多摩川スーツケース死体遺棄 被害男性は「住吉会の元相談役」と豪語していた「アウトロー系配信者のレジェンド」だった

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昨年末、多摩川の河川敷に放置されていたスーツケースの中から成人男性の遺体が発見された事件が、一部のネット界隈を騒がしている。遺体となって見つかった男性が、かつて「暴れん坊のアウトロー系配信者」として名を馳せた、知る人ぞ知る大物だったからだ。過去の配信で「住吉会の相談役だった」と豪語していた男性の身に、いったい何が起きたのか――。
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【写真】ニコニコ生放送の全盛期、アウトロー系配信者として人気者だった原唯之さん。ケンカ上等スタイルで知られていた往年の「ニコ生ファン」の中では有名人だった 先月29日、スーツケースの中で手足を押し曲げられた状態で発見されたのは原唯之さん(享年46)。遺体には首を絞められた痕があり、神奈川県警は殺人・遺体遺棄事件として、原さんが何らかのトラブルに巻き込まれたとみて捜査を続けている。

原さんの遺体が入ったスーツケースが発見された多摩川の河川敷(川崎市川崎区殿町付近) 年の瀬に流れたこの物騒なニュースに反応したのは「アウトロー系配信者」と呼ばれるYouTuberやそのファンたちだ。「もしかしてあのユイガさんか?」。原さんは「唯我」というハンドルネームで古くから配信活動を続けている、界隈では知られた存在だった。 アウトロー系配信者とは、ヤンチャしていた過去を売りにした動画を配信し、収益にしている人たちのことをいう。この分野の人気配信者で、チャンネル登録者数が45万人を超えるVTuberの懲役太郎氏によれば、この数年、元ヤクザや元暴走族を名乗る者たちが続々と配信者になりたいと参入してくるという。「裏社会で生きてきた人たちの話には、一般社会では経験できないスリリングな面白さがあります。昔と違って暴対法の縛りも厳しく、反社の世界で食べていくのは難しい世の中になった。だったら、自分の過去を曝け出してブランディングし、配信活動を新たなシノギにしようと参入してくる元アウトローが増えているのです」(懲役氏)“先駆者”に見出された原さん もちろん世の中はそんなに甘くはなく、頓挫するケースがほとんどだ。「所詮ははぐれ者が手がけるエンタメです。『俺は地元でケンカ最強だった』とか、やたらケンカ自慢をするだけの見るに耐えないコンテンツも多い。自己プロデュースや客商売のノウハウも持っていない人たちばかりで、ほとんどが収益化できないまま消えていきます」(同) 原さんは、そんな厳しい世界の中で10年以上も生き残ってきた“レジェンド”だったというのだ。原さんが注目を集めていた時代は、配信の主流はYouTubeではなく「ニコニコ生放送」だった。 原さんと交流のあった配信者仲間のヒロさんは、原さんが配信界に颯爽と“デビュー”した日のことを今も覚えている。「今も往年のニコ生ファンたちの間で語り草になっている、配信界のもう1人のレジェンド『ウナちゃんマン』との“生配信バトル”です。唯我はウナちゃんマンによって見出されたスターと言っても過言ではありません」(ヒロさん)本当に住吉会の相談役だったのか 元暴力団組員という肩書きを持つウナちゃんマン氏は、“ケンカ上等”の破天荒なスタイルで原さんより数年前から配信活動を行ってきた先駆者だ。「真っ昼間から上半身裸で、酒を煽りながら、べらんめえ口調で視聴者をひたすら煽り倒す。怒った視聴者が生配信中に凸をかけ、警察官が駆けつける騒ぎも日常茶飯事だった。YouTube全盛期になるにつれて影が薄くなってしまいましたが、今年4月、自宅で病死していた状態で発見されるまで細々と配信を続けていました」(同) そんな先輩格に新参者だった原さんは睨まれ、生配信に出演するよう“呼び出し”を受けたのだ。2011年に配信されたその動画は、今もYouTubeで閲覧可能である。 画面に映るのは、黒いジャージにサングラス姿の原さんと、白のジャージに缶ビールを手に持つウナちゃんマン氏。原さんが「初めまして、唯我と言います。いつもウナさんの放送見ています」と丁重に挨拶して平穏に配信は始まったが、ウナちゃんマン氏が「どこに“所帯”持ってたの?」と本題を切り出していくにつれ、徐々に剣呑な雰囲気になっていった。 原さんは新宿に縄張りを持つ住吉会の中で、独立した組織を持っていたかのように己の過去を語っていたのだが、ウナちゃんマン氏は“フカシ”と踏んで追及し始めたのだ。ウナ氏「住吉会にいたんだったらいいけど、アンタどこのレベルにいたんですか」原さん「相談役です」ウナ氏「相談役ってどこの相談役」原さん「副会長補佐の下です」ウナ氏「はぁ? 住吉会本体の?」怒号が飛び交う修羅場に視聴者は大盛り上がり 原さんは二次団体でも三次団体でもなく、住吉会本体の大幹部だったと豪語した。だが、そんな大物だったならば名前が知られているはず。あやしい回答を引き出したウナちゃんマン氏は、“やっぱりフカシだ”と確信し、原さんを激しく罵倒し始めた。「オタクの組って、頭悪いんじゃないの? お前みたいなマヌケ面した男をそのポジションに置いたらバカ過ぎるだろ」 人格を否定するようなその言葉に、原さんもプッツンと切れた。「ああん! お前、上等きってんなぁ、オイ!」 それから2人は数分間にわたり、聞くに耐えない罵り合いを繰り広げたのである。原さん「おい! お前、他の生主(註・生放送の配信者)から逃げてんだろ。リアルでは会えないんだろ! リアルで会えよ、ブルっちゃってんだろ。ああん! なめんなよ、この野郎!」ウナ氏「(受け流しながら)はいはい、K組(住吉会の二次団体)にいたって言うんだろう。分かった。後で調べてみるわ」原さん「調べろよ、後でケツ拭けよ、てめぇ、このヤロウ!」ウナ氏「ケツなんか拭かないよ、お前絶対在籍していないもん。吠えるだけ吠えちゃってさぁ。カタギなんだろー、ずっと。あぁん、何が組長だ」 かつてこの界隈では、このようなバトルがそこかしこで勃発し、視聴者を盛り上がらせたという。この日を境に原さんは一躍、界隈で注目を集めるようになったそうだ。時代に取り残されてしまった「ほとんどがアンチでしたがね。視聴者が『おいフカシ野郎』などと絡んで来るんですが、唯我はウナさんから直々に仕込まれたケンカ上等スタイルで、『なんだテメェ、今から乗り込むぞ』と怒鳴り返す。彼の配信はいつもカオスで、警察沙汰になることも度々でした。その後、ウナさんとも何度か再戦。2人は永遠のライバルと言われていました」(ヒロさん) だが月日が流れ、2人は配信業界のメインストリームから外れていった。時代はニコ生からYouTubeへ。Vtuberの懲役太郎氏やコレコレ氏などの暴露系配信者が手がけるチャンネルが台頭してくるにつれて、原さんのコンテンツは視聴者から飽きられてしまったようだ。原さんはYouTubeチャンネルを17年に立ち上げているが、登録者数は3500人と振るっていない。「話す内容も周辺で起きたトラブルばかりなので、新規の視聴者には何の話をしているのだか全くわからない。それでも、配信が始まると数千回くらいは再生され、それなりに盛り上がっていました」(同) ヒロさんいわく、原さんが10年以上、配信業界で生き延びて来られたのは、ファンを大切していたからだという。「唯我はアンチであろうとも常連の名前はちゃんと覚え、否定的なコメントであろうと読み上げた。熱くなってブロックすることも多かったですが、ファンの心はちゃんと掴んでいた」(同)Xに残されていた意味深な投稿 原さんの人生はトラブル続きで、数カ月間姿を消すことも度々だったという。「配信では食べられてはいなかったとは思いますが、投げ銭やオリジナルグッズの販売などで食い繋いでいたと思われます」(ヒロさん)。 変わり果てた姿で見つかる直前には、Xに次のような投稿をしていた。〈とりあえず、無事です。古参リスナーの裏切り…。疑心暗鬼にもなっていたが、今回ばかりは色々とありすぎて本当に疲れたわ(絵文字)気持ち的に落ち着くまで配信は待っていただけたら幸いです(絵文字)〉(12月21日) はたして死に際に投稿された「古参リスナーとのトラブル」は、事件と関係あるのだろうか。原さんのXのアカウントには、〈ご冥福をお祈りします〉〈あちらでウナちゃんマンさんと仲良くしてください〉などと、故人を偲ぶファンからのコメントが溢れている。
先月29日、スーツケースの中で手足を押し曲げられた状態で発見されたのは原唯之さん(享年46)。遺体には首を絞められた痕があり、神奈川県警は殺人・遺体遺棄事件として、原さんが何らかのトラブルに巻き込まれたとみて捜査を続けている。
年の瀬に流れたこの物騒なニュースに反応したのは「アウトロー系配信者」と呼ばれるYouTuberやそのファンたちだ。「もしかしてあのユイガさんか?」。原さんは「唯我」というハンドルネームで古くから配信活動を続けている、界隈では知られた存在だった。
アウトロー系配信者とは、ヤンチャしていた過去を売りにした動画を配信し、収益にしている人たちのことをいう。この分野の人気配信者で、チャンネル登録者数が45万人を超えるVTuberの懲役太郎氏によれば、この数年、元ヤクザや元暴走族を名乗る者たちが続々と配信者になりたいと参入してくるという。
「裏社会で生きてきた人たちの話には、一般社会では経験できないスリリングな面白さがあります。昔と違って暴対法の縛りも厳しく、反社の世界で食べていくのは難しい世の中になった。だったら、自分の過去を曝け出してブランディングし、配信活動を新たなシノギにしようと参入してくる元アウトローが増えているのです」(懲役氏)
もちろん世の中はそんなに甘くはなく、頓挫するケースがほとんどだ。
「所詮ははぐれ者が手がけるエンタメです。『俺は地元でケンカ最強だった』とか、やたらケンカ自慢をするだけの見るに耐えないコンテンツも多い。自己プロデュースや客商売のノウハウも持っていない人たちばかりで、ほとんどが収益化できないまま消えていきます」(同)
原さんは、そんな厳しい世界の中で10年以上も生き残ってきた“レジェンド”だったというのだ。原さんが注目を集めていた時代は、配信の主流はYouTubeではなく「ニコニコ生放送」だった。
原さんと交流のあった配信者仲間のヒロさんは、原さんが配信界に颯爽と“デビュー”した日のことを今も覚えている。
「今も往年のニコ生ファンたちの間で語り草になっている、配信界のもう1人のレジェンド『ウナちゃんマン』との“生配信バトル”です。唯我はウナちゃんマンによって見出されたスターと言っても過言ではありません」(ヒロさん)
元暴力団組員という肩書きを持つウナちゃんマン氏は、“ケンカ上等”の破天荒なスタイルで原さんより数年前から配信活動を行ってきた先駆者だ。
「真っ昼間から上半身裸で、酒を煽りながら、べらんめえ口調で視聴者をひたすら煽り倒す。怒った視聴者が生配信中に凸をかけ、警察官が駆けつける騒ぎも日常茶飯事だった。YouTube全盛期になるにつれて影が薄くなってしまいましたが、今年4月、自宅で病死していた状態で発見されるまで細々と配信を続けていました」(同)
そんな先輩格に新参者だった原さんは睨まれ、生配信に出演するよう“呼び出し”を受けたのだ。2011年に配信されたその動画は、今もYouTubeで閲覧可能である。
画面に映るのは、黒いジャージにサングラス姿の原さんと、白のジャージに缶ビールを手に持つウナちゃんマン氏。原さんが「初めまして、唯我と言います。いつもウナさんの放送見ています」と丁重に挨拶して平穏に配信は始まったが、ウナちゃんマン氏が「どこに“所帯”持ってたの?」と本題を切り出していくにつれ、徐々に剣呑な雰囲気になっていった。
原さんは新宿に縄張りを持つ住吉会の中で、独立した組織を持っていたかのように己の過去を語っていたのだが、ウナちゃんマン氏は“フカシ”と踏んで追及し始めたのだ。
ウナ氏「住吉会にいたんだったらいいけど、アンタどこのレベルにいたんですか」原さん「相談役です」ウナ氏「相談役ってどこの相談役」原さん「副会長補佐の下です」ウナ氏「はぁ? 住吉会本体の?」
原さんは二次団体でも三次団体でもなく、住吉会本体の大幹部だったと豪語した。だが、そんな大物だったならば名前が知られているはず。あやしい回答を引き出したウナちゃんマン氏は、“やっぱりフカシだ”と確信し、原さんを激しく罵倒し始めた。
「オタクの組って、頭悪いんじゃないの? お前みたいなマヌケ面した男をそのポジションに置いたらバカ過ぎるだろ」
人格を否定するようなその言葉に、原さんもプッツンと切れた。
「ああん! お前、上等きってんなぁ、オイ!」
それから2人は数分間にわたり、聞くに耐えない罵り合いを繰り広げたのである。
原さん「おい! お前、他の生主(註・生放送の配信者)から逃げてんだろ。リアルでは会えないんだろ! リアルで会えよ、ブルっちゃってんだろ。ああん! なめんなよ、この野郎!」ウナ氏「(受け流しながら)はいはい、K組(住吉会の二次団体)にいたって言うんだろう。分かった。後で調べてみるわ」原さん「調べろよ、後でケツ拭けよ、てめぇ、このヤロウ!」ウナ氏「ケツなんか拭かないよ、お前絶対在籍していないもん。吠えるだけ吠えちゃってさぁ。カタギなんだろー、ずっと。あぁん、何が組長だ」 かつてこの界隈では、このようなバトルがそこかしこで勃発し、視聴者を盛り上がらせたという。この日を境に原さんは一躍、界隈で注目を集めるようになったそうだ。
「ほとんどがアンチでしたがね。視聴者が『おいフカシ野郎』などと絡んで来るんですが、唯我はウナさんから直々に仕込まれたケンカ上等スタイルで、『なんだテメェ、今から乗り込むぞ』と怒鳴り返す。彼の配信はいつもカオスで、警察沙汰になることも度々でした。その後、ウナさんとも何度か再戦。2人は永遠のライバルと言われていました」(ヒロさん)
だが月日が流れ、2人は配信業界のメインストリームから外れていった。時代はニコ生からYouTubeへ。Vtuberの懲役太郎氏やコレコレ氏などの暴露系配信者が手がけるチャンネルが台頭してくるにつれて、原さんのコンテンツは視聴者から飽きられてしまったようだ。原さんはYouTubeチャンネルを17年に立ち上げているが、登録者数は3500人と振るっていない。
「話す内容も周辺で起きたトラブルばかりなので、新規の視聴者には何の話をしているのだか全くわからない。それでも、配信が始まると数千回くらいは再生され、それなりに盛り上がっていました」(同)
ヒロさんいわく、原さんが10年以上、配信業界で生き延びて来られたのは、ファンを大切していたからだという。
「唯我はアンチであろうとも常連の名前はちゃんと覚え、否定的なコメントであろうと読み上げた。熱くなってブロックすることも多かったですが、ファンの心はちゃんと掴んでいた」(同)
原さんの人生はトラブル続きで、数カ月間姿を消すことも度々だったという。
「配信では食べられてはいなかったとは思いますが、投げ銭やオリジナルグッズの販売などで食い繋いでいたと思われます」(ヒロさん)。
変わり果てた姿で見つかる直前には、Xに次のような投稿をしていた。
〈とりあえず、無事です。古参リスナーの裏切り…。疑心暗鬼にもなっていたが、今回ばかりは色々とありすぎて本当に疲れたわ(絵文字)気持ち的に落ち着くまで配信は待っていただけたら幸いです(絵文字)〉(12月21日)
はたして死に際に投稿された「古参リスナーとのトラブル」は、事件と関係あるのだろうか。原さんのXのアカウントには、〈ご冥福をお祈りします〉〈あちらでウナちゃんマンさんと仲良くしてください〉などと、故人を偲ぶファンからのコメントが溢れている。

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