小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」成分入りサプリメントを巡る問題で、サプリを摂取後に急性の腎障害を起こして入院した患者2人の治療に当たった医師が、読売新聞の取材に応じた。
いずれも他の薬の服用や持病はなく、「サプリに含まれていた物質が原因の可能性が高い」としている。2人は腎臓の一部の細胞が損傷する「尿細管障害」と診断され、治療の結果、回復に向かっているという。
富士市立中央病院(静岡県)の高橋康人・腎臓内科部長によると、治療したのは40~50歳代の女性2人。うち1人は、小林製薬のサプリ「紅麹コレステヘルプ」を昨年中頃から数か月摂取していたが、「だるい」「気持ち悪い」などと倦怠(けんたい)感や食欲不振を訴え、同病院に入院した。入院中にはサプリを摂取しておらず、点滴で水分と栄養を補給したところ回復に向かい、昨年後半に退院した。
この時点でサプリとの関連はわかっておらず、女性は退院後、サプリの摂取を再開。すると体調が再び悪化し、今年に入って再入院した。詳しく検査したところ、尿細管障害と診断された。
もう1人は、約半年前から同じサプリを使用し、今年、体調不良を訴えて入院した。同様に尿細管障害とわかり、治療した結果、回復して退院したという。
高橋部長は「2人はもともと健康な方で、他の服薬もなかったことから、サプリが原因だったことが疑われる」と指摘。「腎臓は症状が出にくく、血液検査だけではわからないケースもある。サプリを飲んでいて心当たりのある人は早めに医療機関に問い合わせてほしい」と呼びかけている。
■尿細管障害で尿量減少…むくみも
腎臓は体の左右に一つずつあり、血液中の水分や老廃物などを濾過し、尿として排出する働きがある。腎臓内の尿の通り道「尿細管」の機能が落ちる尿細管障害は、尿量の減少、体のむくみなどの症状が出る。進行速度には個人差があり、自覚症状が出るのはかなり進んだ段階だ。
有害物質の摂取や薬剤の副作用で発症する場合があり、公害病のイタイイタイ病の認定条件にもなっている。症状が重い人には人工的に老廃物を排出する透析を行う。
東京慈恵会医科大病院の横尾隆教授(腎臓・高血圧内科)は「尿細管障害は、薬の副作用のほか、感染症、別の病気の二次的な症状などで起きる。今回は、サプリに含まれていた何らかの物質が障害を起こした可能性が高い」と指摘。兵庫医科大の倉賀野隆裕教授(腎・透析内科)も「腎機能が弱まる可能性がある高齢者や糖尿病患者らはより注意が必要だ」と話している。
■製品回収協力、農水省が通知
農林水産省は28日、小売りや食品関連の業界団体に対し、大阪市が食品衛生法に基づき回収命令を出した3製品の回収に協力するよう求める通知を出した。3製品が広く流通していることから、健康被害の拡大を未然に防ぐ必要があるとして、在庫の有無を確認したり、購入者に対して使用中止を周知したりするよう依頼した。