昨今は大手回転寿司チェーン店での迷惑行為から始まり、飲食店における“客のとんでもない行動”が話題になることも多々。店内で迷惑客に遭遇し、顔をしかめた経験をもつ人もいるだろう。 今回は、ラーメン屋の元店員たちが体験したエピソードを紹介する。 ◆テーブル席にこだわるカップル つけ麺が人気のラーメン店でアルバイトをしていた加藤ひかりさん(仮名・20代)は、「カウンター席は嫌だ」と主張する客に困惑したという。そのラーメン店は、カウンターが6席、2人掛けテーブルが4席、4人掛けテーブルが1席の配置だった。 「平日でも行列のできる人気店でした。店自慢の自家製麺は極太で茹でるのに時間が掛かるため、効率よくお客さんを案内して提供するために、食券を購入してから列に並んでもらうスタイルだったんです。それで、着席後すぐに提供できるようにしていました。つまり、店内に案内するときには、2、3人前の麺がすでに釜に入っている状態」 そこで困るのが“席にこだわる客”だったと加藤さんは言う。 ◆店内に響き渡る声で文句を言う 「店員側は、小さなお子様連れのお客様を優先してテーブル席に案内します。ですので、ホールの状況を確認しつつ、麺を茹でる時間も気にしながら対応していました」 できるだけ席の希望は聞かないことがルールだったというが、ある日のランチタイムで店が最も混雑している時間帯。1組のカップルが騒動を巻き起こす。 「カウンター席を案内したところ、『カウンターは嫌だ』と2人揃って強く主張されたんです」 しかし、その客の麺はすでに釜に入っており、加藤さんは断った。 「仕方なしに納得していただき、カウンター席に座ってもらいましたが、店内に響き渡るような声で文句を言い、雰囲気は最悪の状態になってしまいました」 カップル以外にラーメンを楽しみに待っている客が多くいるにもかかわらず、気持ちを下げるような言葉の数々に、加藤さんは残念な思いだったと話す。
◆オープン記念の“半額以下”が裏目に「まるで“喫茶店”感覚」
席の“回転率”にかかわる部分は、店側からは嫌がられることもある。以前働いていた店が移転リニューアルオープンした際の出来事が忘れられないという田中和樹さん(40代・仮名)。
「リニューアルオープン記念ということで、ラーメンと餃子を期間限定で“半額以下”にして提供することになり、地元にチラシをまきました。そのおかげで大行列だったのですが、初日に“予想外の行動”をするお客さんも出てきてしまって。これを迷惑客と言っていいのかわかりませんが……」
その店はもともと繁華街で営業していたが、移転先は「普通の住宅街」。つまり、客層がまったく異なる。
「ふだんはラーメンなんて食べなさそうな中高年女性の集団が、テーブル席の一角でまるで“喫茶店”のような感覚でおしゃべりしながら長居しちゃって。たしかに、店長は『地元で長く愛される店にしたい』と言っていましたが、席が回転せずに困ってしまったんです。
店の外で待っている他のお客さんから『早くしろよ!』って声が飛び交って、異様な雰囲気でしたね……」
◆さすがに空気を読んでくれ!
冬の寒い時期にもかかわらず、並んでいた客は2時間以上も外で待たされ、ラーメンを食べ終わってからもいっこうに席を譲ろうとしない中高年女性の集団に対して苛立ちを隠せない様子だったという。
まわりに喫茶店もないような住宅街で、そういう客層まで計算していなかった店側が悪いのかもしれませんが、たかだか数百円でお客さんも図々しいというか。さすがに“空気を読んでくれ”って思いますね。オープン2日目からは、反省をいかして席に時間制限を設けることで解決しました。ちなみに、その集団が来店することは二度とありませんでした」
◆スタッフの動向を観察してくる客
原田紗希さん(仮名・50代)もオープン間もないラーメン屋で働いていたが、最も忙しいランチタイムに来店した客の言動に迷惑したという。 「お店は開業時から話題となり、お客様が途絶えることのない繁盛店でした。ある日、2人組が入店してきました」 客は、ラーメンの提供を待っている間、ずっとスタッフの動向を観察していたようで……。原田さんは、嫌な目線を感じながら仕事をしていた。そして無事にラーメンを提供し安心していたのだが……。 その客は、会計時になると長々と文句を言い始めたそうだ。 ◆「こんな味のラーメンを作っていてはダメ」と上から目線のアドバイス 「どうしてここのラーメンはこんなに脂っこいの?」「人に出すようなラーメンだとは思えない!」「このお店は何を考えているの?」「こんな味のラーメンを作っていてはダメ!」 お金を手にしながらも、それを渡そうとしない。 「“謎の上から目線のアドバイス”まで言ってきて、ウンザリしたのですが、どうやらお客さんの素性は、近くで町中華を営んでいる方だったんです。結局は、私たちスタッフに忠告し、帰っていきましたけど……」 その中華料理店は、最近移転してきたばかりだった。原田さんが働いていた店同様に、人気店であることが後に判明したという。 「おそらくライバル店を見学しにきたのだと思いますが、余計なお世話ですごくモヤモヤしました」 ちなみに、どちらの店も繁盛店として現在も営業しているそうだ。
<取材・文/chimi86>