【独自】“日本一短い”西九州新幹線 23日に開業…困惑の声も「佐賀にメリットない」

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23日、新たな新幹線・西九州新幹線が開業します。車両は、白と赤を基調にしたデザインとなっています。“一番列車”の切符が10秒で売り切れるなど期待が高まる一方で、困惑の声も上がっています。
■“三刀流”人材でコンパクト運営
23日、いよいよデビューする、西九州新幹線の「かもめ」。佐賀県の武雄温泉駅と長崎県の長崎駅をつなぐ、全長66キロ。途中駅は3駅しかない“日本一短い新幹線”です。
車両は、東海道新幹線でも使われている最新の「N700S」。山口県の工場で製造され、船で長崎へ運ばれました。
車体には、オリジナルの赤いラインがあしらわれ、毛筆体の「かもめ」の文字もあります。
東海道新幹線では、普通車の座席は「横5列」となっていますが、西九州新幹線の普通指定席は「横4列」とグリーン車のようにゆったりしています。座席はヘッドリストまでフワフワで、とても座り心地がいいです。
JR九州は、短い区間のため、運転士が車掌や車両点検の資格も持つ“三刀流”の人材で、コンパクトな運営を行います。
試乗会の車両を運転・松山学運転士:「新しい列車で、長崎を楽しんでもらいたい」
一番列車の指定席は、開業1カ月前の先月23日、販売開始直後に鉄道ファンが殺到し、わずか10秒で売り切れになりました。
■困惑の声「佐賀にメリットない」
多くの人が西九州新幹線の開業を待ちわびる一方、いまだ解決策を見出せていない問題もあります。それは、「途中で寸断」です。
武雄温泉駅と九州新幹線の新鳥栖駅の間をつなぐ、佐賀県のルート。ここがつながり、長崎から博多まで新幹線で結ばれれば、関西方面へ直通することも可能になります。しかし…。
佐賀県地域交流部・山下宗人部長:「佐賀県は、新幹線整備による時間短縮効果がほとんどない。あまりない、メリットが。ここだけになっちゃったから、つなごうよという話になると、ちょっと待って下さい。というのが、佐賀県の立場」
佐賀県の担当者は取材に対し、お手製のボードを立てて、力説してくれました。
■「新幹線不要」立場もギリギリ合意
問題となっているのは、西九州新幹線の武雄温泉駅と九州新幹線の新鳥栖駅をつなぐルート。この佐賀県の区間には、新幹線がつながっておらず、現在、在来線が走っています。
山下部長:「最初に申し上げておきたいが、佐賀県の鉄道環境は悪くない」
元々、博多から佐賀を通り、長崎まで通す計画があった新幹線。しかし、そもそも佐賀県は、「新幹線は不要」という立場でした。
県庁所在地の佐賀から博多へは、在来線の特急を使えば35分ほど。ところが、新幹線を作っても短縮されるのは、およそ15分と、多額の建設費を負担するメリットはあまりないといいます。さらに…。
山下部長:「西九州新幹線の開業に伴って、特急が(一日に)上下45本あったのが、14本まで減った。(新幹線に)あまりメリットがない一方で、(既存路線の)利便性が低下するというデメリットも抱えた。そういう難しい立場だったが、長崎県のことも考えて、在来線(の線路)を利用するのであれば、ということでギリギリの判断で合意した」
■“両用車両”開発断念「約束が違う」
2007年、当初、佐賀県が新幹線を通すことに合意した理由は、国が主導して、線路の幅が異なる新幹線と在来線どちらも走行できる「フリーゲージトレイン」という車両を開発すると約束したことでした。
これならば既存の線路が活用でき、負担も軽いはずでした。ところが、国は試験走行を重ねるうちに、車両の耐久性に問題があるなどとして、フリーゲージトレインの開発を断念したのです。
その後、国や長崎県が、新幹線専用の線路を新設する「フル規格」での新幹線整備を求めてきたといいます。そのため、佐賀県は「約束が違う」と主張しています。
山下部長:「多額の建設費負担をして、在来線の利便性を低下させても、それを超える大きなメリットがあれば、手を挙げるだろうが、まだそこに至っていない」
国と佐賀県は協議を続けていますが、結論が出ないまま、西九州新幹線は、23日の開業を迎えることになります。

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