最愛の妻はなぜ… ワクチン接種後急死 夫は行政に不信感

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愛知県愛西(あいさい)市の医療事故調査委員会が29日に開かれるのを前に、飯岡綾乃さんの夫、英治さん(45)が27日、産経新聞の取材に応じた。
「どうしてこんな結果に」。行政への不信感を募らせる一方、悲劇を繰り返さないためにも「調査委には責任の所在を明らかにしてほしい」と求める。最愛の妻はなぜ死ななければならなかったのか。調査の結果次第で愛西市への提訴も検討している。
英治さんの強い不信感は愛西市の対応に向けられている。飯岡さんの死から2日後、市職員や医師から事情を聴く中で、アドレナリン注射がなかったことが分かった。しかし、その後の市の発表では、飯岡さんに基礎疾患があったことは公表されたが、なぜかアドレナリン注射への言及はなかった。
県医師会は11月17日、アナフィラキシーを強く疑う事案で、「早期にアドレナリンの筋肉注射をすべきだった」とする検証結果を発表。接種会場の体制の不備にも言及したが、英治さんは「遺族の了解も得ずに検証結果が発表された」とプロセスを疑問視する。
飯岡さんの死後、十分な検証もせずワクチンの集団接種を進める愛西市に「恐怖」を覚えるという英治さん。寂しさは今も癒えず、日常的に使っていたベッドルームではなく、飯岡さんをしのぶ祭壇のある和室で眠る毎日が続く。取材に「こんな形で妻を失うなんて」と涙ながらに語った。
市が設置する医療事故調査委員会は、医師や弁護士ら6人で構成される。「第三者視点での調査なので、以前よりはまともな回答が得られると期待している」と英治さん。ただ、責任の所在が判然としない限りは再発防止にならないと指摘。当面は推移を見守るが、結果次第では市に損害賠償を求めて提訴する考えもあるという。(藤木祥平)

アナフィラキシー 短時間のうちに現れる重いアレルギー反応。ワクチンを含む医薬品だけではなく、卵や乳製品などの食品やハチの毒などが原因になることがある。物質が体内に入って短時間で皮膚、呼吸器、循環器などの複数の臓器に症状が出る。血圧が低下したり、意識がなくなったりするような特に重い症状が出た場合、「アナフィラキシーショック」と呼ばれる。治療法としてアドレナリンの注射がある。

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