ピッキングに比較的強いディンプルシリンダーの鍵だが、鍵番号だけで簡単に作れ、しかもインターネットで入手できる。最近ではストーカーや殺人を目的とした侵入事件が増えており、侵入経路はこういった合鍵を作っての方法も多い。鍵番号はマンション管理者を装い直接入手するだけでなく、鍵を所有している本人自らが漏らしてしまっていることもあるのだ。
前編記事『たった一つのミスで知らない間に「自宅の鍵を複製されている」ヤバすぎる 日本社会の実態』に引き続き、鍵番号が知られてしまう恐ろしい実態とその対策方法を紹介する。
無断で同僚にロッカーを開けられ鍵番号を撮影されるのを防ぐ意味でも、鍵は身体から離さないことが大切である。また鍵を他人に見えるところに放置しない配慮も必要だ。
簡単に鍵番号が見えないよう、カバー付きのケースなどで目隠しするのも有効だろう。
よく飲食店などで鍵をテーブルに放置したままトイレに立つようなケースを見かけるが、言うまでもなく危険な行為だ。
またFacebookやInstagramなどSNSで時折みかけるが、自撮りなどをした際に鍵が写りこんでいるケースを見かける。デジタル画像を拡大して鍵番号を把握される可能性もあるので、迂闊な行為は避けたほうが良い。
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もし合鍵が造られても、居住先が特定できなければ意味がないと考える方も多いがそれは早計である。
こまめに情報発信している方は、たとえば常連である飲食店の写真や背景に映り込む風景、室内のレイアウトなどの様々な情報を垂れ流している。慣れている人間にとっては、これらの情報をかき集め居住地を特定することなど造作もないことだ。
犯罪行為を犯す人間がもっとも糾弾されるべきではあるが、無自覚に情報を垂れ流した責任も小さいとはいえないだろう。
鍵屋としての矜持から、インターネットによる合鍵作成に応じていない店も多い。また作成には応じても、自主的に本人確認を行っている店もある。だが本人確認は義務ではない。不正利用を目論む者においては、他店に依頼すれば良いだけだ。
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筆者は現役の不動産業者であるから、空き家や貸室などの鍵を預かることも多い。そのような場合、万が一の紛失に備え合鍵を作成することも多いが、近隣のホームセンターなどで合鍵の作成を依頼しても、これまで一度として身分証明を求められたことがない。
悪用するつもりは無論ないが、あまりにも簡単に他人様の住宅の合鍵が作成できてしまうことから、ときおり不安になることがある。
合鍵作成を手掛ける方と話をする機会もあるが、現在のインターネットにより簡単に合鍵を作成できる風潮に否定的な意見を持っている方が多い。ただし彼らも商売である。
厳格に身分証明の提示をルールにすれば、顧客は他店へ行ってしまう。法律で義務とされていないことに不安を抱えながらも応じているのが現状のようだ。
賃貸の場合には難しいが、持ち家の場合、市区町村などの助成金を利用して鍵をシリンダーごと交換してしまうのも手である。
助成金の支給内容については市区町村によって異なるので、居住する地域の担当窓口で確認する必要がある。例えば東京都港区では、助成上限を1万円以内(5千円以上かかった場合の1/2まで)として防犯上の鍵交換に対し助成金を支給している。
鍵を交換する際に、より防犯性の高い鍵を採用するのだ。
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例えば、あらかじめ設定した暗証番号を入力しなければ解錠できない暗証番号キー、登録済みの指紋でなければ解錠できない指紋認証キー、スマートフォンを使って施錠・解錠ができるスマートロックなどである。
もっとも暗証番号を失念したり、スマートフォンを外出先で紛失した場合においては通常よりも面倒になる。このように考えれば、防犯性と手間の煩雑さは相関性があるとも言える。
「そこまで大掛かりに対策はどうも……」という方は、最低限、所持している鍵にはすべて製造番号を隠すカバーと取り付けておくことだ。
またカバーをつけているからと安心せず、鍵を不用意に放置しないことも大切である。一戸建ての場合に多いのだが、玄関脇の植木鉢の下などに緊急用と称して鍵を隠しているケースを見かける。
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そのような場所はすぐに見つけられると思ったほうがよい。不用意なことは行わないことが肝要だ。
最近ではホームセキュリティーも一部富裕層のものではなくなっている、比較的安価に利用できるようになっているので、採用を検討するのもよいだろう。
いずれにしても自分や家族の身は自ら守るという意識を持ち、不用意な行動を慎むことが大切なのだ。