歩行中に接触した相手から「スマホが落ちて傷がついた」として、修理費用を支払うようにすごまれた–。
「泣く泣くお金を支払ったが、どう対処すべきだった?」 そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者によると、横断歩道を歩いていた時、通行人と手が触れ、相手が持っていたスマートフォンと財布が道路に落ちました。すると相手は「社長のモノだから修理費を半分もて」「落ちたスマホに傷がついた」などと、修理代として半分補償するよう要求してきたそうです。
相談者は「これ以上もめるのは得策ではない」と10万円を支払ってしまいました。
相談者はぶつかってきた通行人を“当たり屋”だったと考えており「正直、お金が戻ってくることは期待していません」と話します。今回は支払ってしまいましたが、そもそも相手の行動にはどのような問題があるのでしょうか。坂野真一弁護士に聞きました。
–相談者は「手が触れただけだった」として、相手は「当たり屋」だと考えています。もし相談者の方の認識が正しかった場合、相手の「当たり屋」行為にはどのような法的問題があるのでしょうか
まず、わざとぶつかった行為について、形式的には身体に対する不法な有形力の行使であり、暴行罪(208条)に該当する余地があります。
次に、ぶつかって落ちた拍子にスマホが壊れたと虚偽の事実を伝えて修理代金等を請求する行為は、刑法246条1項の詐欺罪に該当すると考えられます。
お金を騙し取る目的で偽りの事実を述べて(すでに壊れていたスマホについて、ぶつかった際に落ちて壊れたと主張)、相手を錯誤に陥らせて(もともと壊れていたり傷ついていたりしたスマホであるのに、衝突時の落下によってスマホが壊れた・傷ついたと誤信させて)、財物を交付(金銭を交付)させているからです。
仮に金銭の支払いがなかったとしても、相手方からお金を騙し取るつもりで、欺罔行為(ぎもうこうい=あざむくこと)を行った場合は、詐欺未遂罪(250条246条1項)として処罰の対象にもなりえます。
その場で要求に応じて支払うことは、当たり屋の思うつぼであって避けるべきです。相手が『警察を呼ぶぞ!』『出るとこへ出るぞ!』などと言ってきても、早くお金を取りたいための方便であることが多く、本当に警察が来たり、裁判になるとむしろ請求者側が困る場合が多いとも考えられるため、臆することはありません。
警察などに間に入ってもらう対応方法も考えられます。
【取材協力弁護士】坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」(いずれも中央経済社)、「増補改訂版 先生大変です!!:お医者さんの法律問題処方箋」(耕文社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。事務所名:ウィン綜合法律事務所事務所URL:https://www.win-law.jp/