本業黒字の恵泉と神戸海星が新規学生の募集停止…女子大相次ぐ閉校のなぜ(重道武司)

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【経済ニュースの核心】
「出前館」は5期連続赤字…ウーバーイーツ1強で勢いに陰り 企業経営にたとえるならさしずめ「主力事業からの全面撤退」といったところだろう。東京・多摩市に本部を置く恵泉女学園大学と兵庫・神戸市の神戸海星女子学院大学が相次いで2024年度からの新規学生の募集停止を決めた。 両校とも今春の入学生が卒業した後は在学生がゼロとなり、「閉校」となる見通しだ。18歳人口の減少と共学志向の高まりで定員割れが続き、安定的な学生数を確保できないと判断したためで、ともに「苦渋の決断」としている。

4年制私立大学の閉校は2000年以降16校しかなく、首都圏など大都市圏に立地する私大の閉校は極めて異例。両校を傘下とする学校法人では今後、系列の幼稚園や小・中・高校などの運営に特化する方針だ。 大学進学対象年齢となる18歳人口は確かに減っている。最近では年間2万人ペースで縮小しているとされ、足元の出生数を踏まえれば中長期的にも回復は難しい。■「拡大の余地あり」 とはいえ女性の大学進学率はまだ4割を切る水準。女性の学部在籍学生数も2022年5月1日時点で120.1万人。全体に占める構成比は45.6%で過半数に到達しておらず、女性の社会進出加速や男女間格差是正を背景に「まだまだ拡大の余地がある」(事情通)。 両学校法人とも財務が取り立てて傷んでいるわけでもない。22年3月末の自己資本比率は揃って8割を超え、恵泉の純資産額は140億円を上回る。そのうえほぼ無借金だ。21年度の最終損益(当年度収支差額)はともに赤字だが、これは将来の設備投資に備えて必要資金を繰り入れる、学校法人会計特有の仕組みが影響しているため。本業(事業活動収支)の方は双方とも若干ながら黒字を維持している。 にもかかわらず、なぜいま「閉校」といった荒療治に踏み切らざるを得ないのか。大学関係者らが一様に指摘するのは「企業努力の欠如」だ。定員割れの要因が“女子大離れ”にあるとみるのなら「共学化」の道を探るのも選択肢だ。時代のニーズに即した魅力ある学部・学科を新設して学生を呼び込む手もあろう。こうした努力が、これまで不足していたというわけだ。 それにしても女子大はあるのに、なぜ「男子大」はないのか。(重道武司/経済ジャーナリスト)
企業経営にたとえるならさしずめ「主力事業からの全面撤退」といったところだろう。東京・多摩市に本部を置く恵泉女学園大学と兵庫・神戸市の神戸海星女子学院大学が相次いで2024年度からの新規学生の募集停止を決めた。
両校とも今春の入学生が卒業した後は在学生がゼロとなり、「閉校」となる見通しだ。18歳人口の減少と共学志向の高まりで定員割れが続き、安定的な学生数を確保できないと判断したためで、ともに「苦渋の決断」としている。
4年制私立大学の閉校は2000年以降16校しかなく、首都圏など大都市圏に立地する私大の閉校は極めて異例。両校を傘下とする学校法人では今後、系列の幼稚園や小・中・高校などの運営に特化する方針だ。
大学進学対象年齢となる18歳人口は確かに減っている。最近では年間2万人ペースで縮小しているとされ、足元の出生数を踏まえれば中長期的にも回復は難しい。
■「拡大の余地あり」
とはいえ女性の大学進学率はまだ4割を切る水準。女性の学部在籍学生数も2022年5月1日時点で120.1万人。全体に占める構成比は45.6%で過半数に到達しておらず、女性の社会進出加速や男女間格差是正を背景に「まだまだ拡大の余地がある」(事情通)。
両学校法人とも財務が取り立てて傷んでいるわけでもない。22年3月末の自己資本比率は揃って8割を超え、恵泉の純資産額は140億円を上回る。そのうえほぼ無借金だ。21年度の最終損益(当年度収支差額)はともに赤字だが、これは将来の設備投資に備えて必要資金を繰り入れる、学校法人会計特有の仕組みが影響しているため。本業(事業活動収支)の方は双方とも若干ながら黒字を維持している。
にもかかわらず、なぜいま「閉校」といった荒療治に踏み切らざるを得ないのか。大学関係者らが一様に指摘するのは「企業努力の欠如」だ。定員割れの要因が“女子大離れ”にあるとみるのなら「共学化」の道を探るのも選択肢だ。時代のニーズに即した魅力ある学部・学科を新設して学生を呼び込む手もあろう。こうした努力が、これまで不足していたというわけだ。
それにしても女子大はあるのに、なぜ「男子大」はないのか。
(重道武司/経済ジャーナリスト)

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