大麻乱用、容疑者数が覚せい剤超え…「健康に悪くない」誤情報で若者に蔓延

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

全国の警察が今年上半期(1~6月)に摘発した大麻事件の容疑者が過去最多の2837人に上り、覚醒剤事件の容疑者(2470人)を初めて上回ったことが警察庁への取材でわかった。
特に若者への蔓延(まんえん)が深刻で、専門家は啓発などを強化する必要性を指摘している。(西原寛人)
■10~20代 7割
警察庁によると、薬物犯罪の主流だった覚醒剤事件の容疑者は、半年ごとの統計が残る1990年以降、ピークの97年に年間1万9691人に上った。その後は徐々に減少し、昨年は5944人だった。密輸や密売に関わる暴力団の弱体化が背景にあるとみられる。
これに対し、大麻事件の容疑者は10年前の2013年に1534人だったが、年々増加。昨年は5184人で、覚醒剤の容疑者数まであと760人と迫り、今年上半期に初めて逆転した。
大麻は特に若年層への浸透が深刻化している。警察庁によると、昨年摘発された容疑者のうち約7割が10~20歳代だった。個人でも栽培が可能なうえ、覚醒剤より価格が安いことなどが要因とみられる。
使用方法も、乾燥大麻を火であぶって吸うほか、クッキーやグミに大麻を混ぜた食品や、電子たばこ用の「大麻リキッド」などが流通し、乱用者の裾野が広がっている。
先月も、強豪として知られる東京農業大ボクシング部の部員2人(ともに19歳)が大麻の営利目的所持容疑で警視庁に逮捕された。捜査幹部は「暴力団など反社会的勢力とは無縁の『普通の若者』が目立っている」と危機感を強める。
■ネットに誤情報
蔓延の背景にあるのが、「大麻は健康に悪くない」などとする誤情報だ。
SNSでは「依存性が低いソフトドラッグ」「有害性を示すデータはない」といった書き込みが少なくない。警察庁が昨年秋、大麻所持で摘発された911人の捜査内容を分析した結果、大麻に危険性が「ない」と考えていた容疑者が約8割にも上っていた。
横浜薬科大の篠塚達雄客員教授(法中毒学)は「大麻の乱用者や密売人は『快感が得られる』などと強調するが、実際には不安感に襲われ、嘔吐(おうと)などの健康被害もある」と指摘。「大麻はより強い違法薬物乱用の入り口となる『ゲートウェー・ドラッグ』と呼ばれており、教育現場などで啓発を強化する必要がある」と話す。
密売人はSNSで集客し、メッセージを自動消去できる通信アプリ「テレグラム」に誘導して受け渡しを行うことが多い。5月に警視庁に逮捕された元会社員の男(24)(大麻取締法違反で起訴)もその一人で、大麻の隠語となるブロッコリーの絵文字を使い、ツイッターで客を募っていた。
警察当局はこうした投稿の削除要請を進めるとともに、密売人についての捜査を強化する方針だ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。