毒親自覚ない人、気づきにくく危険な4つの特徴

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

親自身はたいてい無自覚だ(写真:プラナ/PIXTA)
ニュースでは壮絶な親子関係が頻繁に語られる。子どもの人生をコントロールし、子どもが成人してからも大きな負の影響を与え続ける親のことを「毒親」と表現することも一般的になった。しかし、何も物質的にネグレクトをしたり、暴力を振るったりする人だけが毒親ではない。
子どもの健康を気にかけ、食事も与え、安全にも気を配る。だから、見た目は「幸せそうな普通の家庭」だ。しかし一方で、親が精神的に未熟なために、しかるべき精神的なつながりを築くことができず、子どもの人生を壊してしまうケースが増えている。
臨床心理学者で、アメリカでベストセラーとなった『親といるとなぜか苦しい:「親という呪い」から自由になる方法』著者であるリンジー・C・ギブソン氏は、これまで親との関係に悩む多くの成人の治療を行ってきた。著者によると、こうした親子関係にはいくつかの気になる特徴が見られるという。
精神的に未熟な親にもさまざまなタイプがあるが、子どもに孤独や不安な思いをさせるのはいずれも同じだ。愛情を与える方法は基本的に1つだが、子どもが愛情を求める気持ちを台なしにする方法はたくさんある。精神的に未熟な親は、その未熟さのタイプに応じて4つに分けられる。どのタイプも、子どもの気持ちに鈍感で、不安をもたらす。すべてのタイプの根底には精神的な未熟さがある。いずれも傾向として、自分のことしか考えず、やたらと自己評価が高く、精神的に頼りにできない。また、わがままで無神経、親密になるための能力が乏しいといった特徴がある。どのタイプも、自分が機嫌よくいられるために子どもを利用し、しばしば親子の役割を逆転させ、有無を言わせず子どもを大人の問題に巻きこむ。ここからは私が分類した4つのタイプについて見ていこう。いずれのタイプにも顕著なのが、子どもに不安感をもたらす可能性だ。子どもの精神的な安定がどうむしばまれていくかはそれぞれ異なるが、共感が乏しく、精神的なサポートができず、敏感性が低いのは同じだ。またどのタイプにも、程度の差こそあれ利己主義が存在することも忘れないでほしい。ひどいときには、親が精神的に病んでいたり、心身の虐待をしたりしている場合もある。 感情的な親感情のままに行動し、過干渉かと思えば急に突き放したりする。不安定で、突拍子もないことをしがちだ。不安に圧倒されると、他者を利用して自分を落ち着かせる。ささいなことで大騒ぎし、相手を、自分を助けてくれるか見捨てるかのいずれかとして見る。4つのタイプの中で最も幼稚だ。感情が爆発して収拾がつかなくなると、自殺や他者への暴力につながることさえある。周囲がおびえるのも当然だ。子どもに独りよがりな価値観を押しつけRさんは40代の自立した女性だが、母親はなおも娘を自分の感情でコントロールしようとしていた。Rさんが病気で数日寝こんだときには母親から1日に5回も電話がかかってきたことがあった。「もう治っただろう」と勝手に思われ、家にも押しかけられた。Rさんが「来ないでくれ」と頼んでいたのにだ。そこでついに、ドアに施錠した。後日、母親に言われたそうだ。「あんたに締め出されて頭にきたから、ドアを壊そうかと思ったよ!」実際に母親が気にしていたのは自分の気持ちだけで、Rさんのことなどどうでもよかったのだ。 がむしゃらな親異様に目的指向が強く、やたらと忙しい。他者を含め、あらゆるものを完璧にしようとせずにはいられない。しっかりと時間をとって、子どもの心にきちんと寄り添うことはしないのに、子どもの人生のこととなると、コントロールしたり口出ししたりする。最もふつうに見えがちなタイプ。子どもの人生への投資も並外れて熱心ですらある。猪突猛進で、物事を成し遂げることだけを考える。このタイプは子どもが成功するよう力を尽くしているかに見えるので、自己中心性を見抜きにくく、たいていの場合、周囲に害をおよぼすようには思えない。だが他者を臆測で決めつけ、自分と同じようにしたいはず、同じことに重きを置いているはずと考える。こうした過度な自己中心性が、自分は他者の「ためになっている」という思いこみへとつながる。弁護士のKさんは、横暴な父親から、成功するようにと絶えずプレッシャーをかけられてきた。「父は私を意のままにしていました。自分とちがう考えの人間はだれであれ認めないのです。大学時代も門限は11時で、恥ずかしくてたまらなかったけど、それでも父にさからおうなんて夢にも思わなかったです」父親は娘の思考まで意のままにしようとした。娘の考えが気にくわないと、即座に「バカなことを考えるんじゃない!」と怒鳴った。 受け身の親放任主義で、不安をかき立てられるようなことにはいっさいかかわらない。有害性は低いが、独自の弊害をおよぼす。支配的な相手には一も二もなく従い、虐待やネグレクトも見て見ぬふりをする。問題を避けたり黙認したりすることで切り抜けているのだ。子どもが甘えると、怒鳴りつけることもほかのタイプよりはいささか真っ当にみえるが、それも程度の問題だ。大変なことが続くと子どもを見捨てるうえ、自分がもっと幸せになれそうだと思ったら、家族すら放り出していくかもしれない。Iさんの母親は短気で暴力をふるった。しかし父親は、Iさんがそんな目に遭っているとは考えもしなかった。父親はやさしく、たいてい上機嫌で、家に帰れば、書斎でのんびりすごす。Iさんは父親のそばにいるときだけ安心していられた。父親のやさしさだけが人生を明るく照らしてくれた。愛を感じられた。だから父を尊敬し、父を守らなければと思った。たとえば、カッとなった母親に居間でたたかれていたとき、父親がキッチンで鍋をガチャガチャしている音が聞こえてきた。Iさんはこの音を「パパはここにいるからね」という合図だと解釈し、父親が暴力を止めに来てくれることは期待しなかった……。 拒む親そもそもなぜ家庭を持ったのかと思うような行動をする。精神的な親密さをよしとせず、子どもにわずらわされるのを露骨にいやがる。他者の欲求への耐性はほぼ皆無。彼らにとっての交流とは、命令し、怒鳴りつけ、距離を置くことだ。多少おだやかなタイプであれば、家族ごっこはするかもしれないが、あくまでも表面的だ。もっぱら自分の殻にこもって好きなことをしたがる。4つのタイプの中では最も共感力も低い。このタイプは、自分のまわりに壁をつくっている。Nさんの母親は娘とすごすのがうっとうしくてたまらなかった。Nさんが会いにいっても、抱きしめるのをいやがり、すぐさまNさんの外見に何かしら文句をつけた。Nさんが一緒に過ごそうと言おうものなら、イライラして、「お前は親に頼りすぎだ」と怒った。これら4つのタイプが混ざっている親もいる。通常ほとんどの親がどれか1つのタイプにおさまるが、ある種のストレスにさらされると、違うタイプにみられる行動をする親もいる。親に「共感してもらいたい」とか「心を入れ替えてもらいたい」と思っているなら、そんなことを考えるのは今すぐやめよう。彼らが今すぐ根本的に変わることはない。親の言うことにあわてて反応しない親が精神的に未熟な人の特徴を示していると思ったら、次の方法で、あわてることなく対処してほしい。それは、望む結果に意識を向けること。親との関係において自分が望む具体的な結果を明確にし、それを目標にすること。例を挙げてみよう。「気後れがしても、がんばって母に自分の気持ちをちゃんと伝える」「『クリスマスには帰省しない』と両親に話す」「『子どもたちにやさしく話しかけてほしい』と父に頼む」単に「自分の気持ちを伝える」を目標にしてもいいだろう。大事なのは、「つねに自分が望む結果を意識しながらつき合っていく」ことだ。精神的に未熟な人との付き合いの際、感情のレベルで改善したり変えたりしようとすれば、途端にその人との関係は悪くなる。相手の感情は逆行し、これ以上気持ちを乱されないよう、こちらをコントロールしようとしてくるだろう。だが、具体的な問題や結果に意識を向けていれば、相手も大人の対応をする可能性が高くなる。(リンジー・C・ギブソン : 臨床心理学者)
精神的に未熟な親にもさまざまなタイプがあるが、子どもに孤独や不安な思いをさせるのはいずれも同じだ。愛情を与える方法は基本的に1つだが、子どもが愛情を求める気持ちを台なしにする方法はたくさんある。
精神的に未熟な親は、その未熟さのタイプに応じて4つに分けられる。どのタイプも、子どもの気持ちに鈍感で、不安をもたらす。
すべてのタイプの根底には精神的な未熟さがある。いずれも傾向として、自分のことしか考えず、やたらと自己評価が高く、精神的に頼りにできない。また、わがままで無神経、親密になるための能力が乏しいといった特徴がある。
どのタイプも、自分が機嫌よくいられるために子どもを利用し、しばしば親子の役割を逆転させ、有無を言わせず子どもを大人の問題に巻きこむ。ここからは私が分類した4つのタイプについて見ていこう。
いずれのタイプにも顕著なのが、子どもに不安感をもたらす可能性だ。子どもの精神的な安定がどうむしばまれていくかはそれぞれ異なるが、共感が乏しく、精神的なサポートができず、敏感性が低いのは同じだ。
またどのタイプにも、程度の差こそあれ利己主義が存在することも忘れないでほしい。ひどいときには、親が精神的に病んでいたり、心身の虐待をしたりしている場合もある。
感情的な親
感情のままに行動し、過干渉かと思えば急に突き放したりする。不安定で、突拍子もないことをしがちだ。不安に圧倒されると、他者を利用して自分を落ち着かせる。ささいなことで大騒ぎし、相手を、自分を助けてくれるか見捨てるかのいずれかとして見る。
4つのタイプの中で最も幼稚だ。感情が爆発して収拾がつかなくなると、自殺や他者への暴力につながることさえある。周囲がおびえるのも当然だ。
Rさんは40代の自立した女性だが、母親はなおも娘を自分の感情でコントロールしようとしていた。Rさんが病気で数日寝こんだときには母親から1日に5回も電話がかかってきたことがあった。
「もう治っただろう」と勝手に思われ、家にも押しかけられた。Rさんが「来ないでくれ」と頼んでいたのにだ。そこでついに、ドアに施錠した。後日、母親に言われたそうだ。
「あんたに締め出されて頭にきたから、ドアを壊そうかと思ったよ!」
実際に母親が気にしていたのは自分の気持ちだけで、Rさんのことなどどうでもよかったのだ。
がむしゃらな親
異様に目的指向が強く、やたらと忙しい。他者を含め、あらゆるものを完璧にしようとせずにはいられない。しっかりと時間をとって、子どもの心にきちんと寄り添うことはしないのに、子どもの人生のこととなると、コントロールしたり口出ししたりする。
最もふつうに見えがちなタイプ。子どもの人生への投資も並外れて熱心ですらある。猪突猛進で、物事を成し遂げることだけを考える。
このタイプは子どもが成功するよう力を尽くしているかに見えるので、自己中心性を見抜きにくく、たいていの場合、周囲に害をおよぼすようには思えない。
だが他者を臆測で決めつけ、自分と同じようにしたいはず、同じことに重きを置いているはずと考える。こうした過度な自己中心性が、自分は他者の「ためになっている」という思いこみへとつながる。
弁護士のKさんは、横暴な父親から、成功するようにと絶えずプレッシャーをかけられてきた。
「父は私を意のままにしていました。自分とちがう考えの人間はだれであれ認めないのです。大学時代も門限は11時で、恥ずかしくてたまらなかったけど、それでも父にさからおうなんて夢にも思わなかったです」
父親は娘の思考まで意のままにしようとした。娘の考えが気にくわないと、即座に「バカなことを考えるんじゃない!」と怒鳴った。
受け身の親
放任主義で、不安をかき立てられるようなことにはいっさいかかわらない。有害性は低いが、独自の弊害をおよぼす。支配的な相手には一も二もなく従い、虐待やネグレクトも見て見ぬふりをする。問題を避けたり黙認したりすることで切り抜けているのだ。
ほかのタイプよりはいささか真っ当にみえるが、それも程度の問題だ。大変なことが続くと子どもを見捨てるうえ、自分がもっと幸せになれそうだと思ったら、家族すら放り出していくかもしれない。
Iさんの母親は短気で暴力をふるった。しかし父親は、Iさんがそんな目に遭っているとは考えもしなかった。
父親はやさしく、たいてい上機嫌で、家に帰れば、書斎でのんびりすごす。Iさんは父親のそばにいるときだけ安心していられた。父親のやさしさだけが人生を明るく照らしてくれた。愛を感じられた。だから父を尊敬し、父を守らなければと思った。
たとえば、カッとなった母親に居間でたたかれていたとき、父親がキッチンで鍋をガチャガチャしている音が聞こえてきた。Iさんはこの音を「パパはここにいるからね」という合図だと解釈し、父親が暴力を止めに来てくれることは期待しなかった……。
拒む親
そもそもなぜ家庭を持ったのかと思うような行動をする。精神的な親密さをよしとせず、子どもにわずらわされるのを露骨にいやがる。他者の欲求への耐性はほぼ皆無。彼らにとっての交流とは、命令し、怒鳴りつけ、距離を置くことだ。多少おだやかなタイプであれば、家族ごっこはするかもしれないが、あくまでも表面的だ。もっぱら自分の殻にこもって好きなことをしたがる。
4つのタイプの中では最も共感力も低い。このタイプは、自分のまわりに壁をつくっている。
Nさんの母親は娘とすごすのがうっとうしくてたまらなかった。Nさんが会いにいっても、抱きしめるのをいやがり、すぐさまNさんの外見に何かしら文句をつけた。Nさんが一緒に過ごそうと言おうものなら、イライラして、「お前は親に頼りすぎだ」と怒った。
これら4つのタイプが混ざっている親もいる。通常ほとんどの親がどれか1つのタイプにおさまるが、ある種のストレスにさらされると、違うタイプにみられる行動をする親もいる。
親に「共感してもらいたい」とか「心を入れ替えてもらいたい」と思っているなら、そんなことを考えるのは今すぐやめよう。彼らが今すぐ根本的に変わることはない。
親が精神的に未熟な人の特徴を示していると思ったら、次の方法で、あわてることなく対処してほしい。それは、望む結果に意識を向けること。
親との関係において自分が望む具体的な結果を明確にし、それを目標にすること。例を挙げてみよう。
「気後れがしても、がんばって母に自分の気持ちをちゃんと伝える」
「『クリスマスには帰省しない』と両親に話す」
「『子どもたちにやさしく話しかけてほしい』と父に頼む」
単に「自分の気持ちを伝える」を目標にしてもいいだろう。大事なのは、「つねに自分が望む結果を意識しながらつき合っていく」ことだ。
精神的に未熟な人との付き合いの際、感情のレベルで改善したり変えたりしようとすれば、途端にその人との関係は悪くなる。相手の感情は逆行し、これ以上気持ちを乱されないよう、こちらをコントロールしようとしてくるだろう。
だが、具体的な問題や結果に意識を向けていれば、相手も大人の対応をする可能性が高くなる。
(リンジー・C・ギブソン : 臨床心理学者)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。