乳児がリンゴを喉に詰まらせる痛ましい事故が相次いでいる。
離乳食としてなじみ深いリンゴだが、鹿児島ではすりおろしてあったにもかかわらず、女児が食べた後に意識不明になり亡くなった。気道が小さい乳幼児は大人が思う以上に食べ物が喉に詰まりやすく、専門家は注意を呼びかけている。
鹿児島県姶良市の保育園で4月18日、当時生後6カ月だった女児がすりおろしたリンゴを食べた後、意識不明の重体となった。女児は病院に搬送されたが、5月28日に死亡。保育士が小さなスプーンで食べさせていたが、食後、顔色が悪くなっていることに気付いて背中を叩くと、鼻からリンゴが出てきたという。
愛媛県新居浜市の保育園でも5月16日、生後8カ月の男児が給食のリンゴ2かけらを食べた直後に呼吸困難となり、意識不明に。リンゴは縦7ミリ、横2ミリ、厚さ3ミリの大きさだったという、
リンゴは離乳食として一般的な食材だが、国の事故防止ガイドラインには「食塊の固さ、切り方によっては詰まりやすい食材」として、離乳完了期まではやわらかくなるよう加熱して提供することが推奨されている。
長野県佐久市にあるJA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センターの小児科医長、坂本昌彦さんによると、乳幼児は気道の直径がわずか1センチほどしかなく、のみ込む運動が未熟な上、咳(せき)の反射や力が弱いため、食べ物が喉に詰まりやすいという。
食べ物による窒息を防ぐには、食事を与える大人が量やペースをコントロールすることが重要だとし、「姿勢を整えて座らせた上で、食事をのみ込んだのを確認しながら与えることが大切」だという。
叩くときは手の付け根で
窒息した場合、蘇生(そせい)のチャンスは最大9分といわれ、すぐに処置が必要になる。対処法は1歳未満とそれ以上で異なり、坂本さんも参加するプロジェクト「教えて!ドクター」や、政府インターネットテレビの動画「窒息事故から子どもを守る」などでも紹介されている。
例えば、背中を叩いて食べ物を吐かせる「背部叩打法」では、手のひら全体ではなく、衝撃が伝わるように手の付け根で叩くのが効果的だという。また「事前に心肺蘇生の講習を受けることも自分の子供の命を守るためにも大事なこと」と強調している。
今回、事故が相次いだことを受け、交流サイト(SNS)では「離乳食をあげるのが怖い」「離乳食のスタートを遅らせようか」といった声も相次いでいるが、「乳幼児に適切な離乳食を摂取させるのは、咀嚼(そしゃく)の力や味覚の発達、社会性の発達にもつながる」とし、安全で適切な食事の提供を呼びかけている。(本江希望)
日本小児科学会「食品による窒息 子どもを守るためにできること」