【独自】安倍派最高幹部が爆弾証言「派閥でパーティー券の二重帳簿を見せられた」「森元総理のときから同じ処理」

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年も終わろうとしていた2023年12月27日から29日にかけて、静かになるはずの永田町が一気に騒然となった。自民党安倍派の政治資金パーティー裏金事件で、東京地検特捜部は、27日に池田佳隆衆院議員、28日、29日には大野泰正参院議員の議員会館の部屋、地元事務所などを「急襲」して家宅捜索。28日には衆議院議員の柿沢未途容疑者やその秘書らを公職選挙法違反で逮捕した。年末年始関係なく「安倍派5人衆」をはじめとする幹部議員がぞくぞく事情聴取を受けている。
「これほど大嵐のような年末を迎えるのは、議員生活でもはじめてだよ。しかし安倍派は、いずれ大分裂になり、とんでもないことになるだろうな……」
岸田首相に近い自民党幹部は、現代ビジネスの取材に対し、天を見上げてこう答えた。安倍派の事件では、すでに派閥事務所にガサが入った。大野氏は5000万円超、池田氏は4000万円超のパーティー券売り上げの「キックバック」を受け、政治資金収支報告書に不記載となっていることが明らかになっている。捜査関係者は言う。
「いずれも氷山の一角で、今後も捜査で全容解明されれば、さらに拡大する模様だ」
2023年末、安倍派関連先に家宅捜索に入る東京地検特捜部 (c) 現代ビジネス
昨年12月、政治資金収支報告書にパーティー券収入などを記載せず、議員バッジを失ったのが、元外務副大臣の薗浦健太郎氏だった。略式起訴となった金額は4900万円である。
この園浦氏の前例が、今後の捜査を占う──そう語るのは、安倍派最高幹部のひとり、X氏である。今回、現代ビジネスの取材に対し、重い口を開いた。
「安倍派の事件で今後、特捜部が立件する場合、薗浦氏の金額が一つの目安になるだろう。ただし、額が小さくて今のところ『セーフ』となっている議員も、特捜部の捜査で詰められれば、ごまかしている金額が増えていくのは、過去の事件からも明らかだ。『パー券』のことはいずれ問題になると思っていたが、ついにこうなってしまった」(X氏)
清和政策研究会(安倍派)の派閥のパーティーは年に1度、開催される。毎年、所属議員は、さながら「セールスマン」のように、パーティー券の販売に汗をかくことになる。1回生議員であれば30枚、閣僚クラスなら200枚から300枚単位と、販売ノルマは熾烈だ。ただし、ノルマを超えた分については、全額議員に現金でキックバックされる。
この分を政治資金収支報告書に記載せず、「裏金」処理をしていたことに特捜部は着目した。政治資金規正法に引っかかるのは一目瞭然である。池田氏の場合、約3200万円のキックバック分について、政治資金収支報告書での訂正を申し出ている。このシステムは20年ほどの長期にわたり、「慣例」のように続いていたという。
実は安倍派最高幹部のX氏が「現代ビジネス」に最初に安倍派の「闇」を打ち明けたのは、2017年に勃発した森友・加計疑惑が、大きく世間を騒がせていたときのことである。記者から訊ねたわけではなく、問わず語りにX氏はこう証言している。
「清和(安倍派)は盤石と思っているだろうが、森友・加計疑惑に匹敵、いやそれよりヤバイこともあるんだ。安倍さんが総理の間は大丈夫かもしれないが……」
それが、安倍派の派閥パーティーでのキックバックをはじめとする政治資金の問題だった。
2023年末、安倍派関連先に家宅捜索に入る東京地検特捜部 (c) 現代ビジネス
X氏が最初に「ヤバイ」と指摘したのが派閥パーティーの「二重帳簿」の存在だった。X氏は、一気にこう語っている。
「年に1度ある派閥のパーティーでは、総理派閥としての威信を見せつけなければいけない。派閥幹部としては、ノルマ以上にさばき、将来は会長の座を狙う立場をアピールする場だ。だが、その実態については派閥でも報告はないので、それなりの立場につかないかぎりまったくわからない。
私がはじめて会計責任者から書類を見せられたときには、『これはいったい何だ』と、思わず絶句しそうになった。
パーティーの収支をまとめた書類が2つもあるんだ。1つは政治資金収支報告書にそのまま転記できるもの。もう一つは実際のパーティー収入が記されている。1つ目のものと比較すると、3倍近い収入が書かれていた。会計責任者に詳細を聞くかどうか迷ったが、それまでも二重帳簿どころか三重帳簿という噂は以前に聞いたことがあった。
会計責任者に『いつもこういう処理なの?』とだけ聞いたら、うなずいていたので、認めるしかなかった。
その後、会計責任者ら数人と一緒に派閥会長のところへ報告にあがった。『今回も大変だったね、ご苦労様。事務方の皆さんを慰労してくださいね』と、会長は書類をながめるだけで終わりだった。派閥のパーティーというのはこういうものかと思ったが……」
X氏は他派閥の議員や、安倍派の引退議員と会った際に、それとなく派閥のパーティーの会計について訊ねた。
リクルート事件、ロッキード事件など「政治とカネ」で過去に大きなキズを負ったのが田中角栄元首相の木曜クラブ、流れを汲む茂木派(平成研究会)。平成研所属のある議員は、X氏の話を聞いて、あっと驚くような表情をしたうえ、こう忠告したという。
「ダメだよ! うちはすべて政治資金収支報告書に載せている。早く対処したほうがいい」
この平成研究会には苦い記憶がある。2001年に日本歯科医師連盟から1億円の小切手を受け取り、政治資金収支報告書に記載しないことを決めたことで、幹部が有罪判決を受けた。以降、平成研究会は政治資金の対応を大きく変えて厳正にするようになったそうだ。
政治資金のスキャンダルが相次いだことから、パーティーをはじめ、政治資金収支報告書への記載を派閥ぐるみで指導していたのは、平成研だけではなかった。岸田文雄首相が会長を務めていた宏池会(岸田派)の議員も、X氏にこう語ったという。
「宏池会では、年末になると派閥で把握している寄付などは、議員に一覧にして渡したうえ、政治資金収支報告書に書け、漏れはないかと指導している。パーティー券を買った人がどの議員の紹介なのか名寄せもしているし、不明の場合も徹底的に調べている。二重帳簿なんでありえない」
こうした証言を各派閥の議員から聞いたX氏は、「(清和会は)本当にヤバイ扱いをしている」と思い知ったという。
X氏は安倍派の引退した議員に対しても、
「二重帳簿をつけていて、いいのかな」
とそれとなくつぶやいた。だが返ってきたのは次の答えだった。
「ずっと昔からやっていて、引き継いでいるものです。派閥の政策活動費ということで問題がないらしい。森総理の時から同じ処理だそうですよ」
そう、清和会の「オーナー」とされ、清和会から清和政策研究会へと名前を変えたときの会長でもあった森喜朗元首相が開始したのが、今回のシステムだったとX氏は言う。
「森元首相は(自分で)お金を出すことを極端に嫌った人でした。とにかく集めて、ため込めって感じなのかな……。森元首相時代からやっているので、変えようがないんだと思った。それにキックバックを当てにしてパーティー券を山ほど売っている議員もいたから、やめるとクレームがすごいと思ったね」(X氏)
2023年末、安倍派関連先に家宅捜索に入る東京地検特捜部 (c) 現代ビジネス
当時、X氏は会計責任者から、パーティー券の販売枚数やキックバックが記されている書類も見せられていた。ノルマちょうどの数しかパーティー券を売れない議員が相当数いる一方、はるかに超えて何百万円もキックバックがある議員もいた。
「ある議員の名前の横に、ペンでAとかBといったイニシャルと、数字が書いてあったのはよく覚えている。何かのときにその意味を聞いたら『Y議員がパーティー券を売ったことになっているが、実は別の議員の紹介でノルマ以上に売っていることを把握していたので、備忘としてメモした。戻し(キックバック)の金額でもめたら困るので』と言っていた。これは闇が深い、触ると森元首相の逆鱗に触れかねない、自分の政治生命にも影響しかねない」
X氏はそう話した。
この話を「現代ビジネス」記者がX氏から聞いたのは酒席でのことだった。その後、X氏に安倍派の会計に関する資料を提供してくれないかと依頼したが、一転トーンダウンしてX氏は「無理、無理」「大きな話で、紙は担当しか持っていない」とそれ以降「闇」の話はまったくしなくなった。
だが、2023年8月頃から、先の自民党幹部は「政治とカネのことで特捜部が何かやっている。柿沢容疑者どころじゃない大スキャンダルになる」と証言し、記者もX氏が当時話していた件と関連しているのではと感じていた。
2023年の年末、安倍派関連の議員に続々とガサが入り、安倍派の危機が叫ばれるなか、「現代ビジネス」記者はX氏のもとへ向かった。当時聞いたことを改めて確認すると、X氏はこう語った。
「そういう話したよな……。事件になっていることがバレると安倍総理にキズがつく、政権が危うくなると思いつつ、将来とんでもないことになると入り混じった気持ちで口にしたのかな。ただ、経験したこと、感じたことをしべっただけで嘘はないよ」
観念している様子で、X氏はこうも続けた。
「派閥帳簿は二重どころか、三重帳簿かもしれない。何が派閥の本当の収入なのか、私もよくわからないほど複雑だ。現金で買ってもらったパーティー券の裏金化もあるようだからさ。特捜部の捜査で心配が現実となった。
安倍元首相が会長になっても変わらずで、事務総長を務めた経験のある5人衆でも結局、続けていたんでしょう。
一部の報道にあるが2022年、安倍元首相会長時代、キックバックをやめようとして、幹部が集まり相談した。しかし、春にパーティー、7月に参議院選挙が予定されていた。『選挙前になぜ』と批判を受け、安倍元首相は『これまでやってきたことで、選挙もあるので』と事務方によい解決方法はないのか、判断を任せた。
そのときの事務総長が5人衆の西村康稔さんだ。今思えば、参議院選挙はキックバックなんてしなくても勝てたので、断ち切ればよかった。
特捜部の調べを受けた議員から相談を受けたが『慣例だった』で許してもらえそうもない厳しさだそうだ。私はそれなりの立場でありながら、カネの面がダメでキックバックはそう多くないが、不記載なので責任はあり、金額がはっきりしたら訂正するつもりだ。
安倍元首相の名前は、重いんです。あの時になんとかしようという度量が私にはなかった。やっておけば後輩たちに迷惑かけずに済んだと思う。もうこうなってしまい仕方ない。書きたいなら止めない」
最高幹部・X氏の証言は重い。

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