近年、遺産相続におけるトラブルは増加傾向にあります。しかし、その原因の多くは「無対策」によるものであり、あらかじめ準備しておけば防げるケースが多いと、永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏はいいます。今回は、相続トラブルとなりやすい「3つのパターン」と、それぞれの対処法についてみていきましょう。
家庭裁判所のデータによると、遺産相続におけるトラブルはこの30年間で2.39倍も増加しているといわれています※。
※ 昭和60(1985)年:5,141件⇒平成25(2013)年:1万2,263件。
ドラマなどの影響から、遺産相続のトラブルというと「高額な相続財産を持っている家庭」というイメージがありますが、審判となる相続紛争の約74%が遺産総額5,000万円以下であるというデータが公表されており、実際には相続財産が少額のほうが揉めやすいといえます。
遺産が多いとあらかじめわかっていれば、早期から専門家に相談してトラブルを避けるための対策を講じることができます。しかし、比較的小規模な遺産(1,000万円以下)の場合は事前の対策をなにも考えておらず、相続が発生してからトラブルになるというケースが少なくありません。
遺産相続でよくあるトラブルには、大きく分けて以下の3つがあります。
まず1つ目は、兄弟間の遺産配分によるトラブルです。「長男だから多めに」「次男だから長男よりは少なめに」などと、続柄によって遺産配分を変える慣習があると、その割合で揉めるというのはよくある事例です。
この場合、トラブルを解消するためには、あらかじめ遺産相続になった際にどのくらいの割合で相続できるのか確認しておくことが大切です。
その割合というのは以下のように民法上で定められていますから、よく確認したうえで、どうやって分けたらいいかわからない場合は専門家にご相談ください。
■相続人が「被相続人の配偶者」と「その子ども」だった場合……配偶者:2分の1、子ども:2分の1■相続人が「被相続人の配偶者」と「その親」だった場合……配偶者:3分の2、親:3分の1■相続人が「被相続人の配偶者」と「その兄弟姉妹」だった場合……配偶者:4分の3、兄弟姉妹:4分の1「不動産」をめぐるトラブルがもっとも多い2.“分けられない遺産”の相続不動産のように“分けられない”資産が遺産として残された場合、これがもっとも遺産相続トラブルの種となります。不動産の分割方法には、以下の4つがありますが、どれもデメリットがあります。仝淑分割分筆などをして、土地をそのまま分けるという方法ですが、あまり現実的ではありません。換価分割不動産を売却し、お金に換金して分割する方法で、もっともポピュラーです。B綵分割家を相続した人が、他の相続人に金銭を支払うという方法です。ただし、この方法をとるには多額の現金をもっている必要があります。代償金を支払えるほどの現金がないとなると、結局家を売って相続人みんなでお金を分ける方法(換価分割)をとることになるわけですが、現実には「住み慣れた家を手放したくない」という方も多いので、これが大きな問題となります。ざν分割相続人全員で不動産を共有する方法です。それぞれが相続登記を行い、法律で定められた取り分(法定相続分)をもちます。ただし、売却時や大規模な改修を行いたい場合は全員の同意が必要になるなど、将来的にトラブルになることが多いです。したがって、現実的には換価分割かB綵分割のどちらかによって分割が行われているというのが実際のところです。解決策としては、遺産をのこす(将来的に被相続人となる)方が遺言書を作成しておくというのが最も有効な手段です。誰に・どのように分配したいかをあらかじめ遺言書に記しておくことで、トラブルが回避できるでしょう。3.相続人の1人による「遺産の独占」「遺産はすべて俺がもらうよ。だって、長男だから」など、続柄や被相続人との関係性を理由に複数人いる相続人のうちの1人が遺産を独占した場合、これは非常にトラブルになりやすいです。昔、「家督相続※」があった時代は長男がすべて承継するケースもありましたが、現在、そのようなことがあった場合は法律上の権利に基づき是正を求めることができます。※ 家督相続……戸主が隠居・死亡した場合、長男がすべての財産と戸主の地位を相続するというもの。明治31年~昭和22年まで施行されていた。対処法としては、「遺留分減殺請求をする」ということに尽きます。請求の対応が難しい場合には、専門家に相談されることをおすすめします。◆まとめ…「事前の確認+遺言書」さえあればトラブルは防げる今回みてきたように、相続で揉める事例というのは本当にパターンが決まっています。また、トラブルの多くが、少額の相続だからとなにも対策していないことによって起こっています。しかし、生前に「誰に・どのくらいの相続分があるのか」という確認と「遺言書」が備わっていれば、多くの場合はトラブルを回避できます。遺産は金額にかかわらず、相続人全員が納得できる形で残してあげるというのが後々のトラブルを生まない一番の対処法です。<<<【司法書士が解説】遺産相続てよくあるトラフルと対処法・前編>>>加陽 麻里布永田町司法書士事務所代表司法書士
■相続人が「被相続人の配偶者」と「その子ども」だった場合……配偶者:2分の1、子ども:2分の1
■相続人が「被相続人の配偶者」と「その親」だった場合……配偶者:3分の2、親:3分の1
■相続人が「被相続人の配偶者」と「その兄弟姉妹」だった場合……配偶者:4分の3、兄弟姉妹:4分の1
「不動産」をめぐるトラブルがもっとも多い2.“分けられない遺産”の相続不動産のように“分けられない”資産が遺産として残された場合、これがもっとも遺産相続トラブルの種となります。不動産の分割方法には、以下の4つがありますが、どれもデメリットがあります。仝淑分割分筆などをして、土地をそのまま分けるという方法ですが、あまり現実的ではありません。換価分割不動産を売却し、お金に換金して分割する方法で、もっともポピュラーです。B綵分割家を相続した人が、他の相続人に金銭を支払うという方法です。ただし、この方法をとるには多額の現金をもっている必要があります。代償金を支払えるほどの現金がないとなると、結局家を売って相続人みんなでお金を分ける方法(換価分割)をとることになるわけですが、現実には「住み慣れた家を手放したくない」という方も多いので、これが大きな問題となります。ざν分割相続人全員で不動産を共有する方法です。それぞれが相続登記を行い、法律で定められた取り分(法定相続分)をもちます。ただし、売却時や大規模な改修を行いたい場合は全員の同意が必要になるなど、将来的にトラブルになることが多いです。したがって、現実的には換価分割かB綵分割のどちらかによって分割が行われているというのが実際のところです。解決策としては、遺産をのこす(将来的に被相続人となる)方が遺言書を作成しておくというのが最も有効な手段です。誰に・どのように分配したいかをあらかじめ遺言書に記しておくことで、トラブルが回避できるでしょう。3.相続人の1人による「遺産の独占」「遺産はすべて俺がもらうよ。だって、長男だから」など、続柄や被相続人との関係性を理由に複数人いる相続人のうちの1人が遺産を独占した場合、これは非常にトラブルになりやすいです。昔、「家督相続※」があった時代は長男がすべて承継するケースもありましたが、現在、そのようなことがあった場合は法律上の権利に基づき是正を求めることができます。※ 家督相続……戸主が隠居・死亡した場合、長男がすべての財産と戸主の地位を相続するというもの。明治31年~昭和22年まで施行されていた。対処法としては、「遺留分減殺請求をする」ということに尽きます。請求の対応が難しい場合には、専門家に相談されることをおすすめします。◆まとめ…「事前の確認+遺言書」さえあればトラブルは防げる今回みてきたように、相続で揉める事例というのは本当にパターンが決まっています。また、トラブルの多くが、少額の相続だからとなにも対策していないことによって起こっています。しかし、生前に「誰に・どのくらいの相続分があるのか」という確認と「遺言書」が備わっていれば、多くの場合はトラブルを回避できます。遺産は金額にかかわらず、相続人全員が納得できる形で残してあげるというのが後々のトラブルを生まない一番の対処法です。<<<【司法書士が解説】遺産相続てよくあるトラフルと対処法・前編>>>加陽 麻里布永田町司法書士事務所代表司法書士
不動産のように“分けられない”資産が遺産として残された場合、これがもっとも遺産相続トラブルの種となります。
不動産の分割方法には、以下の4つがありますが、どれもデメリットがあります。
仝淑分割分筆などをして、土地をそのまま分けるという方法ですが、あまり現実的ではありません。
換価分割不動産を売却し、お金に換金して分割する方法で、もっともポピュラーです。
B綵分割家を相続した人が、他の相続人に金銭を支払うという方法です。ただし、この方法をとるには多額の現金をもっている必要があります。
代償金を支払えるほどの現金がないとなると、結局家を売って相続人みんなでお金を分ける方法(換価分割)をとることになるわけですが、現実には「住み慣れた家を手放したくない」という方も多いので、これが大きな問題となります。
ざν分割相続人全員で不動産を共有する方法です。それぞれが相続登記を行い、法律で定められた取り分(法定相続分)をもちます。ただし、売却時や大規模な改修を行いたい場合は全員の同意が必要になるなど、将来的にトラブルになることが多いです。
したがって、現実的には換価分割かB綵分割のどちらかによって分割が行われているというのが実際のところです。
解決策としては、遺産をのこす(将来的に被相続人となる)方が遺言書を作成しておくというのが最も有効な手段です。誰に・どのように分配したいかをあらかじめ遺言書に記しておくことで、トラブルが回避できるでしょう。
「遺産はすべて俺がもらうよ。だって、長男だから」など、続柄や被相続人との関係性を理由に複数人いる相続人のうちの1人が遺産を独占した場合、これは非常にトラブルになりやすいです。
昔、「家督相続※」があった時代は長男がすべて承継するケースもありましたが、現在、そのようなことがあった場合は法律上の権利に基づき是正を求めることができます。
※ 家督相続……戸主が隠居・死亡した場合、長男がすべての財産と戸主の地位を相続するというもの。明治31年~昭和22年まで施行されていた。
対処法としては、「遺留分減殺請求をする」ということに尽きます。請求の対応が難しい場合には、専門家に相談されることをおすすめします。
今回みてきたように、相続で揉める事例というのは本当にパターンが決まっています。また、トラブルの多くが、少額の相続だからとなにも対策していないことによって起こっています。
しかし、生前に「誰に・どのくらいの相続分があるのか」という確認と「遺言書」が備わっていれば、多くの場合はトラブルを回避できます。
遺産は金額にかかわらず、相続人全員が納得できる形で残してあげるというのが後々のトラブルを生まない一番の対処法です。
<<<【司法書士が解説】遺産相続てよくあるトラフルと対処法・前編>>>
加陽 麻里布永田町司法書士事務所代表司法書士
加陽 麻里布永田町司法書士事務所代表司法書士
加陽 麻里布
永田町司法書士事務所
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