72歳おひとりさま築40年の家と試行錯誤の暮らし

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毎日を楽しく快適に過ごすためにリフォームをしてみませんか(写真:マガジンハウス提供)
シングルマザーでありフリーランスとして働いてきた紫苑さんの年金は月に5万円。お金があってもなくても、お金に左右される人生に心からの安心はなかったと語る紫苑さんですが、「年金月5万円」という生活になってやっと心の平穏を得られ、「最高の今」を過ごせるようになりました。
「今がいちばん」と言い切れるその理由とは何か? 豪奢でも清貧でもない自分を本当に幸せにしてくれる、紫苑さん的「お金との付き合い方」には、先行き不透明な世の中、不安にかられることなく、毎日を楽しく過ごすヒントが詰まっています。
(『72歳ひとり暮らし、「年金月5万」が教えてくれたお金との向き合いかた40』から一部を抜粋・再構成して紹介します)
築40年、10坪あまり、人生で初めて小さな家を持つことになりました。買ったときは65歳。72歳を控えた日、懸念の階段の手すりを取り付けました。
わが家は、買ったときにはリフォームしてありましたが、一番心配だったのは、階段に手すりが付いていなかったことでした。
わが家を訪れるほとんどの人が「わあ、階段、急ですね」「怖い」「危ない」「手すりを付けたほうがいい」とアドバイスしてくれます。
引っ越した当時は、この階段のためにプチうつにかかったほどです。というのも引っ越し前に「階段から落ちて怪我をした」という知人の話を聞き、「ああ、私もそのうちこの階段から落ちて怪我をするなあ」と思い込んだのです。
プチうつの原因は階段のせいだけではありません。前のアパートは窓からの眺めに公園の青々とした樹木が広がっていました。今は隣の家の灰色壁。暗く狭い空間に閉じ込められているようで気がめいったのです。
懸念の階段もそのうち慣れてきました。プチプラ生活のお陰で心身ともに丈夫になり、足腰の運動になると前向きに捉えられるほどになったのです。
それでも急な階段は先を考えるとやはり心配です。自分で手すりを付けるつもりであれこれ調べてみました。のこぎりや金づちなどの道具は一応そろっています。それを使ってと企(たくら)んでいたのですが、手すりに素人仕事は危ない。
では、どこに依頼したらいいのか。見当もつきません。
そこで、区のシルバー人材センターに電話をしてみることに。区の施設なので、料金も含めなにかと安心と思ったわけです。
ところが、「大工は所属していない」とのこと。そんなとき、公的な補助のことを思い出し、区役所に尋ねてみると、「地域包括支援センター」、通称「お年寄りセンター」なる施設を教えてくれました。65歳以上の人には、なにかと助けになる制度、施設です。65歳以上、要介護´△諒には公的な補助が出るとのことです。
私は年齢的な条件は合っていますが、「要介護にはまだ遠い」と思い、それでも連絡したのは、良心的な業者を紹介してほしかったからです。
「実費でもいいのですが……」
「では、業者さんに聞いてみます」との返事。
急な階段も手すりがあると安心安全(写真:マガジンハウス提供)
しばらくすると、「大丈夫、できます」と。その後「せっかくですから、少しでも補助が出る道、方法を探してみましょう」と言ってくれました。
業者、大工、包括センターの3人がわが家に見えたのは寒さ厳しい冬のある日でした。階段を調べた後、センターの方が、「健康状態チェックシート」で、私の健康状態をチェック。
健康だと思っていても、70歳を過ぎるといろいろあるものです。乳がん手術、気管支炎、歯周病、白内障などの状態をチェックしたところ、サイワイ「補助金対象になる」との結果でした。
「要介護」ではなく「予防介護」に相当したのです。7万円程度の費用がその一割(健康保険割合による)、6800円で付けられるという恩恵にあずかることができました。補助だけではなく、この先、なにかと相談できそうで、心強い気持ちです。
家を買って以来、試行錯誤しながらも暮らしを楽しんでいることはたしかですが、後悔したことも正直あります。
まず、耐震構造です。日本は地震の国、昭和56年(1981年)には、建築確認申請が受理されるためには「新耐震基準」で建てる義務が生じました。これは宮城県沖地震を踏まえてのもの。わが家は買った当時(2016年)には築40年でしたから、旧耐震基準で建てられたわけなので、この新耐震基準は満たしていないということが心配です。
2つ目は床下などを調べるための「床下収納」がなかったこと。家を購入してから5年目くらいに大工さんに家屋を調べてもらったところ、「床下収納がない!」と驚かれ、「え、床下収納って何?」と始めてその機能、大切さに気づきました。
床下収納は台所などの床下を調べるための「穴」。なぜこの穴が必要かというと、白アリなどの害虫予防のための液剤を散布したり、家屋の状態を調べるための出入り口です。
慌てて床下収納を作ってもらいましたが、この費用、1万5000円。少し痛い出費でした。
購入する前に、住宅の劣化を専門的知識で判断してくれる住宅診断士などにお願いすれば良かったなあ、と今では思います。費用は当時で10万円くらいでしたが、家の購入の際に不動産業者に伝えておけば、この費用も負担してもらえたかと思います。
そして最後には「日当たり」です。
わが家を内覧したのは、3月の天気のいい土曜日の午後でした。不動産屋がその時間を狙ったのかどうかは不明ですが、南側のベランダから気持ち良い光がさしていました。
実際に住んでみると、1階のリビングは思ったより暗く、これははっきり言って失敗。夏はまだ明るいのですが、冬は電気を点(つ)けるほどの暗さです。
他に選択肢はなかったので仕方ないことではありますが、余裕があれば内覧する際は、時間帯を変えて何度か訪れるなどの考慮も必要です。
細かい点を言うと、「一軒家は寒い」「細かい埃(ほこり)が溜まりやすい」「電気のコンセントの数が少ない、変な場所についている」などがあります。密封空間のマンションに比べると、より健康、自然に近くていいという人もいますから、こちらは好み次第ですが、コンセントについては、「どうしてここにないの?」「どうしてこんなところにあるの?」と不便でしょうがない。ここも、あらかじめ調べておけば良かったと思っています。わが家は2階の部屋にはエアコンをつける位置にコンセントがなく、気づいて指摘すると不動産屋がコンセントを付けてくれました。何ごとも調べたうえで、交渉してみることですね。それでも、住めば都。手を入れていくうちに愛着のある空間になっていったのはたしかです。中古を破格の値段で購入し、自分好みに育てていく人も徐々に増えています。ネットで見ると、ビフォー・アフターのあまりの変わりように驚くこともあります。もっと若かったら、こんなふうに「家育て」を楽しみたいなと思いました。家の後悔、先に立たず。隅々まで念入りに。シロアリ駆除の際などに必要であろう床下の入り口は、引っ越した後に工事(写真:マガジンハウス提供)(紫苑 : フリーランサー)
細かい点を言うと、「一軒家は寒い」「細かい埃(ほこり)が溜まりやすい」「電気のコンセントの数が少ない、変な場所についている」などがあります。
密封空間のマンションに比べると、より健康、自然に近くていいという人もいますから、こちらは好み次第ですが、コンセントについては、「どうしてここにないの?」「どうしてこんなところにあるの?」と不便でしょうがない。ここも、あらかじめ調べておけば良かったと思っています。
わが家は2階の部屋にはエアコンをつける位置にコンセントがなく、気づいて指摘すると不動産屋がコンセントを付けてくれました。何ごとも調べたうえで、交渉してみることですね。
それでも、住めば都。
手を入れていくうちに愛着のある空間になっていったのはたしかです。中古を破格の値段で購入し、自分好みに育てていく人も徐々に増えています。ネットで見ると、ビフォー・アフターのあまりの変わりように驚くこともあります。もっと若かったら、こんなふうに「家育て」を楽しみたいなと思いました。
家の後悔、先に立たず。隅々まで念入りに。
シロアリ駆除の際などに必要であろう床下の入り口は、引っ越した後に工事(写真:マガジンハウス提供)
(紫苑 : フリーランサー)

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