スーパーのコメが「5キロで5000円」の異常事態に…「新米が出回ればコメ問題は解決」と繰り返してきた「農水省」に批判殺到

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今のところ2月14日に備蓄米放出の概要が分かるという。果たしてコメが消費者の納得する価格に戻るか注目を集めている。江藤拓・農林水産大臣は2月7日、コメ価格の高騰が続いているため政府備蓄米の放出を可能な限り早急に行う考えを示した。実際、コメの価格は昨夏から全く下がらず、むしろ上昇を続けてきた。このため消費者はもちろん、意外なことにコメ農家からも怒りの声が上がっている(全2回の第1回)。
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【画像】コメの“不都合な真実”を明らかにする衝撃データ…コメ消費を減らしているのは「若者」ではなく「60代以上の高齢者」
昨年の夏にコメの流通量が不足し、価格が高騰したことは「令和の米騒動」や「2024年の米騒動」と呼ばれた。しかし年が明けても状況は一向に改善されず、「コメ価格は高止まり」と大手メディアは報じてきた。
しかし、「高止まり」どころか一部の小売店では昨夏よりコメの販売価格は上昇している。事ここに至るまでの農水省の無為無策は徹底していたように見える。
Xで「農林水産省 解体」と検索すると、国民の怒りのコメントが次から次へと表示される。ごく一部をご紹介しよう。
《今日スーパーに行ったら、ほとんど米がなかった。そしてまた値上がり。農水省もいい加減解体したほうがいい》
《国民の食料を管理し円滑に流通させる事すら出来ないなら農水省は解体して民営化すべし
《農水省とJAは解体だな。食料自給率は低いままで、米価格の暴騰で国民を食えなくしている》
コメ価格の高騰は農水省の失政が原因であり、人災と言われても仕方ないだろう。実際、2月3日の衆院予算委員会で立憲民主党の神谷裕氏が「コメ高騰が続いたのは、農水省の対応が遅れたのが原因ではないか」と質問すると、江藤農水相は「多いに反省はある」と認めた。
大手新聞社やテレビ局などは「江藤農水相が反省」と一斉に報じた。だが、農水相が謝罪したところで、コメの価格が安くならなければ意味がない。また、どれほど「反省」しているのか首を傾げたくなるような答弁だったのも事実だ。
江藤農水相は「コメの値上がりは一時的なものだと当時の農水相が判断したことは無理もないこと」と判断ミスを明確に否定した。そもそも、当時の判断が間違っていなければ、反省する必要はないはずなのだが……。
1月24日、江藤農水相は政府備蓄米を条件付きで販売すると発表した。吉村洋文・大阪府知事が政府備蓄米の流通を求めたのは昨年8月26日。それから5カ月近い時間が経過し、コメの価格が消費者の納得できる水準に戻ることは一度もなかった。
備蓄米の放出は遅きに失したとの批判もあり、江藤農水相は答弁で「備蓄米は法律で縛りがかかっており、しっかりとした議論が必要だったことはご理解いただきたい」と弁解した。
備蓄米は法律上、高騰対策に活用できないという説明に嘘はない。正々堂々と法改正を行うのなら時間が必要かもしれない。だが今回は「販売分は後に買い戻す」という条件で弾力的な運用を図った。これなら昨年9月に備蓄米を放出することもできたはずだ。
国民が「令和の米騒動」に悩まされていた昨夏、当時の坂本哲志・農水相は大臣会見で楽観的な見解を繰り返した。8月には「新米が出回れば、品薄は回復する」と説明。備蓄米の放出は「米の需給や価格に影響を与える恐れがある」と明確に否定した。
ところが新米が出回ってもコメの価格は安くならなかった。10月1日、坂本農水相は岸田内閣の総辞職に伴って退任の記者会見を開いた。
記者が「価格が高止まりしている状況をどう考えればいいのか」と質問。坂本農水相は「ある程度は落ち着くと思います」、「米の価格の高止まりが長く続くわけではないと考えています」と楽観的な見通しを改めようとはしなかった。
だが現実は全く違った。11月19日、共同通信は「10月コメ取引、高値圏続く 大凶作の93年平均超え」との記事を配信した。
農水省の発表によると、10月の「相対取引価格」は全銘柄平均で玄米60キロ当たり2万3820円。前年同月に比べて57%の上昇となり、前9月と比較しても1120円の値上がりとなった。
記事で共同通信は《「新米が出回れば価格は下がる」としていた政府の見通しは外れ、高止まりが続く可能性も出てきた》と伝えた。ところが、共同通信の《高止まりが続く》という予測ですら甘かったことが後に分かる。
12月の「相対取引価格」は2万4665円となったのだ。10月と比べると845円の値上がりとなり、比較可能な1990年以降、過去最高を更新した。日本食糧新聞は1月22日の記事(註1)で《米価上昇がヒートアップしている》と報じた。
この間に行われた大臣会見を見てみよう。まず11月22日、記者が「10月の消費者物価指数で米類は58%も上昇した」と質問。これに江藤農水相は「これまでの米価が、果たして生産コストに対して適正なものであったのかと、国民の皆様に考えていただきたい」と回答した。
コメ農家の生活は苦しく「時給100円」という自嘲があったことは事実だ。ネット上でも「コメの高騰で農家の懐が潤うのなら甘受する」という意見は今でも少なくない。江藤農水相の発言も同じ方向性にあるものと考えられる。
ところが、当事者であるコメ農家が江藤農水相の見解に異議を唱えている。米どころ新潟県のコメ農家に詳しい関係者が言う。
「少なくとも私が知る農村地帯で、価格の上昇が収入に反映されたコメ農家は誰もいません。買い取り価格が多少は上がっても、等級の判定で評価が下がり、収入は横ばいなのです。私が『全く儲かっていないんですか!?』と驚くと、『儲かっていたら誰もコメ農家を辞めないよ』と言われました。コメ農家の人たちが集まると、『一体、誰が高騰で儲けているんだ?』の話で持ちきりです。『地元のJAすら儲かっていない』ことは確かで、その先は見当も付きません」
消費者は高いコメを買わされ、生産者は全く儲かっていない──。これではネット上で農水省への不満が爆発するのも無理はない。しかも「消えたコメ問題」まで浮上した。担当記者が言う。
「農水省の調査によると昨年に収穫されたコメは679万トン。前年より18万トン増えたことになっています。ところが12月末の時点で集荷されたコメは215万トンで、昨年と比べて20万トンも少ないのです。コメの収穫量が増え、価格も上がっているのですから、本来なら昨年より集荷量が増えるはずです。ところが実際には減っています。この20万トンが“消えたコメ”と呼ばれるようになりました」
2023年の集荷量は236万トン。24年は215万トンのため前年比の91・1%にとどまっている。8・9%が市場に出回っていないとしたら、コメ価格が高騰するのは当然かもしれない。だが、実情は違うようだ。
「農水省が調査しているのは大手の集荷業者や卸だけです。コメの高騰で中小規模の卸も集荷量を増やしていますし、大手外食産業が卸を通さずに買い付けたり、農家が消費者に直販したりするケースも増えていると考えられます。ところが江藤農水相は1月31日の会見で『どこかにスタックしていると考えざるを得ない』と集荷業者や卸を一方的に批判しました。更にコメの価格を釣り上げようと出し渋っているというわけですが、確たる証拠はありません」
大前提として農水省が備蓄米の放出を躊躇したことが、今の高騰と混乱を生んだ可能性は否定できない。江藤農水相の発言は、農水省のミスを隠蔽するため、流通を悪者に仕立て上げたと批判されても仕方がない。
遅きに失したとはいえ、備蓄米は放出されるらしい。だが、5キロ4500円から5000円台というコメが、果たして2500円台に戻るのだろうか。専門家の間には悲観的な予測も決して少なくないのだ。その理由は──。
第2回【コメ高騰で「台湾米」と「カルフォルニア米」が大人気という皮肉…備蓄米の放出が“効果薄”なら消費者の失望を買う結果に】では、消費者が自衛のためカルフォルニア米や台湾米を購入し、「日本人の日本米離れ」が進行している事実や、備蓄米が放出されてもコメの価格は下がらない可能性があることをお伝えする。
註1:24年産米価格が過去最高 平成のコメ騒動超え(日本食糧新聞:1月22日)
デイリー新潮編集部

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