「闇の人物でナンバー2と呼ばれる人が(自分の応募作品の)落選を仕組んだ」
「作品を落としたりパクったりした京アニに恨みを持っていた」
被告が重度の火傷を負い開始が遅れていた京都アニメーション(以下、京アニ)放火事件の公判が、ようやく9月から始まった。車椅子に座り出廷する青葉真司被告(45=殺人罪などで起訴)は、不可解な供述を繰り返している。
’19年7月18日、京アニ第1スタジオ(京都市伏見区)に押しかけた青葉被告はビル1階部分にガソリン10リットルを撒(ま)いてライターで着火。36人が死亡、32人が重軽傷を負うという日本の歴史上最悪の放火殺人事件となった。
事件から4年――。更地となった事件現場はフェンスで囲われ、ひまわりなどの草花が植えられている。静かな雰囲気の一方で、思わぬ騒動が起きていた。
「事件の起きた年の暮れに、地元町内会が放火現場に不特定多数が訪れる慰霊碑や公園を作らないよう京アニに要望したのです。これは京アニの八田英明社長が事件直後に『できれば公園にして碑を作りたい』と述べたことに、住民が困惑したためでした」(全国紙担当記者)
要望書を出した近隣住民の一人が話す。
「町内会の同意で決まりました。慰霊碑を作りたいと思うご遺族やファンがいることはよくわかります。ただ、事件後、慰霊に訪れた人の中には、騒いだりゴミを散らかすマナーの悪い方も一部にいました。慰霊碑や公園ができると、これからもそうしたことがずっと続くことになります。ここは閑静な住宅地で、我々の生活の場でもあることを考慮してもらえればとの思いでした」
住民の要望を受け京アニは跡地をどう利用するのだろう。対応を任されている、顧問弁護士の桶田大介氏が回答した。
「具体的なことは決まっていませんが、会社の事業用地としての利用が見込まれています。その際(私的な)慰霊碑の設置が想定され、事業用地のため公開することには適さないと考えています。その代わり、事件現場とは別の場所に公開の慰霊碑を作ることを目指しています」
住民の要望を受けた形で、公の慰霊碑は京アニ本社のある宇治市内の公園などに設置。来年7月の除幕式を目指す。
『FRIDAY』2023年10月6日号より
取材・文・撮影:形山昌由ジャーナリスト