「クマに注意」の看板「よく見たら本人の直筆サイン入り」なぜ、爪痕を残した? 登山やハイキングでは気をつけて

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「よく見たら、本人の直筆サイン入りだった」というつぶやきと共に、yoshi(@fieldnote0014)さんがTwitterに投稿した写真に大きな注目が集まりました。
【写真】母グマの後ろについて整列し、歩く子グマたち5万8千以上のいいねがついたその写真に写っていたのは、「クマに注意」と書かれたイラスト入りの警告看板にくっきりと刻まれた、無数の深い「爪痕」。果たして、この「爪痕」の正体とは!? 凄まじい力の持ち主による直筆「爪痕」入り警告看板を撮影した、投稿者のyoshiさんにお話を聞きました。

説得力あり過ぎる「サイン(爪痕)」「サイン(爪痕)」「説得力ある看板」「存在感を爪痕に残したるべあ!」「公式ですね」こんなリプライが殺到した「直筆サイン(爪痕)入り」の看板を撮影したのは、野生動物や自然の姿を写真や映像で記録しているyoshiさん。岩手県に移住したのを機に、「ツキノワグマ」の生態に魅了されたというyoshiさんによると、看板のキズはすべて「ツキノワグマ」の爪痕なのだそうです。「血まみれの『イノシシ注意』って看板の近くに血まみれのご本人がいたことあるんですけど。クマはやべぇっす」というリプライも寄せられた、説得力あり過ぎる警告看板について、yoshiさんに詳しくお話を伺いました。無数のキズ跡の主は「ツキノワグマ」ーー看板はどこに設置されていたものなのですか?「山の入口に設置されていました。岩手県内各地には、この手の看板が数多く設置されています」ーー看板のキズがまさか「ツキノワグマ」の爪痕だとは思いませんでした……。「看板の向かって左側、クマの絵の肩付近に4本ほどの線が並んで入っているのにお気づきでしょうか? これはツキノワグマの爪痕の特徴です。それ以外の無数に付いたキズもクマがこすった際に付いたものです。クマは生息域にある人工物に関心を示し、かじる、引っ掻く、体を擦り付けるなど行動をしますので、その際にキズが付きます」ーーヒグマとツキノワグマでは、爪痕の特徴は違いますか?「ヒグマはツキノワグマより大きな体格で手も大きく、爪痕の線の間隔が広くなります。なお、ヒグマは日本では北海道のみに生息しています。本州、四国にはツキノワグマが生息しています。九州にもツキノワグマが生息していましたが絶滅したと考えられています」「クマ」の危険を避けるには?ーーyoshiさんは野生動物の中でもとくにツキノワグマの写真を数多く撮影されていますが、クマの危険を避けるコツはありますか?「まずは、近距離で出会うような状態を極力避けることが大切です。クマの生息地ではできるだけ見通しの良い場所で行動するようにして、声を出したり手を叩くなど、音を出して人の接近を知らせるとよいでしょう。時々、耳を澄まして周りの気配に気を配る余裕も持ちたいものです。万一のために『ベアスプレー』(※熊撃退成分を配合した熊避けスプレー)を携帯することも有効な手段です」もし「クマ」と遭遇したら?ーーもしもクマと遭遇してしまった時は?「クマを見た時は動きを止め、落ち着いてクマの様子を見てください。驚いてドキドキしているのはクマも同じです。ほとんどの場合、やがてクマの方から離れていきます。近くで急に出会ってしまった場合、こちらが慌てて走り出したり大声で叫んだりすると、クマを興奮させてしまいます。極力落ち着き、ゆっくりとクマから離れるようにしてください。30年余りツキノワグマの生態を見続け、わかってきたことは、クマは臆病で警戒心が強く、人間を恐れているということです。また、クマだけでなく、野生動物は人をよく見ているということにも気付きました。クマは危険で恐ろしい動物というイメージが出来上がっていますが、実際は人を見ただけで襲いかかってくることはほぼありません」yoshiさんが考える「ツキノワグマ」の魅力ーーyoshiさんが考える「ツキノワグマ」の魅力とは?「猟師の武勇伝や事故の報道などから、当初はとても恐ろしい危険な動物だと思い込んでいました。まだわからないことも多いですが、長年に渡り観察を続けてきた中で、本来は臆病で人を避けながらおとなしく生活している動物であり、人間をよく見ていることもわかってきました。特に母グマは子グマをとても大切にしており、食べ物や危険な相手(オスのクマや人間)や危ない場所などを、生まれてから2歳までの間にしっかりと教えています。一般的には子連れのクマは危険だと言われていますが、母グマにこちらを危険ではないと認識してもらい、何日にも渡って近くで観察したことが何度もあります。人間が対応を間違うことさえしなければ、クマはこちらの存在を受け入れてくれます。もちろん、このことに気づくまで長い時間がかかりました。クマの性格や生態を多くの人に正しく理解してもらえるようになれば、人とクマとの関係性も変わってくるのではないかと思います」◇ ◇警告看板という人工物に興味を持ち、深い爪痕を残していたように、クマは我々が思う以上に人間に関心を持ち、観察しているのだそうです。登山やハイキングの機会が増えるこの時期、甚大なトラブルを避けるためにも、クマの性質や生態を理解し、彼らのテリトリーを侵害しないことが大切です。(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)
5万8千以上のいいねがついたその写真に写っていたのは、「クマに注意」と書かれたイラスト入りの警告看板にくっきりと刻まれた、無数の深い「爪痕」。果たして、この「爪痕」の正体とは!? 凄まじい力の持ち主による直筆「爪痕」入り警告看板を撮影した、投稿者のyoshiさんにお話を聞きました。
「サイン(爪痕)」「説得力ある看板」「存在感を爪痕に残したるべあ!」「公式ですね」
こんなリプライが殺到した「直筆サイン(爪痕)入り」の看板を撮影したのは、野生動物や自然の姿を写真や映像で記録しているyoshiさん。岩手県に移住したのを機に、「ツキノワグマ」の生態に魅了されたというyoshiさんによると、看板のキズはすべて「ツキノワグマ」の爪痕なのだそうです。
「血まみれの『イノシシ注意』って看板の近くに血まみれのご本人がいたことあるんですけど。クマはやべぇっす」というリプライも寄せられた、説得力あり過ぎる警告看板について、yoshiさんに詳しくお話を伺いました。
ーー看板はどこに設置されていたものなのですか?
「山の入口に設置されていました。岩手県内各地には、この手の看板が数多く設置されています」
ーー看板のキズがまさか「ツキノワグマ」の爪痕だとは思いませんでした……。
「看板の向かって左側、クマの絵の肩付近に4本ほどの線が並んで入っているのにお気づきでしょうか? これはツキノワグマの爪痕の特徴です。それ以外の無数に付いたキズもクマがこすった際に付いたものです。クマは生息域にある人工物に関心を示し、かじる、引っ掻く、体を擦り付けるなど行動をしますので、その際にキズが付きます」
ーーヒグマとツキノワグマでは、爪痕の特徴は違いますか?
「ヒグマはツキノワグマより大きな体格で手も大きく、爪痕の線の間隔が広くなります。なお、ヒグマは日本では北海道のみに生息しています。本州、四国にはツキノワグマが生息しています。九州にもツキノワグマが生息していましたが絶滅したと考えられています」
ーーyoshiさんは野生動物の中でもとくにツキノワグマの写真を数多く撮影されていますが、クマの危険を避けるコツはありますか?
「まずは、近距離で出会うような状態を極力避けることが大切です。クマの生息地ではできるだけ見通しの良い場所で行動するようにして、声を出したり手を叩くなど、音を出して人の接近を知らせるとよいでしょう。時々、耳を澄まして周りの気配に気を配る余裕も持ちたいものです。万一のために『ベアスプレー』(※熊撃退成分を配合した熊避けスプレー)を携帯することも有効な手段です」
ーーもしもクマと遭遇してしまった時は?
「クマを見た時は動きを止め、落ち着いてクマの様子を見てください。驚いてドキドキしているのはクマも同じです。ほとんどの場合、やがてクマの方から離れていきます。近くで急に出会ってしまった場合、こちらが慌てて走り出したり大声で叫んだりすると、クマを興奮させてしまいます。極力落ち着き、ゆっくりとクマから離れるようにしてください。
30年余りツキノワグマの生態を見続け、わかってきたことは、クマは臆病で警戒心が強く、人間を恐れているということです。また、クマだけでなく、野生動物は人をよく見ているということにも気付きました。クマは危険で恐ろしい動物というイメージが出来上がっていますが、実際は人を見ただけで襲いかかってくることはほぼありません」
ーーyoshiさんが考える「ツキノワグマ」の魅力とは?
「猟師の武勇伝や事故の報道などから、当初はとても恐ろしい危険な動物だと思い込んでいました。まだわからないことも多いですが、長年に渡り観察を続けてきた中で、本来は臆病で人を避けながらおとなしく生活している動物であり、人間をよく見ていることもわかってきました。
特に母グマは子グマをとても大切にしており、食べ物や危険な相手(オスのクマや人間)や危ない場所などを、生まれてから2歳までの間にしっかりと教えています。一般的には子連れのクマは危険だと言われていますが、母グマにこちらを危険ではないと認識してもらい、何日にも渡って近くで観察したことが何度もあります。人間が対応を間違うことさえしなければ、クマはこちらの存在を受け入れてくれます。もちろん、このことに気づくまで長い時間がかかりました。クマの性格や生態を多くの人に正しく理解してもらえるようになれば、人とクマとの関係性も変わってくるのではないかと思います」
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警告看板という人工物に興味を持ち、深い爪痕を残していたように、クマは我々が思う以上に人間に関心を持ち、観察しているのだそうです。
登山やハイキングの機会が増えるこの時期、甚大なトラブルを避けるためにも、クマの性質や生態を理解し、彼らのテリトリーを侵害しないことが大切です。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)

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