学芸大付属大泉小でいじめ 適切な対応せず、男児転校し不登校に

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東京学芸大付属大泉小学校(東京都練馬区)で2022年、学校側が当時5年生だった男子児童が同級生からいじめを受けていることを把握しながら適切に対応せず、男児は不登校になり、今年5月に転校を余儀なくされていたことが毎日新聞の取材で判明した。付属小は、校内アンケートで被害を繰り返し訴えられていたにもかかわらず、いじめ防止対策推進法が規定する組織的な対応を怠っていた。いじめは不登校になるまで少なくとも約10カ月間続いていた。
学芸大付属大泉小、保護者面談でもいじめ伝えず「問題悪化の要因」 男児は都内の区立小に転校後、数日登校したが、ほとんどの時間をトイレにこもるなど精神的に不安定で、その後は1カ月以上、不登校の状態が続いている。 東京学芸大は「転校に至るほどの精神的苦痛を受けた」と認め、今年5月31日に同法に基づき、いじめの「重大事態」として文部科学省に報告。今後は第三者委員会を設け、事実関係などを調査する。教員養成を目的にした学芸大で教授を務めている杉森伸吉校長は、取材に「いじめ防止法の理解が徹底されず、重大事態になるのを防げなかったことは痛恨の極みだ。法に基づく対応の徹底などの対策を考えたい」と話した。 いじめを巡っては学級担任が1人で問題を抱え込み、対応が後手に回って深刻化するケースが多い。このため、同法は学校がいじめを確認した場合、複数の教職員で被害児童や保護者を継続的に支援し、保護者や学校設置者と情報を共有することを義務づけている。 学校や保護者によると、男児は22年4月、都外の小学校から転入。6月までにいじめが始まり、同級生の1人から「不潔だ」などと言われて机を離されたり、座る際に椅子を引かれたりされる嫌がらせをされて、7月の宿泊学習は欠席した。夏休み明けの9月からは頻繁に暴言なども受けた。 男児は7月時点で、学校が児童を対象に実施した「学校生活アンケート」でいじめを受けていると担任に伝えていた。9~10月と12月の2回の調査でも、加害児童の名前を挙げ、いじめが続いていると記述。12月には「まだ暴言を言われます」「『不えい生』と言われたことがつらかったです」と具体的に訴えていた。 一方、学級担任は22年6月にいじめを現認し、加害児童に謝罪させたことで「解決した」と判断。その後も数回、いじめを目撃したが、「子ども同士のトラブル」と捉えて組織的な対応をせず、12月のアンケートの後、管理職の副校長に初めていじめを報告した。 今年2月のアンケートでも、被害男児は「悪口を言われる」と書いたが、担任が「いじめは、だいぶ良くなっている」と説明したために、副校長もいじめが解消したと判断していた。 しかし、文科省の基本方針は、解消したかの判断について「加害者の謝罪をもって安易に解消とすることはできない」と明記し、いじめが止まった状態が3カ月続いたことなどを確認する必要があるとしている。 また、付属小はいじめを認知した22年6月に、同法に基づき、学校の設置者である学芸大に事実を報告すべきだった。だが、実際は不登校になったことで杉森校長が男児へのいじめを把握した今年4月まで遅れた。 男児の母親は、取材に対し「付属小は被害者が我慢すれば、いじめが表面化しないと思っていたのではないか。なぜ、いじめを見て見ぬふりをして、被害者が学校を去るまで対応できなかったのかを、しっかりと検証してほしい」と訴えている。【深津誠】
男児は都内の区立小に転校後、数日登校したが、ほとんどの時間をトイレにこもるなど精神的に不安定で、その後は1カ月以上、不登校の状態が続いている。
東京学芸大は「転校に至るほどの精神的苦痛を受けた」と認め、今年5月31日に同法に基づき、いじめの「重大事態」として文部科学省に報告。今後は第三者委員会を設け、事実関係などを調査する。教員養成を目的にした学芸大で教授を務めている杉森伸吉校長は、取材に「いじめ防止法の理解が徹底されず、重大事態になるのを防げなかったことは痛恨の極みだ。法に基づく対応の徹底などの対策を考えたい」と話した。
いじめを巡っては学級担任が1人で問題を抱え込み、対応が後手に回って深刻化するケースが多い。このため、同法は学校がいじめを確認した場合、複数の教職員で被害児童や保護者を継続的に支援し、保護者や学校設置者と情報を共有することを義務づけている。
学校や保護者によると、男児は22年4月、都外の小学校から転入。6月までにいじめが始まり、同級生の1人から「不潔だ」などと言われて机を離されたり、座る際に椅子を引かれたりされる嫌がらせをされて、7月の宿泊学習は欠席した。夏休み明けの9月からは頻繁に暴言なども受けた。
男児は7月時点で、学校が児童を対象に実施した「学校生活アンケート」でいじめを受けていると担任に伝えていた。9~10月と12月の2回の調査でも、加害児童の名前を挙げ、いじめが続いていると記述。12月には「まだ暴言を言われます」「『不えい生』と言われたことがつらかったです」と具体的に訴えていた。
一方、学級担任は22年6月にいじめを現認し、加害児童に謝罪させたことで「解決した」と判断。その後も数回、いじめを目撃したが、「子ども同士のトラブル」と捉えて組織的な対応をせず、12月のアンケートの後、管理職の副校長に初めていじめを報告した。
今年2月のアンケートでも、被害男児は「悪口を言われる」と書いたが、担任が「いじめは、だいぶ良くなっている」と説明したために、副校長もいじめが解消したと判断していた。
しかし、文科省の基本方針は、解消したかの判断について「加害者の謝罪をもって安易に解消とすることはできない」と明記し、いじめが止まった状態が3カ月続いたことなどを確認する必要があるとしている。
また、付属小はいじめを認知した22年6月に、同法に基づき、学校の設置者である学芸大に事実を報告すべきだった。だが、実際は不登校になったことで杉森校長が男児へのいじめを把握した今年4月まで遅れた。
男児の母親は、取材に対し「付属小は被害者が我慢すれば、いじめが表面化しないと思っていたのではないか。なぜ、いじめを見て見ぬふりをして、被害者が学校を去るまで対応できなかったのかを、しっかりと検証してほしい」と訴えている。【深津誠】

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