人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?についての明らかにした書だ。
※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。また、本書は2019年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
2045年になると、鳥取県の人口が44万8529人となるなど60万人に満たない県が5県に上ることはすでに述べたが、県全体の人口がこれだけ激減するのでは、こうした県の県庁所在地もまた急速に縮小する。
全国の県庁所在地の中で最も人口が少なくなるのが甲府市で、14万6591人だ。次いで鳥取市15万7404人、松江市17万5485人の順である。
減少率で見ても、県庁所在地や主要都市の状況はかなり深刻だ。青森市が2015年と比べて36.2%減となるのを皮切りに、下関市は32.3%減、秋田市は28.5%となるなど大きく減らす。姫路市は2030年、宇都宮市は2035年をもって50万人を割り込んでいく。
2015年比で下落率が最大となるのは奈良県川上村の79.4%減だ。現在暮らしている人々の8割もいなくなってしまう計算である。77.3%減の北海道歌志内市、77.0%減の群馬県南牧村がこれに続く。
これら以外にも下落率が7割以上という自治体は少なくない。川上村の場合、2015年の1313人から30年後の2045年には270人になるのだという。かつて炭鉱で栄えた歌志内市は全国で最も人口が少ない市だが、2045年には813人しか残らない。14歳以下の人口はわずか21人になると予想されており、こちらも存亡のときを迎える。
2045年頃になると、人口が激減していく自治体では、65歳以上人口も大きく減り始める。しかも、北海道や東北、中国、四国、九州の道県庁所在地では、2015年に比べて高齢者の集中度合いが大きく伸びる。人口規模の小さな自治体は高齢者の下落率がさらに高まることとなる。
具体的に見ると、2015年に比べて65歳以上人口が最も減るのは、北海道夕張市の68.9%減だ。北海道三笠市62.4%減、北海道松前町61.5%減、高知県仁淀川(に よど がわ)町60.0%減などだ。対象を80歳以上にしぼっても、奈良県野迫川村が73.1%減、山梨県早川町は70.1%減となる。若い世代に加えて高齢者も減るのだから、全体の人口も激減するということである。
中心市街地への回帰といえば、老後の趣味のために文化的な暮らしを求めて移り住む人をイメージしがちだが、決してそうではない。多くの人は老後の行動範囲が狭まったときに備えて、生活の維持のためのサービス提供や便利さを重視しているのだ。
国交省の「国土のグランドデザイン2050」によれば、人口が15万人程度になると、百貨店や救命救急センター施設、先進医療を実施する病院が維持しづらくなる。映画館や大学、公認会計士事務所が撤退を始める。都市としての風格や機能の衰えは地域経済にも波及するので、人口流出をさらに加速させる要因ともなる。
県の人口の極端な減少の影響はこれにとどまらない。マーケットの縮小に伴って県庁所在地以外の小さな市町村では仕事の発注が減る。経営者の高齢化に伴い事業継承が増えることも手伝って働き口が減少に向かう。こうなると、先に高知県の事例を挙げて説明したが、新たな職場を求めて企業が集積する県庁所在地などへと向かう人が増え、同一県内での人口移動によって極端に人口が減る市町村が出てくる。
理髪店や美容院がなくなった地区の住民が、乗り継ぎの悪い路線バスで片道何時間もかけたり、往復数千円のタクシー代を支払ったりして町まで出かけていくといった話はすでに耳にするが、貯蔵や輸送に向かない“買いだめができないサービス”で、しかも生活に欠かせないサービスが成り立たなくなったとき、人口が一挙に動き始めることとなる。
日本で「結婚しない女性」が増えている「当然の理由」