クマ駆除の秋田県に「お前も死んでしまえ」など抗議電話殺到…佐竹知事「業務妨害です」

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今月上旬に秋田県美郷町でクマ3頭が駆除されたことについて、県に暴言や執拗(しつよう)な要求の繰り返しなど「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とみられる抗議電話が寄せられていたことが分かった。
行政サービスの低下や職員の精神面の悪化を招く可能性があり、専門家は職員を守るために毅然(きぜん)とした対応をとるべきだと指摘している。
■暴言や主張繰り返し
「クマを殺すなら、お前も死んでしまえ」「お前らみたいな能力のないやつがなぜ県庁で働いているんだ」
美郷町の畳店の作業小屋に居座ったクマの親子3頭が5日に駆除された後、県自然保護課にかかってきた電話の一部だ。職員への暴言のほか、同じ主張を一方的に繰り返す内容もあった。
同課では件数を集計していないが、翌6日からの1週間、担当の鳥獣保護管理チームの電話5台は鳴りっぱなしの状態に。再びクマが市街地に現れ、住民に危害を加えることを防ぐ措置だったが、電話は「クマがかわいそう」と駆除に反対する内容がほとんどで、県外在住者が目立った。
■知事「業務妨害」
県広報広聴課によると、県庁内部のガイドラインでは「意見や提案の理解にかかる時間」として、電話で対応する時間の目安を30分程度としている。また対応しなくてもいい内容として、個人に対する中傷、大声を上げるなど乱暴な言動、同じ意見を長時間繰り返す――などを挙げている。
ただ、電話を切るのは実際には簡単ではないという。自然保護課の担当者は「一方的に話し続けるので、切るタイミングがないこともある。たとえ電話を切っても、同じ人からすぐ電話がかかってくる場合もある」とあきらめ顔だ。1本の電話対応が1時間に上ることもあり、通常の業務に影響が出たという。
佐竹知事は23日の記者会見で、カスハラに当たる電話について、「これに付き合っていると仕事ができません。業務妨害です。その方々は話も分からないです」と述べ、すぐに電話を切るべきだとの認識を示した。
■全国でも問題に
自治体職員への暴言や執拗なクレームは全国的に問題となっている。
2020年に自治労が全国の自治体や病院の職員らを対象に行った調査で、回答した約1万4000人の半数近くが過去3年間にカスハラを受けたとした。被害を受けた職員に「出勤が憂鬱(ゆううつ)になった」(57%)、「眠れなくなった」(21%)など精神面への悪影響があった。
カスハラ問題に詳しい関西大の池内裕美教授(社会心理学)は、自治体職員は住民などの声を聴くのが仕事の一つと考えている人が多いと指摘する。ただ、電話をかけてきた一人にかかりきりになると「他の人が行政サービスを受ける機会を損失することになる」とし、時間や労力を割いて対応すべき内容かを見極める必要があると話す。
対応策として、カスハラ行為に厳しく対応すると住民にあらかじめ伝えておいたり、「あと10分だけお聞きします」など対応可能な時間を告げた後に電話を切ったりすることが有効とし、「毅然と対応することが望ましい。たまたま電話を受けた職員をみんなで守るという、組織のあり方も重要だ」と指摘している。

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