熊本県に工場を開いた台湾の半導体企業「TSMC」に対し、政府は最大1兆2000億円の補助金を投入すると表明しました。国民の負担は単純計算で1人1万円、児童手当の高校までの拡充に必要な予算(約1兆5000億円)に迫る大きな額です。「巨額補助が常態化してしまうことに強い懸念を持っている」と政府内から異論も出ています。
【写真を見る】台湾の半導体大手TSMCに日本政府が“1.2兆円”の巨額補助金「巨額補助の常態化に強い懸念」政府内に異論も【news23】
記者「日経平均株価は26日も値上がりし、史上最高値を更新しています」
26日、日経平均株価は一時3万9300円台をつけ、先週に続き史上最高値を更新しました。半導体銘柄が主力となり、日米欧の株価を押し上げているのです。日本では人口4万3000人の熊本県菊陽町に、台湾の世界的半導体メーカー「TSMC」が進出。
喜入友浩キャスター「一気に通勤客が出てきました」
無人駅にも関わらず、多くの乗客が。TSMCの工場建設で、地方が活況に沸いています。
24日、TSMCの一つ目の工場が完成し、開所式が盛大に行われました。TSMCの創業者は半導体のレジェンドとも呼ばれている張忠謀氏(92)。
TSMC創業者張忠謀氏「日本における半導体製造のルネサンス(再興)の始まりになることを信じている」
岸田総理のビデオメッセージ「TSMC社の世界戦略の中に日本が重要な拠点として、しっかりと位置づけられることを歓迎します。2号棟についても支援を決定しました」政府は巨額の補助金を投入する予定で、その額は、第1工場(4760億円)と建設予定の第2工場(7320億円)を合わせて総額最大1兆2000億円にのぼります。
経産省の責任者がJNNの単独取材に、巨額の補助金の意義を強調しました。
経済産業省商務情報政策局 野原諭局長「コロナの時代に半導体が不足して、自動車の生産も止まった。各国の誘致競争の中で、日本に投資を集めるためには一定額の支援がいるのが現実」1980年代後半、日米貿易摩擦で、アメリカは特に日本のシェアが高かった半導体に輸出や価格を10年にわたって厳しく規制。失われた30年で、日本企業が投資を減らしたことも重なり、シェアを失っていったのです。
斎藤健経済産業大臣「(日本の半導体は)苦闘の歴史を刻むわけですが、これを機にもう1回、日本の半導体産業の復活の端緒としたい」政府はこの他、次世代半導体の国産化を目指すラピダスへの助成を含めて、総額4兆円もの予算を確保しています。
【日本政府の半導体補助金】▼北海道 ラピダス 最大3300億円▼岩手県・三重県 キオクシア 米・ウエスタン・デジタル 最大2429億円▼宮城県 台湾・PSMC 補助金未定▼広島県 米・マイクロン・テクノロジー 最大2385億円▼熊本県 台湾・TSMC 最大1兆2080億円▼宮崎県 東芝 ローム 最大1294億円半導体への巨額投資に踏み切る、日本政府。ただ、政府内から異論も…
政府関係者「半導体産業への巨額補助は本当に異例のこと。これが常態化してしまうことに強い懸念を持っている」投資に見合った効果は得られるのでしょうか?
藤森祥平キャスター:日本の政府が投資する1兆2000億円という巨額な数字ですが、これは半導体が他よりも何よりも“最重要資源”であると位置づけているからです。石油と同じ“戦略物資”と捉え「半導体を制したものが世界を制す」という考え方です。元東芝の東京大学大学院教授の黒田忠広氏は「石油でオイルショックが起きたように、半導体も自国に工場がないと経済が麻痺する」といいます。
今、世界が半導体に力を入れています。アメリカでは5年間で約6.8兆円、中国は10兆円、日本が3年間で約4兆円ということです。
小川彩佳キャスター:各国の力の入れようを感じますよね。
薄井シンシアさん:半導体って、エネルギーと水と同じぐらいの資源として考えるべきなんですね。特にこれからはAIの時代だから、ますます半導体の重要性が出てきますし、今の私達の文明社会は、半導体がないとうまく機能しないんですね。あとは、国の防衛として考えても、国内に工場を置かないとコロナみたいにサプライサイド(供給側)の問題が出てくると、すぐ手に届くものにしてほしいんですね。確かに巨額で少子化対策と同じぐらいの額になりますが、少子化対策と同じぐらい重要な課題なんですね。
藤森キャスター:そうした巨額の支援であるからこそ、アメリカでは補助に関してのルールがあります。
補助を受けた企業が想定していた以上の利益を上げた場合は、一部を政府に返還するということです。
小川キャスター:民間企業に巨額の補助が行われるわけですから、投資効果の検証・説明をしっかりしていただきたいですよね。
TBSスペシャルコメンテーター星浩氏:補助金について2点お話したいんですけど、一つは半導体の巨大な工場ができることによって、利益を受ける人がいっぱいいるんですね。特に、自動車産業は非常に半導体を多く手に入れられますからね。だから、自動車産業の儲けの一部を少し還元してもらって、それを補助金にあてるということが一つ考えられることだと思います。もう一つは、数年前にTSMCを誘致するときに日本政府の高官が言ってたんですけど、当時、日本と韓国の関係があまり良くなかったんですね。本来ならTSMCと韓国のサムスンの両方が出てきて、その2つを競わせて補助金を値切るということもできたんです。しかし、サムスンが出てこず、TSMCだけの1択になってしまったものですから、補助金を高くせざるを得ないということになってしまったんですね。そういう点で、外交と産業政策が、いかに密接にリンクしてるかということの表れだと思います。
NEWS DIGアプリでは『半導体産業への補助金』などについて「みんなの声」を募集しました。Q.半導体産業への補助金についてどう思う?「賛成」…14.9%「どちらかといえば賛成」…39.8%「どちらかといえば反対」…20.7%「反対」…13.7%「その他・わからない」…11.0%
※2月26日午後11時00分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません※動画内で紹介したアンケートは27日午前8時で終了しました。