年々その警戒感を高め、集まるバカ者たちと警察の攻防が繰り広げられてきた渋谷のハロウィーン。2024年10月31日の渋谷は、その最終ステージと言っても過言ではないほど騒ぐバカ者たちの減少ぶりを見せた。だが一方で、素知らぬ顔して集っていた訪日観光客や在日外国人の姿がやたらと目立った。
〈画像多数〉ミニスカの天使、胸を強調すぎたデビル、チャイナドレス…休止された“渋ハロ”に訪れる外国人
2024年10月31日、JR渋谷駅ハチ公口広場には「渋谷は、ハロウィーンをお休みします。」という看板が掲げられていた。
ハチ公像周辺は完全封鎖、センター街内も通行規制、さらには渋谷東急百貨店本店跡地では車両規制が行なわれ、センター街方面への通行ができなくなっていた。
バーガーキング渋谷センター街店は昨年に引き続き31日を臨時休業、IKEA渋谷は時短営業とし、西武渋谷店は仮装での入店お断りのアナウンスを流した。
さらに電動キックボード「LUUP」は、渋谷駅近辺の12ポートを一時的に利用停止。街全体が警戒体制に包まれているといえるだろう。
10月31日21時頃、渋谷東急百貨店本店跡地からセンター街に向かう道のりを歩くと、例年に比べて仮装した若者たちの姿がまばらである一方で、外国人たちのコスプレ姿が目立った。
「日本の渋谷ハロウィーンを楽しむためにやってきた!」と口をそろえるのはティッシュブランド“クリネックス”に扮したランさん(28歳)と、オリジナルのコスプレ“バブルマン”に扮したクリスさん(31歳)。ともにフィリピン人だ。
ランさんは言う。
「世界最大のハロウィーンパーティーといえばNYのビレッジ・ハロウィーン・パレードですが、日本の渋谷のハロウィーンパーティーはなんと言ってもコスプレ大国なだけあってクリエイティブ。今年こそはとやって来たんだよ」
もしかしてふたりは渋谷がハロウィーン休止宣言を出していることを知らないのか? クリスさんに問うと、こう即答した。
「そんなルールは知らない! 逆に、なぜダメなんだい?」
センター街で一際目立っていたのは在日カナダ人3人組。そのひとり、バナナのコスプレをした横浜在住歴10年のコールトンさんはこう持論を述べた。
「かつて渋谷では商店街主催のハロウィーン仮装コンテストをやってハロウィーン誘致してたでしょ? なのになぜ急に止めると言い出す? 悪いことするヤンキーはごく一部で、全員じゃない。安全に楽しむことはできるはず。祭りを休止するなんてバカげてる」
また、「ジョーカー」の恋人ハーレイ・クインに扮した在日中国人のベティさん(40歳)も「渋ハロ最高~!」と叫ぶ。
ベティさんは普段はごく真面目な会社員として働いているが、ハロウィーンの日は毎年「一年に一番のお祭り騒ぎの日だよ。とびきりオシャレして毎年渋谷に来てる!」と笑顔を見せた。
そんなベティさんに渋谷のハロウィーン休止宣言について聞くも「渋ハロを誰も止めることはできないよ!」と笑いながら去っていった。
また今年は、各国から日本に来た留学生の姿も多かった。宇田川町のど真ん中にある宇田川交番の前で堂々とミニスカポリス姿でたたずんでいたのはスリランカ人のアシさん(20歳)。アシさんは交番の中から外に目を光らす警察官を尻目に、悪びれもせずこう言った。
「渋ハロ参加は今年で3回目ね。今日は朝までクラブで遊ぶよ! べつに路上でお酒を飲んだりタバコは吸ってないんだから、何も悪いことしてないでしょう?」
続いて、ウクライナから両親とともに避難してきたという日本語が堪能な3人組。今年初めて渋谷ハロウィーンを訪れたという、骸骨メイクをするアリさんは言う。
「日本はとても安全で平和な国。今日は仲のいい3人でこうしてコスプレして渋谷で楽しめて幸せだった。電車の時間があるから、これから急いで駅に向かわないといけない」
どこかのお店で飲んだ後なのか、フラフラしながら大声で笑い合っていたスペイン人のジェニーさん(右、30歳)とジャイサさん(左、23歳)も「渋谷ハロウィーンはこれで2回目だよ。ルールがあるなんて知らないよ。これからこのままの格好で渋谷から新宿へ移動して朝まで飲み明かす」と陽気に笑っていた。
これまで10年以上、渋谷のハロウィーンを取材してきたライターの鈴木ひろあき氏は言う。
「2000年代に認知されるようになった日本のハロウィーン。とくに渋谷の街全体における混乱は2010年以降から年々激化した。2014年には機動隊が出動し、2015年には逮捕者も出た。
そしてコロナ禍を境にハロウィーンに渋谷に来るなという看板を掲げるようになった。年々強まってきた警戒ムードは日本の若者には伝わったと思いますが、外国の方にはまったく届いていない状況です。
今後、渋谷区は、英語は話せないを言い訳にするのではなく、いかにして外国人たちにハロウィーンの日に渋谷に来てほしくない理由を説明するかが大事だと思います」
昨年10月、渋谷区長は東京の日本外国特派員協会(FCCJ)で開かれた記者会見で「今年のハロウィーンを渋谷で祝わないよう警告する英語の動画」を公開した。
だがこれは、一部報道では何を言いたいかわからない動画として不評だったとも言われている。規制動画を発信するだけでなく、もっと直接的に伝える対策が求められているのだろう。
取材・文/河合桃子集英社オンライン編集部ニュース班