新品を“割引価格”で勝手に販売!アパレル店員の「あきれた職権乱用」が招いた悲劇

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競い合うということは、多くの人々が日常のさまざまな場面で経験する大切な行動ではないでしょうか。ただ、競うがあまり、良くない手段を講じてしまうこともあるようです。今回は、職場の売り上げ競争で問題行動をとってしまったスタッフのエピソードです。 中堅のアパレルチェーンで店長を務める中森さん(仮名・37歳)。彼の会社は目下株式上場を目指し、全社一丸となって業績を強化している真っ最中だそうです。
◆売り上げ第一主義な職場
日々行われる閉店後の終礼では、今時にしては珍しくその日の売り上げ上位者を発表し、士気を上げているのだとか。売り上げ成績優秀者には報奨金支給や査定にも大きく影響するため、スタッフによる積極的な接客合戦が繰り広げられるといいます。
「私は売り上げ第一主義なことに慣れてしまっていますし、どちらかと言うと成績がよいと満足感に浸れるんです。もともと人と話すことが好きなんで接客も全然苦ではありませんでした。でも、自分が上に立ち、後輩が必死でノルマを達成しようと血眼になっているところを見ると、なかなか厳しいことをさせてるなと感じますね。でも、これだけはわれわれ販売員の使命ですしね……」
◆昇進がかかった一大キャンペーン
そんな中、年に1度だけ開催される「全社共通売り上げキャンペーン」が始まります。期間は1か月間で、毎年10月に行われるそうです。
「このキャンペーンは、結構みんなマジで争うんですよ。だって、成績優秀者には臨時報酬も出ますし、なによりもそのがんばりが昇進の査定にも大きく関係してくるんです。ただ、売り上げのカウントはあくまで接客していた担当者がお客さんをレジまで誘導して成立するので、お客さんが自分で商品をレジまで持ってきた時はノーカウントになるんですよ。だからみんないろいろ知恵をしぼって接客を行っているようです」
それゆえ、この期間の売り場に立つスタッフ同士は、表向きは笑顔でも実際は殺伐とした雰囲気が垣間見えると言います。
◆一人勝ちのスタッフがいた
キャンペーンは、フロア主任の若手社員近藤くん(仮名・25歳)がダントツのトップで1位に輝いたそうです。
「最初はあまり気にも留めていなかったんですが、近藤くんの売り上げがスゴかったんです。まあ、もともと接客のセンスもあったし、何より負けず嫌いの彼だったので『頑張ったんだな』くらいにしか思わなかったんです」
そう話す中森さん。ただ、後日スタッフの売り上げデータを精査していたら気になる点があったと言います。
「近藤くんの販売データを見ると、売上高の割にはアイテムの点数が異常に多いんですよ。よく見ると、商品名の横には『B』という文字が付いていました。『B』とは『B級品』を意味していて、通常はお客さんから返品された商品や、商品自体に少し難がある商品の区分で、割引価格で販売するアイテムなんです」
◆あきれた職権乱用
近藤くんの売り上げをダントツトップにした「B級品」。通常は本部から半ば強制的に送りつけられる「セール用商品」と、店舗で発生する「訳あり品」という2通りの場合があると言います。どうやら今回は全てが後者であったようです。
「今回の件を近藤くん本人に確認したら、なんと彼は自分で『B級品』を生み出して倉庫の一角のダンボールに隠していたそうなんです。最初は耳を疑いましたが、彼はプロパー品を買い求めるお客さんに、名ばかりの『B級品』という新品を割引価格で販売していたんです。しかも『お客さんだけ特別に……』のような接客トークもしていたそうなんです」
同じ商品が安く買えるとあって、後日、近藤くん名指しで再来店し、他の商品に関しても掘り出し物はないか?というようなお客さんもいたといいます。
◆昇進どころか振り出しに
数日後、本部長のT氏から中森さんに連絡が入り、店舗に出向いてヒアリングがしたいとの申し出があったそうです。
「Tさんからはとても厳しい通達を受けました。それも無理はないと思います。会社側が近藤くんに出した結果は物流倉庫への異動でした。もちろん私の監督責任も問われ、いろいろ追求もされました。私のマネージャー職も今後どうなるか分かりませんよ……」
ただ、会社側も今回の件がノルマや売り上げ競争に起因することは否めないとし、今後はこのようなキャンペーンを行わないことになったそうです。
「半年ほどたって、近藤くんからLINEで会社を辞めるという連絡がきたんです。とても複雑な思いでしたね。私も売り上げばかり追い求める仕事に、最近嫌気がさしてきているんですよ」
中森さんも自分のキャリアをもう一度見直そうとしていると教えてくれました。
<TEXT/ベルクちゃん>
―[すぐに辞めた新入社員]―

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