「突出して自己肯定感が低い」日本の子ども よかれと思ってかけた言葉が「呪い」に

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「うちの子は本当にダメで…」そんな風に自分の子どもについて卑下することはないだろうか。謙遜は美徳として受け入れられがちだが、子育てでは注意が必要なようだ。日本の子どもは世界に比べて自己肯定感が低い。その背景には、親がよかれと思って発している一言が、子どもを追い詰めている現状があった。【写真を見る】「突出して自己肯定感が低い」日本の子ども よかれと思ってかけた言葉が「呪い」に半数以上が「自分に満足していない」突出して自己肯定感が低い日本自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定できる感覚で、良い人生を送るために必要な根源的な力といえる。しかし、世界と比較すると日本の子どもは自己肯定感が低いことが指摘されている。

内閣府の調査(※1)によると「自分自身に満足していますか?」という問いに対して、日本の若者は、そう思うが45.1%で、そう思わないが54.9%と半数以上になっている。これは世界と比較すると、突出した数字だ。韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの若者に対する調査では「自分自身に満足している」がいずれも7割を超えている。中でもアメリカは、86.9%が自分自身に満足していると答えていて、日本の約2倍の割合だ。なぜ日本の子どもは自己肯定感がこんなにも低いのだろうか?1万人の犯罪者や非行少年の心理分析を行ってきた犯罪心理学者の出口保行さんは、日本の子どもは自己肯定感の低さが非行につながっていると感じている。著書『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』で、親がよかれと思って投げかけている言葉が「呪い」となって子どもを思わぬ方向に導いてしまうのだと警鐘を鳴らしている。具体的に、親のどんな言動が子どもの自己肯定感を低めているというのだろうか。注意!子どもの自己肯定感を下げる“司令官的な言葉”ーーこれまで心理分析を行ってきて、日本の子どもの自己肯定感の低さはなにに起因していると感じていますか?「親が子どもにかける言葉が、子どもの自己肯定感を破壊してしまっていることがあると感じています。たとえば『何度言ったらわかるの』という言葉を言ってしまう人はいると思います。この言葉を使う時、親がこうあるべきだと感じていることを押し付けるケースが非常に多いです。でも、子どもにとってみれば、それが本当にいいのかなんてわからないわけです。『どうしてそんなこと言われなきゃいけないのかな』と考えているのに、何度言ったらわかるのよって言われてしまう。そうなると、自分が認められてる、とか、理解されてるという感覚は持てないですよね。自己肯定感は、自分らしく生きてていいんだな、自分はこうやって行動していいんだなって思えることがすごく大事なんです。親が絶対的な司令官で、その司令官のいうことに絶対服従しなくてはいけないという価値観では高めることはできません。『何度言ったらわかるの』だけでなく、親の考えを押し付けるような声かけは注意が必要です」ーー世界と比べて、日本の子どもの自己肯定感が低いのには、なにか日本特有の理由もあるのでしょうか?「日本の謙遜の文化が影響しているとも思っています。日本では自分の子どものことを他人の前で積極的に褒めないですよね。基本的には『いえいえ、うちの子なんか全然ダメで…』と言うことのほうが多いと思います。それが美徳であり、日本の文化としてはいいのだと思います。ただ、そういう親の言葉を聞いている子どもは、案外真に受けているものなんです。自分は駄目なのか、とか、あんまり頭が良くないのかって。ですので、親が第三者に子どものことを褒めないことは日本の文化として仕方がないけれども、その後にフォローすることをしてほしいです。一言でいいので、子どもには、そんなことないよ、本当はこういうふうに思っているんだよって。これをしないでいる親がとても多くて、子どもの自己肯定感に影響を与えていると思います」接し方を変えると、子どもの「宝物」になる一言が生まれる ーー子どもの気持ちに寄り添った声かけが重要なんですね。寄り添う…言葉ではわかっていても、どう実践すればいいか悩む人もいるように思います。「子どもは自分の気持ちのわずかしか言葉にできていません。ですので、大人が子どもの行動を観察することが大切なんです。なんとなく子どもと接しているのではなく、いまこの子は何を考えているのかな、どういう状況なのかなって、常に観察する感覚を持つと、その都度、子どもに寄り添った声がけができるようになります。少年院の先生はこれがとても上手です。先生たちは非行少年を相手に、絶妙なタイミングで子どもが求める一言をかけて、その言葉が、その子にとって一生の宝物になったりするんです。それは神業でも何でもありません。先生たちは子どもたちの様子を常に観察し、どんな気持ちなんだろうと考えながら見ているからできるんです」子どもの個性を伸ばす褒め方 短所を長所に切り替えようーー慣れていないと、褒め方がよくわからない、と感じる方もいると思います…。コツはありますか?「子どもを叱るときは、その子の短所を叱るものです。その子を伸ばしたいんだったら、同じことを長所として褒めてみてください。長所と短所は違うものではありません。その子らしさを、ネガティブにみれば短所になるし、ポジティブにみれば長所になるんです。例えば、犯罪者は短絡的で、思いつきを行動に移してしまって失敗する、とよく言われます。これは短所としてみているときの言い方です。これを長所としてみると、とりあえず一歩を踏み出せる、積極的な人間であると言い変えられます。私たちは、失敗した原因を短所で分析する。でもその後、今度は次の成功に繋げるときは、それを長所として伸ばしてあげるようにしています。人はそんなに変わりません。ですので、評価する私達の側の感覚を変えるんです。短所と長所の付け替えを、親がうまくしてあげたら、子どもはすごく嬉しいし、伸びるんです」ーー自己肯定感を高めるとは、その子らしさを認めて、声をかけてあげる、ということなんでね…。謙遜の文化の影響もあるのかもしれませんが、思ってはいても、口にするのが苦手な人も多いかもしれませんね…。「ぜひ、意識して声に出すようにしてください。それは、子どもに対する大人の気持ちについてもそうです。『そのままのあなたが大切』だとか『あなたが元気でいてくれるだけで嬉しい』ですとか、ちゃんと言葉にして子どもに伝えることがすごく大事です。本当に短い言葉、5秒もかからない言葉です。でもそれが、子どもにとっては、すごく重要なことなんです」(6月11日放送・配信『SHARE』より)※1 内閣府「我が国と諸外国の若者意識に関する調査」(平成30年度)
「うちの子は本当にダメで…」そんな風に自分の子どもについて卑下することはないだろうか。謙遜は美徳として受け入れられがちだが、子育てでは注意が必要なようだ。日本の子どもは世界に比べて自己肯定感が低い。その背景には、親がよかれと思って発している一言が、子どもを追い詰めている現状があった。
【写真を見る】「突出して自己肯定感が低い」日本の子ども よかれと思ってかけた言葉が「呪い」に半数以上が「自分に満足していない」突出して自己肯定感が低い日本自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定できる感覚で、良い人生を送るために必要な根源的な力といえる。しかし、世界と比較すると日本の子どもは自己肯定感が低いことが指摘されている。

内閣府の調査(※1)によると「自分自身に満足していますか?」という問いに対して、日本の若者は、そう思うが45.1%で、そう思わないが54.9%と半数以上になっている。これは世界と比較すると、突出した数字だ。韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの若者に対する調査では「自分自身に満足している」がいずれも7割を超えている。中でもアメリカは、86.9%が自分自身に満足していると答えていて、日本の約2倍の割合だ。なぜ日本の子どもは自己肯定感がこんなにも低いのだろうか?1万人の犯罪者や非行少年の心理分析を行ってきた犯罪心理学者の出口保行さんは、日本の子どもは自己肯定感の低さが非行につながっていると感じている。著書『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』で、親がよかれと思って投げかけている言葉が「呪い」となって子どもを思わぬ方向に導いてしまうのだと警鐘を鳴らしている。具体的に、親のどんな言動が子どもの自己肯定感を低めているというのだろうか。注意!子どもの自己肯定感を下げる“司令官的な言葉”ーーこれまで心理分析を行ってきて、日本の子どもの自己肯定感の低さはなにに起因していると感じていますか?「親が子どもにかける言葉が、子どもの自己肯定感を破壊してしまっていることがあると感じています。たとえば『何度言ったらわかるの』という言葉を言ってしまう人はいると思います。この言葉を使う時、親がこうあるべきだと感じていることを押し付けるケースが非常に多いです。でも、子どもにとってみれば、それが本当にいいのかなんてわからないわけです。『どうしてそんなこと言われなきゃいけないのかな』と考えているのに、何度言ったらわかるのよって言われてしまう。そうなると、自分が認められてる、とか、理解されてるという感覚は持てないですよね。自己肯定感は、自分らしく生きてていいんだな、自分はこうやって行動していいんだなって思えることがすごく大事なんです。親が絶対的な司令官で、その司令官のいうことに絶対服従しなくてはいけないという価値観では高めることはできません。『何度言ったらわかるの』だけでなく、親の考えを押し付けるような声かけは注意が必要です」ーー世界と比べて、日本の子どもの自己肯定感が低いのには、なにか日本特有の理由もあるのでしょうか?「日本の謙遜の文化が影響しているとも思っています。日本では自分の子どものことを他人の前で積極的に褒めないですよね。基本的には『いえいえ、うちの子なんか全然ダメで…』と言うことのほうが多いと思います。それが美徳であり、日本の文化としてはいいのだと思います。ただ、そういう親の言葉を聞いている子どもは、案外真に受けているものなんです。自分は駄目なのか、とか、あんまり頭が良くないのかって。ですので、親が第三者に子どものことを褒めないことは日本の文化として仕方がないけれども、その後にフォローすることをしてほしいです。一言でいいので、子どもには、そんなことないよ、本当はこういうふうに思っているんだよって。これをしないでいる親がとても多くて、子どもの自己肯定感に影響を与えていると思います」接し方を変えると、子どもの「宝物」になる一言が生まれる ーー子どもの気持ちに寄り添った声かけが重要なんですね。寄り添う…言葉ではわかっていても、どう実践すればいいか悩む人もいるように思います。「子どもは自分の気持ちのわずかしか言葉にできていません。ですので、大人が子どもの行動を観察することが大切なんです。なんとなく子どもと接しているのではなく、いまこの子は何を考えているのかな、どういう状況なのかなって、常に観察する感覚を持つと、その都度、子どもに寄り添った声がけができるようになります。少年院の先生はこれがとても上手です。先生たちは非行少年を相手に、絶妙なタイミングで子どもが求める一言をかけて、その言葉が、その子にとって一生の宝物になったりするんです。それは神業でも何でもありません。先生たちは子どもたちの様子を常に観察し、どんな気持ちなんだろうと考えながら見ているからできるんです」子どもの個性を伸ばす褒め方 短所を長所に切り替えようーー慣れていないと、褒め方がよくわからない、と感じる方もいると思います…。コツはありますか?「子どもを叱るときは、その子の短所を叱るものです。その子を伸ばしたいんだったら、同じことを長所として褒めてみてください。長所と短所は違うものではありません。その子らしさを、ネガティブにみれば短所になるし、ポジティブにみれば長所になるんです。例えば、犯罪者は短絡的で、思いつきを行動に移してしまって失敗する、とよく言われます。これは短所としてみているときの言い方です。これを長所としてみると、とりあえず一歩を踏み出せる、積極的な人間であると言い変えられます。私たちは、失敗した原因を短所で分析する。でもその後、今度は次の成功に繋げるときは、それを長所として伸ばしてあげるようにしています。人はそんなに変わりません。ですので、評価する私達の側の感覚を変えるんです。短所と長所の付け替えを、親がうまくしてあげたら、子どもはすごく嬉しいし、伸びるんです」ーー自己肯定感を高めるとは、その子らしさを認めて、声をかけてあげる、ということなんでね…。謙遜の文化の影響もあるのかもしれませんが、思ってはいても、口にするのが苦手な人も多いかもしれませんね…。「ぜひ、意識して声に出すようにしてください。それは、子どもに対する大人の気持ちについてもそうです。『そのままのあなたが大切』だとか『あなたが元気でいてくれるだけで嬉しい』ですとか、ちゃんと言葉にして子どもに伝えることがすごく大事です。本当に短い言葉、5秒もかからない言葉です。でもそれが、子どもにとっては、すごく重要なことなんです」(6月11日放送・配信『SHARE』より)※1 内閣府「我が国と諸外国の若者意識に関する調査」(平成30年度)
自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定できる感覚で、良い人生を送るために必要な根源的な力といえる。しかし、世界と比較すると日本の子どもは自己肯定感が低いことが指摘されている。
内閣府の調査(※1)によると「自分自身に満足していますか?」という問いに対して、日本の若者は、そう思うが45.1%で、そう思わないが54.9%と半数以上になっている。これは世界と比較すると、突出した数字だ。
韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの若者に対する調査では「自分自身に満足している」がいずれも7割を超えている。中でもアメリカは、86.9%が自分自身に満足していると答えていて、日本の約2倍の割合だ。
なぜ日本の子どもは自己肯定感がこんなにも低いのだろうか?
1万人の犯罪者や非行少年の心理分析を行ってきた犯罪心理学者の出口保行さんは、日本の子どもは自己肯定感の低さが非行につながっていると感じている。著書『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』で、親がよかれと思って投げかけている言葉が「呪い」となって子どもを思わぬ方向に導いてしまうのだと警鐘を鳴らしている。
具体的に、親のどんな言動が子どもの自己肯定感を低めているというのだろうか。
ーーこれまで心理分析を行ってきて、日本の子どもの自己肯定感の低さはなにに起因していると感じていますか?
「親が子どもにかける言葉が、子どもの自己肯定感を破壊してしまっていることがあると感じています。
たとえば『何度言ったらわかるの』という言葉を言ってしまう人はいると思います。この言葉を使う時、親がこうあるべきだと感じていることを押し付けるケースが非常に多いです。
でも、子どもにとってみれば、それが本当にいいのかなんてわからないわけです。『どうしてそんなこと言われなきゃいけないのかな』と考えているのに、何度言ったらわかるのよって言われてしまう。そうなると、自分が認められてる、とか、理解されてるという感覚は持てないですよね。
自己肯定感は、自分らしく生きてていいんだな、自分はこうやって行動していいんだなって思えることがすごく大事なんです。親が絶対的な司令官で、その司令官のいうことに絶対服従しなくてはいけないという価値観では高めることはできません。『何度言ったらわかるの』だけでなく、親の考えを押し付けるような声かけは注意が必要です」
ーー世界と比べて、日本の子どもの自己肯定感が低いのには、なにか日本特有の理由もあるのでしょうか?
「日本の謙遜の文化が影響しているとも思っています。
日本では自分の子どものことを他人の前で積極的に褒めないですよね。基本的には『いえいえ、うちの子なんか全然ダメで…』と言うことのほうが多いと思います。それが美徳であり、日本の文化としてはいいのだと思います。
ただ、そういう親の言葉を聞いている子どもは、案外真に受けているものなんです。自分は駄目なのか、とか、あんまり頭が良くないのかって。
ですので、親が第三者に子どものことを褒めないことは日本の文化として仕方がないけれども、その後にフォローすることをしてほしいです。一言でいいので、子どもには、そんなことないよ、本当はこういうふうに思っているんだよって。これをしないでいる親がとても多くて、子どもの自己肯定感に影響を与えていると思います」
ーー子どもの気持ちに寄り添った声かけが重要なんですね。寄り添う…言葉ではわかっていても、どう実践すればいいか悩む人もいるように思います。
「子どもは自分の気持ちのわずかしか言葉にできていません。ですので、大人が子どもの行動を観察することが大切なんです。なんとなく子どもと接しているのではなく、いまこの子は何を考えているのかな、どういう状況なのかなって、常に観察する感覚を持つと、その都度、子どもに寄り添った声がけができるようになります。
少年院の先生はこれがとても上手です。先生たちは非行少年を相手に、絶妙なタイミングで子どもが求める一言をかけて、その言葉が、その子にとって一生の宝物になったりするんです。それは神業でも何でもありません。先生たちは子どもたちの様子を常に観察し、どんな気持ちなんだろうと考えながら見ているからできるんです」
ーー慣れていないと、褒め方がよくわからない、と感じる方もいると思います…。コツはありますか?
「子どもを叱るときは、その子の短所を叱るものです。その子を伸ばしたいんだったら、同じことを長所として褒めてみてください。
長所と短所は違うものではありません。その子らしさを、ネガティブにみれば短所になるし、ポジティブにみれば長所になるんです。
例えば、犯罪者は短絡的で、思いつきを行動に移してしまって失敗する、とよく言われます。これは短所としてみているときの言い方です。これを長所としてみると、とりあえず一歩を踏み出せる、積極的な人間であると言い変えられます。
私たちは、失敗した原因を短所で分析する。でもその後、今度は次の成功に繋げるときは、それを長所として伸ばしてあげるようにしています。
人はそんなに変わりません。ですので、評価する私達の側の感覚を変えるんです。短所と長所の付け替えを、親がうまくしてあげたら、子どもはすごく嬉しいし、伸びるんです」
ーー自己肯定感を高めるとは、その子らしさを認めて、声をかけてあげる、ということなんでね…。謙遜の文化の影響もあるのかもしれませんが、思ってはいても、口にするのが苦手な人も多いかもしれませんね…。
「ぜひ、意識して声に出すようにしてください。それは、子どもに対する大人の気持ちについてもそうです。
(6月11日放送・配信『SHARE』より)※1 内閣府「我が国と諸外国の若者意識に関する調査」(平成30年度)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。