少数与党での船出、低調な支持率、懸念相次ぐ石破内閣だが2025年はどうなるのか?
【映像】玉木総理誕生を構想した自民党議員はかなりいる?
テレビ朝日政治部官邸担当 澤井尚子記者に聞いた。
━━2025年に注目される政治関連の主な出来事は?
「なんと言っても1月20日のトランプ大統領就任なのだが、就任前に石破総理が会談できるかも焦点だ。当初、石破総理はしっかり準備をした上で就任後の2月に欧米する計画があったが12月に安倍元総理の妻の昭恵さんがフロリダのトランプ邸を訪れたことで雲行きが変わった。このことに対し総理周辺は『正直面白くない』と話しており、焦りの色が見えていた。その後、昭恵さんサイドのアシストもあり『就任1週間前』に会談するというプランに傾いて行ったが、今の時点では実現可能性は低そう。とはいえトランプサイドから会談のオファーがあったのであれば断るのは失礼であるため、準備不足ではあるものの『成立するのであれば応じる』という状況だ」
「ちなみに、夕食会の場でトランプ氏が昭恵さんに『政権が不安定なようだが、石破さんの次の総理は誰だと思う?』などと聞いたという話が永田町では流れており、政局のにおいがする。また、実はこの夕食会の裏には麻生元総理に極めて近い人物がいたという」
━━石破総理とトランプ氏の“相性”はどのように見られているか?
「石破総理は読書好きで割と“我が道を行く”タイプ。総理になってからも昼や夜の会食はほとんどなく、2階建て、3階建てで議員仲間や経済界、会社の社長などとの会食も多かった安倍元総理、菅元総理、岸田元総理とは対照的だ。こうした石破総理の性質もあって日米の外交筋からはトランプ氏との相性はかなり不安視されている。もし就任前の会談となれば、あくまでプライベートなものとなるため、同席者も数人に限られ、石破総理が苦手とされる社交スキルが試されることになる。トランプ氏はくどい話やカンペを見て話す人を嫌う。その点は石破総理もリサーチはしており『トランプ氏は論破されるのが嫌いみたいだから気をつける』などと周りに話していたようだ。ただ、最近では『トランプ氏に対して迎合しないで、自分のスタイルで臨みたい』などと話しているようで“賭け”とも言えるような状況だ」
━━トランプ氏に対してはどのようなアプローチが有効なのか?
「日本政府はトランプ氏のことを『虎』と呼んでおり、すでに虎対策を始めている。トランプ政権は日本に対しても、他の国と同様いきなり10%から20%の関税をかけてくるのでは、防衛費を現状の2%からいきなりNATO基準である3%まで引き上げるよう求めてくるのでは、といった警戒感が高まっている。トランプ氏のような独裁的とも言えるタイプと付き合うには正面から受けるのではなく、安倍元総理が得意だったようにうまくかわしたり、話を逸らしたりするスキルも必要かもしれない」
━━日本国内では1月24日から150日間の通常国会が始まる。少数与党である石破政権はどのように立ち振る舞うべきなのか?
「石破総理は『腰を低く謙虚に丁寧に振る舞う』をとにかく心掛けている。政権発足後最初の関門とも言われた補正予算についても『100点満点の通し方だった』と政府高官が話したほどだ。採決では国民民主だけでなく、日本維新の会なども賛成に回り、予算を審議する委員長は立憲民主党が抑えているが、そこに対しても能登の復興予算の積み増し修正を受け入れることで審議日程もほぼ思い描いた通りに進めることができた」
━━政権発足時は服装のことを揶揄する声もあったが、現状は改善しているのか?
「“だらし内閣”とも言われていたが最近では髪を少し黒く染めてふんわりさせたり、モーニングも仕立て直してサスペンダーをつけたり、身だしなみも意識しているという。さらに、石破総理はこの年末年始で住まいを総理官邸の横にある公邸に移して、地元・鳥取を任せている佳子夫人とも一緒に住む機会が増えるとも言われている。また、1月の外国訪問には初めて同行すると聞いている。その点からも服装などに変化があるかもしれない」
━━野党が固まると過半数を超える状況だが、野党同士の関係性はどうなっているのか?
「国民民主党がキャスティングボードを握っている状態で、世論調査によっては国民民主が政党支持率で野党第一党になっているところもある。それを見て立憲民主党や日本維新の会は焦りを感じている。実は立憲の野田代表と維新の前原共同代表、国民民主の玉木氏は元々民主党政権で一緒にいた仲間だが、当時は私も取材していたがその時からあまり仲は良くはなかった」
━━石破総理と野党の代表の関係性は?
「実は石破総理は野田代表や前原共同代表と“ケミストリーが合う”と言われている。鉄道という共通の趣味があったり、野田総理とはタイプが似ていたりして、相性が良いと言われている。石破総理の周辺は『ある意味持ってるよね、石破総理って』と喜んでいる状況。ただ、玉木氏とはあまり合わないようで別の自民党議員が玉木氏とのパイプ役になっている」
━━維新は教育無償化、国民民主は年収の壁というテーマがあるが、2025年の予算案では両者のバランスを取る綱渡りになるのか?
「“両天秤”と言われている。とはいえ、去年12月の補正予算とは違って本予算は参議院選挙が迫るタイミングであるため賛成してもらうのは甘くないとみている。そして3月上旬までに衆議院通過という最大難関を乗り越えなければ内閣不信任案が出されたり『予算成立と引き換えに退陣』ということになりかねない」
━━予算案を無事通過させたとしても、夏には都議会選挙、さらには参院選が控えている。自民、公明はどのような策を立てているのか?
「地元回りをしている自民党議員から話を聞くと、『やはり空気は厳しいまま』だという。参議院議員は政治とカネのいわゆる“禊ぎ”も済んでおらず、石破総理が総裁選時に宣言していたように厳しく処分しなかったことについても『もっと最初から政治と金に厳しく当たるべきだった』という恨み節も聞かれる。とはいえ、参院選の前に総理の顔を変えようという“石破降ろし”の声はほとんど党内からは聞こえていない。一方の野党も『石破総理のまま、“新しい顔”に変わらないままで、参院選を戦った方が自分たちにとって得なのでは』と見る向きもあり、微妙な安定感が生まれている。とはいえ、7月の参院選でもし大敗してしまえば、今度こそ石破総理が責任を取ることになるだろう」
━━もし石破政権が“短命”で終わった場合、“ポスト石破”にはどのような名前があがっているのか?
「総裁選で僅差で敗れた高市氏は今も有力だが、後ろ盾だった安倍派の議員を中心にほぼ落選してしまった。そのため、参議院や野党ともパイプがあり、安定感がある林官房長官は有力な1人。あるいは、もし参議院選挙よりも前に石破政権が倒れた場合、“参院選の顔”が求められることから若返りを狙って小林鷹之氏や小泉進次郎氏という選択肢もあるが『小泉氏はもう少し準備するでは』という声も多い」
━━自民党のトップ選びにおいては裏でサポートするいわゆる“キングメーカー”の存在を耳にする。安倍元総理が亡くなり、岸田元総理が一線を退いた中、どのような状況なのか?
「自民党の空気・景色は選挙を終えてガラリと変わった。麻生派のベテランの甘利氏や二階氏は引退、そして二階氏の息子、二階派の番頭も落選した。派閥として今残っているのは麻生派だけであり派閥政治はもうほぼ終焉した状況だ。その中で一番まとまっているのは石破総理誕生に導いた岸田前総理大臣の率いる旧宏池会だ。岸田元総理は資産運用立国という議員連盟を立ち上げている。これは金融や経済に疎いとされる石破総理に対する助け船なのか、それとも牽制なのか、今後に注目だ」
━━石破政権が7月の参院選の前に終わった場合、どのようなことが起こるのか?
「その場合、予算案がぐちゃぐちゃになって通っていない状況になっているため、大穴として考えられるのが『玉木総理誕生』だ。実は11月の衆院選で大敗した時点で、『石破総理には辞めてもらって玉木氏を総理に担ぐべき』と話していた自民党議員はかなりいるのだ。1994年に誕生した自社さ政権では社会党を担いだ。それよりは玉木氏の方が担ぎやすいという考えだ」
━━反対に、もし7月の参院選で自公が勝てば選挙がない“黄金の3年間”を迎えるが、その場合、運営方法も変わってくるのか?
「確かに3年間は大きな選挙はないが、衆議院の議席が過半数に12人足りない状況は変わらないため、足りない分を野党から“1本釣り”するのか、もしくは連立を模索することになる。今、国民民主は連立入りを否定しているが官邸関係者は『参院選後には国民民主と連立を組むことになるよ。玉木さんに財務大臣ポストをあげればいいんだ』などと話す人もいるという。ただ、玉木氏は政権入りを否定している」(ABEMA NEWS)