年間学費約500万円の高級インターナショナルスクールが突如閉鎖――。
都内有数の高級住宅街・西麻布(港区)の中心地に位置するインターナショナルスクール「X」の閉鎖に伴い、創業者のリナ・ローズ氏と約100名の生徒の保護者とのトラブルは未だに収束する気配がない。
賃料の未払いによる東京地裁の強制執行によって、スクールは校舎を追い出され、民家の仮校舎での再開を経て閉鎖となった。一部の保護者が前払いした授業料の返還をXに求め、弁護士を通して協議が続いている。
賃料の未払いや、保護者達への返金の対応と、「カネ」がらみのトラブルが取り沙汰されているが、Xは過去にも従業員や保護者、業者との間で複数の金銭トラブルを抱えていたという。Xのスタッフとして働いていたというAさんが証言する。
「私が働いていた約2年間だけでも、制服や弁当の業者さんに複数回の未払いがあり、その度に業者が替わっていった。リナさんに『代金を払わないんですか?』と聞くと、彼女はなぜか笑っていました。従業員の給料の遅配もあり、2~3ヵ月分遅配したこともありました。
そして2019年の9月頃に突然、リナさんから『おカネがないから皆さんの給料は払えません』と告げられました。当時、オフィスで働いていた外国人はみんな辞めてしまい、Xを訴えた職員もいたそうです。
生徒はたくさんいるのになぜおカネがないのか、とリナ氏を問い詰めると私には何も答えず、後日、別のスタッフに『彼(Aさん)が会社のお金を横領して、使いこんだから支払いができない』というメールを送っていた。怒りを通り越して、呆れてしまいました」
Xのスタッフとして保護者達とやり取りもしていたAさんは、保護者とXのトラブルも間近で見てきたという。
「ある有名芸能人夫妻が、学校の対応に不満を持ち一度も通わせることなく退学させて返金を求めたこともありました。スクールは『どんな時も基本的には返金に応じない』というスタンス。私が知る限りでは、働いた2年間の前後で3組の保護者が訴訟を起こしています。そのたびに『口座にはおカネがない』と支払いから逃げていました。2018年に学校の不手際で子供が頭蓋骨骨折の大怪我を負った際も、スクールは返金に応じなかったというのです」
おカネがないから払えないと言いつつ、「リナ氏は浪費家で私生活は派手だった」とAさんは言う。それもリナ氏とスタッフ達との間に溝ができる原因となったようだ。
「彼女はシャネルやディオールといったラグジュアリーブランドが大好きで、靴はルブタンを好んではいていました。スクールにおカネがないと支払い拒否をしておきながら、高級家具をカードで購入したり、iPadを2台衝動買いして『おカネは後で工面するから大丈夫』と言ったりしていました。いきなりドーナツを100個ほど宅配で頼み、『全部食べる』と言っていたこともありました。スイスとロサンゼルスにも度々旅行していました。長い時は1ヵ月以上、滞在していたと思います。
リナさんの豪快なおカネの使い方を見ていただけに、スタッフは自分たちの給料が払われなかったり、遅配することに納得できなかった。スタッフをイジメるような陰湿な人ではありませんでしたが、機嫌がよかったり、イライラしていたり、彼女は日によって別人のようになる。変貌ぶり、浮き沈みの激しさが、私たちはただただ恐ろしかった」
閉鎖の直前まで約1年4ヵ月にわたり、Xの生徒向けに給食を作っていた業者の代表Bさんも、「Xは保護者にも私たちにも不誠実な対応が何度もあった」と憤る。
「スクールでは、オーガニック100%の食事をウリにしていたんです。最初のミーティングの際に、1食550円でオーガニック100%の給食を作ってくれ、とオーダーがあった。私は『この額では60%はできても、100%は不可能だ』と伝えました。ところがリナ氏は、金額を上げるどころか約2ヵ月後に『550円から500円に下げろ』と値下げを要求してきた。パスタと野菜のおかず、デザートとゼリーが主なメニューでしたが、私は『真実と異なるオーガニック100%を謳(うた)うのはやめてくれ。不快だ』と何度も抗議しました。それでも、スクールは1年以上、オーガニック100%を謳ってスクールの宣伝に活用していた」
Bさんはスクール側と折衝を続けた。だが、金額も内容も改善されることはなく、そうこうしているうちに給食代金の支払いがストップしたという。Bさんが続ける。
「学校側の姿勢に納得できなかった私が給食の提供をやめる、と伝えるとリナ氏は怒りだし、『子供の命を危険に晒(さら)したあなたをアメリカと日本の両方で訴える』と脅しめいたことを言われました。その後、Xは閉鎖となり、3ヵ月分の給食代金が未払いになったまま。途方に暮れています」
にわかには信じられないが、スクール元従業員や業者の証言は事実なのか。未払いの実態を確認すべく、複数回にわたってリナ氏の携帯に連絡をしたが応答はなかった。Xからは「取材には一切応じない」旨のメールが届いた。
Xに子供を通わせていた保護者によれば、6月中旬に予定されていたオンラインでの保護者説明会も中止になったという。
保護者の1人は、「学校都合の説明会の延期はこれで何度目かわかりません。本当に説明する気があるのか、子供はどうすればいいのか」と深いため息をついた。