コロナ禍が明け、若者らのにぎわいを取り戻した原宿・竹下通りで、観光などに訪れた中高生らが偽ブランド品を売りつけられる被害が相次いでいる。
警視庁は27日、販売業者の男を摘発。春休み中の生徒が狙われているとみて警戒を強めている。(中薗あずさ)
「Tシャツ、安いよ」。今年1月、北海道帯広市から観光で竹下通りを訪れていた大学2年の女性(21)は突然、大柄な外国人男性に声をかけられた。
一人で歩いていた女性は、男性から強引に肩を組まれると、裏道の衣料品店に連れて行かれた。店内には、若者に人気のブランドロゴが入った洋服がずらりと並んでいたが、値札は付いていなかった。店内にはほかに店員や客の姿はない。「半額」を強調して何度も購入を勧めてくる男性。「断れば、何かされるのではないか……」。恐怖心に駆られた女性は、男性に言われるがまま、Tシャツ1枚を5000円で購入した。
逃げるように店を出た女性が、購入した商品のブランドをインターネットで検索すると、正規品とはロゴの形が違っていた。女性は「楽しい旅行のはずだったのに、あんな思いをするなんて……」と振り返る。
警視庁には昨年以降、竹下通りで同様のトラブルにあったとの相談が21都県の中高生ら約60人から寄せられているという。「学割が使える」などと声をかけて店内に連れ込み、値札のない商品を「正規価格よりも安い」などと強引に売りつける手口が多い。
警視庁と情報共有している渋谷区は、竹下通りに警備員を配置し、「ブランド品を売りつける客引きにはついていかないで」などと呼びかける取り組みをしているが、こうした事情を知らない地方からの観光客や修学旅行中の生徒が標的となるケースが目立つという。
捜査関係者によると、警視庁は27日、偽ブランド品を販売目的で所持したとして、ギニア国籍の50歳代の男を商標法違反容疑で現行犯逮捕した。
男は同日午前、竹下通りに近い衣料品店(渋谷区神宮前)で、米国の人気ブランド「STUSSY(ステューシー)」の偽物のパーカなど数点を販売目的で所持した疑いがある。警視庁は男が店長を務める店舗から、偽ブランドとみられる商品を押収し、仕入れ先などを調べている。
「原宿竹下通り商店会」によると、竹下通りの客足は現在、コロナ前の水準に戻ったという。広報担当の男性(52)は「子どもたちを狙った偽ブランド品の販売が続けば、竹下通りのイメージダウンになる。巡回などを続け、若者が安心して足を運べる環境を整備していきたい」と話した。