スタートアップ転職の希望者や、副業の希望者は、年々増えています(写真:kouta/PIXTA)
コロナ禍を経て「スタートアップで働きたい」という人が急増している。スタートアップ企業にコアメンバーとして参画するための転職・副業サイト「アマテラス」を2011年から運営している藤岡清高氏は、「スタートアップ転職・副業のプロ」として、これまでに2000人以上からスタートアップ転職や副業の相談を受けてきた。アマテラスを通じて、毎年200人以上がスタートアップ企業のコアメンバーやCxO候補として参画している。
そんな藤岡氏の初の著書『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』は、スタートアップで「働きたい人」「副業してみたい人」「興味がある人」の知りたいことが全部わかる、日本初の入門書だ。「スタートアップ転職・副業のプロ」である藤岡氏が「大企業を辞めて」スタートアップ転職に踏み切る人の「3つの動機」について解説する。
コロナ禍を経て「スタートアップで働きたい」という人が急増している。
スタートアップ企業にコアメンバーとして参画するための転職・副業サイト「アマテラス」を2011年から運営している藤岡清高氏は、「スタートアップ転職・副業のプロ」として、これまでに2000人以上からスタートアップ転職や副業の相談を受けてきた。アマテラスを通じて、毎年200人以上がスタートアップ企業のコアメンバーやCxO候補として参画している。
そんな藤岡氏の初の著書『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』は、スタートアップで「働きたい人」「副業してみたい人」「興味がある人」の知りたいことが全部わかる、日本初の入門書だ。
「スタートアップ転職・副業のプロ」である藤岡氏が「大企業を辞めて」スタートアップ転職に踏み切る人の「3つの動機」について解説する。
スタートアップ転職の希望者や、副業の希望者は、年々増えています。
では、実際にいまスタートアップ転職をしている人たちには、どんなタイプが多いのでしょうか?
ガツガツしていたり、「意識高い系」だったり、最初に新天地へと飛び込む「ファーストペンギン」タイプだったりをイメージされたかもしれませんが、意外にもそうではありません。僕が運営している、スタートアップ転職・副業サイト「アマテラス」の登録者をもとにペルソナ化してお伝えすると、「30歳前後、日系大企業勤務で、真面目に育ってきた秀才タイプ」が多いという傾向があります。新卒時の就職活動ではとりあえず、メーカー・商社・金融・財閥系企業などの伝統的な人気業種や人気企業を受け、新卒では「安定した有名企業」に入ったという人たちが多数派です。「親が反対するような企業」ではなく「親が喜ぶような企業」に入ろうと考えたり、友達や社会の目などを気にしたりして就活をしていたのです。そういった、これまでリスクをとろうとしなかった優秀層が、いまスタートアップ企業へと流れてきているのです。安定した大企業を辞めてスタートアップ転職に踏み切る人たちには、大きく分けて「3つの動機」があると感じています。まずひとつめは、「知り合いが起業や転職をして、関心を持った」パターンで、大多数がこのような人たちです。「大企業のエンジニア」から「スタートアップCEO」へ【動機 枌里蟾腓い起業や転職をして、関心を持った大企業からスタートアップへ転職し、特に活躍している人物のひとりが、Kudan株式会社代表取締役CEOの項大雨(こう・だいう)さんです。中国生まれ日本育ちの項さんは、東京大学で機械工学を学びました。それを活かせる場所としてトヨタに入社し、ガソリンエンジンのエンジニアをしていました。しかし世の中に大きな変化が起きていく中で、「ガソリンエンジンという『枯れつつある技術』のエンジニアでありつづけることが楽しいのだろうか」と迷いが生じます。そんなとき、知人が大手自動車メーカーのエンジン技術者として勤めたあと、戦略コンサルティングファームに転職し、その後、スタートアップ企業の経営幹部になっていたことを知ります。「そういうキャリアパスもいいな」と思ったことがきっかけとなり、項さんも転職を決断。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、アマテラスからの紹介で、AP(人工知覚)というコア技術を有する「Kudan」というスタートアップへCOO(最高執行責任者)として参画しました。そして2020年からは、Kudanの代表取締役CEOを務めています。【動機◆曄崑膣覿箸諒頂百供廚防塰・不安を感じているふたつめの動機は、「大企業の閉塞感に不満・不安を感じている」というケースです。5~7年ほど勤務し、社内でそれなりに評価されているし、同期の中ではトップグループにいる。でも、上司や先輩の姿を見て「自分のなりたい姿ではない」と感じ、将来に面白みを感じられなかったり「このままではいけない」と危機感を覚えたりしている……という人が多いのです。特に「レガシー産業」に勤める20代や30代の若手から、スタートアップ転職の相談を受けることが増えています。「レガシー産業」というのは、「すでに市場が巨大に成長、成熟しており、『今後の伸び』が期待できない業界」「業界全体が衰退傾向にあり、『革新的な変化』を起こしづらい業界」のことで、そうした業界で働く若手は、「新卒入社した『レガシー産業』に10年ほど勤めているが、『人生100年時代』を生き抜いていけるか不安」「自分の市場価値を上げ、将来的に『レガシー産業』から転職し、『先端スタートアップのCxO』として活躍したい」と考えている人が多いのです。いまの会社は、上が詰まっていて…もうひとつ、大企業を辞めてスタートアップへ飛び込む3つめの動機は、「承認欲求を満たしたい」「さらなる自己成長をしたい」というものです。【動機】「承認欲求を満たしたい」「さらなる自己成長をしたい」チャレンジできる環境が欲しいけれど、いまの会社では上が詰まっていて、なかなかリーダーとしての裁量やポジションを与えてもらえない。「会社の歯車」ではなく、自分の仕事で社会を変えるような手ごたえを感じたい。そう考えて、スタートアップ転職を検討するようになるのです。「会社に依存するのではなく、早めにスキルアップして、個人として自立したい」と考える人が増えていますが、スタートアップで働くことは「スキルアップの最短の近道」だと僕は考えています。なぜなら、「下積み」的な仕事をする期間が長い大企業よりも、スタートアップ企業では、入社直後から裁量を持ち、さまざまな経験を積むことができるからです。「道なき道」を登るのがスタートアップただしスタートアップで働くには「ある種の覚悟」も必要です。大企業とスタートアップでは、「仕事の進め方」も大きく違います。登山にたとえて説明すると、大企業の場合は「すでに誰かが登頂したことがあり、誰でも登れるように舗装された山道が準備されている」状態です。一方のスタートアップは「目指す登頂は決まっているものの、誰も登ったことがなく登り方がわからない」状態だと言えます。大企業とスタートアップの仕事の進め方はまったく違う。大企業には「舗装された道」が準備されているが、スタートアップでは誰も登ったことがない「道なき道」を歩まなければならない(図『スタートアップ「転職×副業」術』より)つまり、スタートアップで求められているのは、「登頂にコミットし、登り方を自ら考え、自ら問題解決する人材」なのです。スタートアップの世界では、「既存の常識や組織」にしがみつくのではなく、「新しい常識や組織」を自らが創出して、自分の能力、腕で生きていくことが求められます。こうしたポテンシャルを持っている人は、大企業からスタートアップに飛び込んでも、大いに活躍することができる、とこれまで多くの転職者を見てきた僕は確信しています。(藤岡 清高 : 「スタートアップ転職・副業のプロ」アマテラス代表取締役CEO)
ガツガツしていたり、「意識高い系」だったり、最初に新天地へと飛び込む「ファーストペンギン」タイプだったりをイメージされたかもしれませんが、意外にもそうではありません。
僕が運営している、スタートアップ転職・副業サイト「アマテラス」の登録者をもとにペルソナ化してお伝えすると、「30歳前後、日系大企業勤務で、真面目に育ってきた秀才タイプ」が多いという傾向があります。
新卒時の就職活動ではとりあえず、メーカー・商社・金融・財閥系企業などの伝統的な人気業種や人気企業を受け、新卒では「安定した有名企業」に入ったという人たちが多数派です。
「親が反対するような企業」ではなく「親が喜ぶような企業」に入ろうと考えたり、友達や社会の目などを気にしたりして就活をしていたのです。
そういった、これまでリスクをとろうとしなかった優秀層が、いまスタートアップ企業へと流れてきているのです。
安定した大企業を辞めてスタートアップ転職に踏み切る人たちには、大きく分けて「3つの動機」があると感じています。
まずひとつめは、「知り合いが起業や転職をして、関心を持った」パターンで、大多数がこのような人たちです。
【動機 枌里蟾腓い起業や転職をして、関心を持った
大企業からスタートアップへ転職し、特に活躍している人物のひとりが、Kudan株式会社代表取締役CEOの項大雨(こう・だいう)さんです。
中国生まれ日本育ちの項さんは、東京大学で機械工学を学びました。それを活かせる場所としてトヨタに入社し、ガソリンエンジンのエンジニアをしていました。
しかし世の中に大きな変化が起きていく中で、「ガソリンエンジンという『枯れつつある技術』のエンジニアでありつづけることが楽しいのだろうか」と迷いが生じます。
そんなとき、知人が大手自動車メーカーのエンジン技術者として勤めたあと、戦略コンサルティングファームに転職し、その後、スタートアップ企業の経営幹部になっていたことを知ります。
「そういうキャリアパスもいいな」と思ったことがきっかけとなり、項さんも転職を決断。
マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、アマテラスからの紹介で、AP(人工知覚)というコア技術を有する「Kudan」というスタートアップへCOO(最高執行責任者)として参画しました。そして2020年からは、Kudanの代表取締役CEOを務めています。
【動機◆曄崑膣覿箸諒頂百供廚防塰・不安を感じている
ふたつめの動機は、「大企業の閉塞感に不満・不安を感じている」というケースです。
5~7年ほど勤務し、社内でそれなりに評価されているし、同期の中ではトップグループにいる。でも、上司や先輩の姿を見て「自分のなりたい姿ではない」と感じ、将来に面白みを感じられなかったり「このままではいけない」と危機感を覚えたりしている……という人が多いのです。
特に「レガシー産業」に勤める20代や30代の若手から、スタートアップ転職の相談を受けることが増えています。「レガシー産業」というのは、
「すでに市場が巨大に成長、成熟しており、『今後の伸び』が期待できない業界」「業界全体が衰退傾向にあり、『革新的な変化』を起こしづらい業界」
のことで、そうした業界で働く若手は、
「新卒入社した『レガシー産業』に10年ほど勤めているが、『人生100年時代』を生き抜いていけるか不安」「自分の市場価値を上げ、将来的に『レガシー産業』から転職し、『先端スタートアップのCxO』として活躍したい」
と考えている人が多いのです。
もうひとつ、大企業を辞めてスタートアップへ飛び込む3つめの動機は、「承認欲求を満たしたい」「さらなる自己成長をしたい」というものです。
【動機】「承認欲求を満たしたい」「さらなる自己成長をしたい」
チャレンジできる環境が欲しいけれど、いまの会社では上が詰まっていて、なかなかリーダーとしての裁量やポジションを与えてもらえない。「会社の歯車」ではなく、自分の仕事で社会を変えるような手ごたえを感じたい。そう考えて、スタートアップ転職を検討するようになるのです。
「会社に依存するのではなく、早めにスキルアップして、個人として自立したい」と考える人が増えていますが、スタートアップで働くことは「スキルアップの最短の近道」だと僕は考えています。
なぜなら、「下積み」的な仕事をする期間が長い大企業よりも、スタートアップ企業では、入社直後から裁量を持ち、さまざまな経験を積むことができるからです。
ただしスタートアップで働くには「ある種の覚悟」も必要です。大企業とスタートアップでは、「仕事の進め方」も大きく違います。
登山にたとえて説明すると、大企業の場合は「すでに誰かが登頂したことがあり、誰でも登れるように舗装された山道が準備されている」状態です。
一方のスタートアップは「目指す登頂は決まっているものの、誰も登ったことがなく登り方がわからない」状態だと言えます。
大企業とスタートアップの仕事の進め方はまったく違う。大企業には「舗装された道」が準備されているが、スタートアップでは誰も登ったことがない「道なき道」を歩まなければならない(図『スタートアップ「転職×副業」術』より)
つまり、スタートアップで求められているのは、「登頂にコミットし、登り方を自ら考え、自ら問題解決する人材」なのです。
スタートアップの世界では、「既存の常識や組織」にしがみつくのではなく、「新しい常識や組織」を自らが創出して、自分の能力、腕で生きていくことが求められます。
こうしたポテンシャルを持っている人は、大企業からスタートアップに飛び込んでも、大いに活躍することができる、とこれまで多くの転職者を見てきた僕は確信しています。
(藤岡 清高 : 「スタートアップ転職・副業のプロ」アマテラス代表取締役CEO)