【みき いちたろう】発達障害と症状は似てるけど…“ストレス”が原因となる「第四の発達障害」の正体 診断件数急増で生まれる違和感

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近年、急増しているといわれる「発達障害」。しかし、公認心理師で著書『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』があるみきいちたろう氏は、その中には「発達性トラウマ」「第四の発達障害」と呼ばれるものが混じっているのではないかと指摘する。発達障害と間違えられやすい、この新しい疾患。原因は何なのか、どんな症状が表れるのか、プロの立場から解説してもらった。
発達障害は、なんらかの理由によって生じた、社会的な適応に問題を引き起こす脳や神経系の障害です。
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かつては発達障害を専門にする医師もほとんどおらず、「発達障害を扱います」と手を挙げれば、たちまち日本で第一人者になれる、という状況であったといわれます。ここ20年ほどの間に、まさに急速に理解が進んできた症状です。書店にも関連する書籍が並び、テレビの情報番組で取り上げられることも珍しくありません。一般の方でも、専門家ほどではもちろんありませんが、発達障害とは何か? を理解されている方が思いのほか多いと感じます。発達障害についての理解が進んだ要因としては、例えば職場で対応に困る人がいて、もしかしたら発達障害では? と感じて本を手に取ってみたり、家族や知人との関係に悩んで調べてみたり、実際に自分の子どもや家族が診断されて、といったことがあるかもしれません。身近な人に問題があると関心は高まります。そして、さらなる理由として、「もしかしたら、自分も?」というような自分自身の悩みに関連した不安、関心が考えられます。そうしたことも後押ししてか「発達障害」という概念は身近なものとなっています。発達障害の急増に感じる違和感と疑問発達障害という概念が普及し、診察できる医療機関も増えると、発達障害と診断される件数が急増します。例えば、2019年に国公私立の小・中・高等学校において通級による指導を受けている児童生徒数を調べた文部科学省の調査によると、発達障害(ADHD、自閉症スペクトラム障害、学習障害)は、年々増加しており、10年で4.3倍となっています。Photo by iStock こうした増加は、日本も含め先進国では共通した事象のようです。そして、そんな急増について違和感や疑問が生じてきます。なぜなら、先天的なものとされてきた発達障害が、診断が広まったとはいえ、急激な上昇を続けることはさすがにおかしい、と考えられるからです。その中でも特に子どもの虐待などを扱う医師たちは、虐待を受けた子どもと発達障害と診断される子どもとが重複すること、症状が酷似していることを目の当たりにします。「酷似」とは文字通りのことで、専門家の診断や専門のテストを行っても区別できないほどに発達障害と虐待を受けた子どもは同じ症状を示します。社会性の障害、コミュニケーション障害、感覚過敏、注意欠陥、衝動性など、発達障害の特徴とされることがそのまま生じるのです。注目され始めた「第四の発達障害」とは医師の杉山登志郎氏もそんな疑問を感じた一人です。臨床での経験を通じて杉山氏は虐待によって発達障害のような症状となることを「第四の発達障害」として提唱するようになります。Photo by iStock 「第四」とは、第一が精神遅滞、肢体不自由などの古典的な発達障害、第二が自閉症やアスペルガー症候群、第三が学習障害、ADHDなどの軽度発達障害という分類に続いての四番目の症候群という意味です。海外でも杉山氏らの提起の少し前に、アメリカのヴァン・デア・コークが、同様の提起を行っています。それが「発達性トラウマ障害(Developmental Trauma Disorder)」です。虐待や幼少期の不適切な養育などによるトラウマ(発達性トラウマ)よって複雑性PTSDに至る病態について、主として子どもへの適切な診断を目的に包括的な概念を作る必要性を訴えています。実は、発達障害との類似性は愛着障害の臨床、研究においても指摘されています。日本では、医師の岡田尊司氏の著作(『発達障害と呼ばないで』幻冬舎新書など)を通じて知られています。愛着障害と発達性トラウマは、同様の事象をそれぞれに捉えた概念です。「第四の発達障害」という名称で問題提起されていますが、もちろん、発達障害そのものではありません。トラウマに由来して発達障害のような症状を呈するということです。では、どうして本来別のもの同士が酷似するのでしょうか? 偶然にしても奇妙なことです。なんらかの要因を共にしなければ、これほど酷似しないはずです。残念ながら、まだその理由について明確なことはわかっていません。ただ、考えられるのは、“発達”そして“適応”が阻害される点に共通項があるのではないか、ということです。本当の原因はトラウマかもしれない?発達障害の原因は遺伝要因、環境要因の大きく2つに分けられます。従来は遺伝によるものとされていましたが、近年は様々な研究によって環境要因への暴露が主因ではないかと指摘されています。一方、トラウマも環境要因(極度の、あるいは持続的なストレス)にさらされることで症状が生じます。不適切な養育などのストレスを受けると脳や神経系にダメージが生じることがわかっています。発達障害は主として生まれる前、胎内で受けたなんらかの環境因子のストレス、ダメージによって発達が阻害されるのに対して、トラウマや愛着障害は生まれた後に不適切な養育、虐待、その他のストレスを受けて発達が阻害されるものだということです。Photo by iStock トラウマと発達障害が酷似する要因は、どちらもタイミングや内容は違いますが、環境からのストレスによって“発達”が阻害される点を共にしているためだと考えられます。そして、胎内の環境因子による発達障害に対し、生後に生じるトラウマ由来の症状は、発達障害に比べて改善の余地が高いと考えられます。さらにもう一つ、発達障害は「発達障害=発達凸凹+適応障害」と表されるように、環境や社会への適応を妨げられることが発症を促進するとされます。トラウマでも同様に、自己喪失や社会からの離断によって“適応”が阻害されることも、トラウマの生きづらさが発達障害のそれと類似する理由の一つと考えられます。発達障害とトラウマの症状が酷似するということは、これまで発達障害と診断されてきたケースの中に、実はトラウマや愛着障害を原因とするケースが多く含まれている、ということでもあります。発達障害は発達検査などのテストを通じて診断されますが、そうしたテストによっても発達障害とトラウマ、愛着障害とを鑑別することはできません。さらに、当日の調子が悪い場合は、検査結果が信頼に足るものにはなりません。ただ実際は曖昧なまま行われ、診断がくだされているケースも少なくないようです。
かつては発達障害を専門にする医師もほとんどおらず、「発達障害を扱います」と手を挙げれば、たちまち日本で第一人者になれる、という状況であったといわれます。ここ20年ほどの間に、まさに急速に理解が進んできた症状です。
書店にも関連する書籍が並び、テレビの情報番組で取り上げられることも珍しくありません。一般の方でも、専門家ほどではもちろんありませんが、発達障害とは何か? を理解されている方が思いのほか多いと感じます。
発達障害についての理解が進んだ要因としては、例えば職場で対応に困る人がいて、もしかしたら発達障害では? と感じて本を手に取ってみたり、家族や知人との関係に悩んで調べてみたり、実際に自分の子どもや家族が診断されて、といったことがあるかもしれません。
身近な人に問題があると関心は高まります。
そして、さらなる理由として、「もしかしたら、自分も?」というような自分自身の悩みに関連した不安、関心が考えられます。そうしたことも後押ししてか「発達障害」という概念は身近なものとなっています。
発達障害という概念が普及し、診察できる医療機関も増えると、発達障害と診断される件数が急増します。
例えば、2019年に国公私立の小・中・高等学校において通級による指導を受けている児童生徒数を調べた文部科学省の調査によると、発達障害(ADHD、自閉症スペクトラム障害、学習障害)は、年々増加しており、10年で4.3倍となっています。
Photo by iStock
こうした増加は、日本も含め先進国では共通した事象のようです。そして、そんな急増について違和感や疑問が生じてきます。なぜなら、先天的なものとされてきた発達障害が、診断が広まったとはいえ、急激な上昇を続けることはさすがにおかしい、と考えられるからです。その中でも特に子どもの虐待などを扱う医師たちは、虐待を受けた子どもと発達障害と診断される子どもとが重複すること、症状が酷似していることを目の当たりにします。「酷似」とは文字通りのことで、専門家の診断や専門のテストを行っても区別できないほどに発達障害と虐待を受けた子どもは同じ症状を示します。社会性の障害、コミュニケーション障害、感覚過敏、注意欠陥、衝動性など、発達障害の特徴とされることがそのまま生じるのです。注目され始めた「第四の発達障害」とは医師の杉山登志郎氏もそんな疑問を感じた一人です。臨床での経験を通じて杉山氏は虐待によって発達障害のような症状となることを「第四の発達障害」として提唱するようになります。Photo by iStock 「第四」とは、第一が精神遅滞、肢体不自由などの古典的な発達障害、第二が自閉症やアスペルガー症候群、第三が学習障害、ADHDなどの軽度発達障害という分類に続いての四番目の症候群という意味です。海外でも杉山氏らの提起の少し前に、アメリカのヴァン・デア・コークが、同様の提起を行っています。それが「発達性トラウマ障害(Developmental Trauma Disorder)」です。虐待や幼少期の不適切な養育などによるトラウマ(発達性トラウマ)よって複雑性PTSDに至る病態について、主として子どもへの適切な診断を目的に包括的な概念を作る必要性を訴えています。実は、発達障害との類似性は愛着障害の臨床、研究においても指摘されています。日本では、医師の岡田尊司氏の著作(『発達障害と呼ばないで』幻冬舎新書など)を通じて知られています。愛着障害と発達性トラウマは、同様の事象をそれぞれに捉えた概念です。「第四の発達障害」という名称で問題提起されていますが、もちろん、発達障害そのものではありません。トラウマに由来して発達障害のような症状を呈するということです。では、どうして本来別のもの同士が酷似するのでしょうか? 偶然にしても奇妙なことです。なんらかの要因を共にしなければ、これほど酷似しないはずです。残念ながら、まだその理由について明確なことはわかっていません。ただ、考えられるのは、“発達”そして“適応”が阻害される点に共通項があるのではないか、ということです。本当の原因はトラウマかもしれない?発達障害の原因は遺伝要因、環境要因の大きく2つに分けられます。従来は遺伝によるものとされていましたが、近年は様々な研究によって環境要因への暴露が主因ではないかと指摘されています。一方、トラウマも環境要因(極度の、あるいは持続的なストレス)にさらされることで症状が生じます。不適切な養育などのストレスを受けると脳や神経系にダメージが生じることがわかっています。発達障害は主として生まれる前、胎内で受けたなんらかの環境因子のストレス、ダメージによって発達が阻害されるのに対して、トラウマや愛着障害は生まれた後に不適切な養育、虐待、その他のストレスを受けて発達が阻害されるものだということです。Photo by iStock トラウマと発達障害が酷似する要因は、どちらもタイミングや内容は違いますが、環境からのストレスによって“発達”が阻害される点を共にしているためだと考えられます。そして、胎内の環境因子による発達障害に対し、生後に生じるトラウマ由来の症状は、発達障害に比べて改善の余地が高いと考えられます。さらにもう一つ、発達障害は「発達障害=発達凸凹+適応障害」と表されるように、環境や社会への適応を妨げられることが発症を促進するとされます。トラウマでも同様に、自己喪失や社会からの離断によって“適応”が阻害されることも、トラウマの生きづらさが発達障害のそれと類似する理由の一つと考えられます。発達障害とトラウマの症状が酷似するということは、これまで発達障害と診断されてきたケースの中に、実はトラウマや愛着障害を原因とするケースが多く含まれている、ということでもあります。発達障害は発達検査などのテストを通じて診断されますが、そうしたテストによっても発達障害とトラウマ、愛着障害とを鑑別することはできません。さらに、当日の調子が悪い場合は、検査結果が信頼に足るものにはなりません。ただ実際は曖昧なまま行われ、診断がくだされているケースも少なくないようです。
こうした増加は、日本も含め先進国では共通した事象のようです。
そして、そんな急増について違和感や疑問が生じてきます。なぜなら、先天的なものとされてきた発達障害が、診断が広まったとはいえ、急激な上昇を続けることはさすがにおかしい、と考えられるからです。
その中でも特に子どもの虐待などを扱う医師たちは、虐待を受けた子どもと発達障害と診断される子どもとが重複すること、症状が酷似していることを目の当たりにします。
「酷似」とは文字通りのことで、専門家の診断や専門のテストを行っても区別できないほどに発達障害と虐待を受けた子どもは同じ症状を示します。
社会性の障害、コミュニケーション障害、感覚過敏、注意欠陥、衝動性など、発達障害の特徴とされることがそのまま生じるのです。
医師の杉山登志郎氏もそんな疑問を感じた一人です。臨床での経験を通じて杉山氏は虐待によって発達障害のような症状となることを「第四の発達障害」として提唱するようになります。
Photo by iStock
「第四」とは、第一が精神遅滞、肢体不自由などの古典的な発達障害、第二が自閉症やアスペルガー症候群、第三が学習障害、ADHDなどの軽度発達障害という分類に続いての四番目の症候群という意味です。海外でも杉山氏らの提起の少し前に、アメリカのヴァン・デア・コークが、同様の提起を行っています。それが「発達性トラウマ障害(Developmental Trauma Disorder)」です。虐待や幼少期の不適切な養育などによるトラウマ(発達性トラウマ)よって複雑性PTSDに至る病態について、主として子どもへの適切な診断を目的に包括的な概念を作る必要性を訴えています。実は、発達障害との類似性は愛着障害の臨床、研究においても指摘されています。日本では、医師の岡田尊司氏の著作(『発達障害と呼ばないで』幻冬舎新書など)を通じて知られています。愛着障害と発達性トラウマは、同様の事象をそれぞれに捉えた概念です。「第四の発達障害」という名称で問題提起されていますが、もちろん、発達障害そのものではありません。トラウマに由来して発達障害のような症状を呈するということです。では、どうして本来別のもの同士が酷似するのでしょうか? 偶然にしても奇妙なことです。なんらかの要因を共にしなければ、これほど酷似しないはずです。残念ながら、まだその理由について明確なことはわかっていません。ただ、考えられるのは、“発達”そして“適応”が阻害される点に共通項があるのではないか、ということです。本当の原因はトラウマかもしれない?発達障害の原因は遺伝要因、環境要因の大きく2つに分けられます。従来は遺伝によるものとされていましたが、近年は様々な研究によって環境要因への暴露が主因ではないかと指摘されています。一方、トラウマも環境要因(極度の、あるいは持続的なストレス)にさらされることで症状が生じます。不適切な養育などのストレスを受けると脳や神経系にダメージが生じることがわかっています。発達障害は主として生まれる前、胎内で受けたなんらかの環境因子のストレス、ダメージによって発達が阻害されるのに対して、トラウマや愛着障害は生まれた後に不適切な養育、虐待、その他のストレスを受けて発達が阻害されるものだということです。Photo by iStock トラウマと発達障害が酷似する要因は、どちらもタイミングや内容は違いますが、環境からのストレスによって“発達”が阻害される点を共にしているためだと考えられます。そして、胎内の環境因子による発達障害に対し、生後に生じるトラウマ由来の症状は、発達障害に比べて改善の余地が高いと考えられます。さらにもう一つ、発達障害は「発達障害=発達凸凹+適応障害」と表されるように、環境や社会への適応を妨げられることが発症を促進するとされます。トラウマでも同様に、自己喪失や社会からの離断によって“適応”が阻害されることも、トラウマの生きづらさが発達障害のそれと類似する理由の一つと考えられます。発達障害とトラウマの症状が酷似するということは、これまで発達障害と診断されてきたケースの中に、実はトラウマや愛着障害を原因とするケースが多く含まれている、ということでもあります。発達障害は発達検査などのテストを通じて診断されますが、そうしたテストによっても発達障害とトラウマ、愛着障害とを鑑別することはできません。さらに、当日の調子が悪い場合は、検査結果が信頼に足るものにはなりません。ただ実際は曖昧なまま行われ、診断がくだされているケースも少なくないようです。
「第四」とは、第一が精神遅滞、肢体不自由などの古典的な発達障害、第二が自閉症やアスペルガー症候群、第三が学習障害、ADHDなどの軽度発達障害という分類に続いての四番目の症候群という意味です。
海外でも杉山氏らの提起の少し前に、アメリカのヴァン・デア・コークが、同様の提起を行っています。それが「発達性トラウマ障害(Developmental Trauma Disorder)」です。
虐待や幼少期の不適切な養育などによるトラウマ(発達性トラウマ)よって複雑性PTSDに至る病態について、主として子どもへの適切な診断を目的に包括的な概念を作る必要性を訴えています。
実は、発達障害との類似性は愛着障害の臨床、研究においても指摘されています。日本では、医師の岡田尊司氏の著作(『発達障害と呼ばないで』幻冬舎新書など)を通じて知られています。愛着障害と発達性トラウマは、同様の事象をそれぞれに捉えた概念です。
「第四の発達障害」という名称で問題提起されていますが、もちろん、発達障害そのものではありません。トラウマに由来して発達障害のような症状を呈するということです。
では、どうして本来別のもの同士が酷似するのでしょうか? 偶然にしても奇妙なことです。なんらかの要因を共にしなければ、これほど酷似しないはずです。
残念ながら、まだその理由について明確なことはわかっていません。ただ、考えられるのは、“発達”そして“適応”が阻害される点に共通項があるのではないか、ということです。
発達障害の原因は遺伝要因、環境要因の大きく2つに分けられます。従来は遺伝によるものとされていましたが、近年は様々な研究によって環境要因への暴露が主因ではないかと指摘されています。
一方、トラウマも環境要因(極度の、あるいは持続的なストレス)にさらされることで症状が生じます。不適切な養育などのストレスを受けると脳や神経系にダメージが生じることがわかっています。
発達障害は主として生まれる前、胎内で受けたなんらかの環境因子のストレス、ダメージによって発達が阻害されるのに対して、トラウマや愛着障害は生まれた後に不適切な養育、虐待、その他のストレスを受けて発達が阻害されるものだということです。
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トラウマと発達障害が酷似する要因は、どちらもタイミングや内容は違いますが、環境からのストレスによって“発達”が阻害される点を共にしているためだと考えられます。そして、胎内の環境因子による発達障害に対し、生後に生じるトラウマ由来の症状は、発達障害に比べて改善の余地が高いと考えられます。さらにもう一つ、発達障害は「発達障害=発達凸凹+適応障害」と表されるように、環境や社会への適応を妨げられることが発症を促進するとされます。トラウマでも同様に、自己喪失や社会からの離断によって“適応”が阻害されることも、トラウマの生きづらさが発達障害のそれと類似する理由の一つと考えられます。発達障害とトラウマの症状が酷似するということは、これまで発達障害と診断されてきたケースの中に、実はトラウマや愛着障害を原因とするケースが多く含まれている、ということでもあります。発達障害は発達検査などのテストを通じて診断されますが、そうしたテストによっても発達障害とトラウマ、愛着障害とを鑑別することはできません。さらに、当日の調子が悪い場合は、検査結果が信頼に足るものにはなりません。ただ実際は曖昧なまま行われ、診断がくだされているケースも少なくないようです。
トラウマと発達障害が酷似する要因は、どちらもタイミングや内容は違いますが、環境からのストレスによって“発達”が阻害される点を共にしているためだと考えられます。
そして、胎内の環境因子による発達障害に対し、生後に生じるトラウマ由来の症状は、発達障害に比べて改善の余地が高いと考えられます。
さらにもう一つ、発達障害は「発達障害=発達凸凹+適応障害」と表されるように、環境や社会への適応を妨げられることが発症を促進するとされます。トラウマでも同様に、自己喪失や社会からの離断によって“適応”が阻害されることも、トラウマの生きづらさが発達障害のそれと類似する理由の一つと考えられます。
発達障害とトラウマの症状が酷似するということは、これまで発達障害と診断されてきたケースの中に、実はトラウマや愛着障害を原因とするケースが多く含まれている、ということでもあります。
発達障害は発達検査などのテストを通じて診断されますが、そうしたテストによっても発達障害とトラウマ、愛着障害とを鑑別することはできません。さらに、当日の調子が悪い場合は、検査結果が信頼に足るものにはなりません。
ただ実際は曖昧なまま行われ、診断がくだされているケースも少なくないようです。

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