葉です。他を圧するほど素晴らしい巻(答案)ということです。これが転じて、もっとも優れたことを指すようになったのですね。ちなみに、「傑出」「抜群」も同義です。
正しい使い方「冒頭のピアノソロは、まさに圧巻であった。」
誤り「この地方の雪景色は素晴らしく、圧巻である。」
旅行系の雑誌を読んでいると「見どころ満載の圧巻の景色!」といった文言が書かれているせいか、当たり前のように使ってしまっている人も多いのでは。実はそれは誤りどころか本来の意味から乖離があることに驚く。
続く2つの目の記事『「あの人、ちっとも悪びれた様子がないよね」実は間違えて使ってるかも!…大人が「本来の意味を誤って」覚えている「日本語3選」』では、本来の意味を知らない人が多い日本語をご紹介する。

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