電気代の高騰は、家計に大きな影響を与えています。本記事では、元東京電力福島第一原発のエンジニアであり、現在は電力を自給自足でまかなう「オフグリッド生活」を続けながらエネルギー問題への考察を積み重ねる木村俊雄氏が、著書『みんなの節電生活──省エネのプロが教える』(自由国民社)から、電気代高騰を乗り切るための「節電術」について解説します。
火力発電所や原子力発電所では、燃料を燃やして得た熱エネルギーでボイラーの湯を沸かし、蒸気でタービンを回転させ、その運動エネルギーによって発電、電気エネルギーを得ます。
その過程において廃熱として60%、送電時に5%、合計して65%ものエネルギーロスが発生します。
この膨大なエネルギーロスを犠牲にして生産される「最高級のエネルギー」である電気を、再び熱エネルギーに戻してしまうような使い方は、エネルギー効率が悪過ぎると言わざるを得ません。
たとえば、電気ポットです。発電所で湯を沸かして得た熱エネルギーを、65%も犠牲にしてつくった「最高級のエネルギー」である電気を使って、再び電気ポットで湯を沸かす……いかに電気をムダにしているか、一目瞭然ではないでしょうか。
また、困ったことに電気を熱に変える電化製品は、総じて消費電力が大きいのです。平均的な電気ポットの消費電力は、湯沸かし時は約1,000ワット、保温時は約35ワットです。
電気代高騰に負けない「賢者の節電」を実践するのであれば、まず電気を「熱に戻す」のは、絶対的なタブーであると肝に銘じなければなりません。
[図表1]電気を「熱に戻す」のはエネルギー効率が悪い
電気代高騰に負けない「賢者の節電」の鉄則は、
「電気には、電気にしかできないことをお願いする」
このことに尽きます。では、「電気にしかできないこと」とは何でしょうか?
第一の答えは、電気がその実力を最も発揮する「明かり」です。
イギリスのジョゼフ・スワンが発明し、アメリカのトーマス・エジソンが改良・普及させた白熱電球以前の明かりは、行灯(あんどん)やオイルランプなどの「火」そのものでした。火を使う明かりは、明るさの調整が難しいだけでなく、何より火災の危険が大きいものでした。
電気照明は、火と比べて火災に対する安全性が高く、明るさもコントロールしやすいのが、大きな利点です。さらに、この電気照明の進化によって、テレビやパソコン、スマートフォンなどのディスプレイが生まれたことも大きいでしょう。
また、電気照明は、消費電力も比較的小さいといえます。60ワット相当の明るさでいえば、白熱電球でも54ワット、LEDであれば6.5ワットに過ぎません。
つまり、明かりこそが、電気の使い方の真骨頂であるといえるでしょう。
[図表2]電気にお願いしていいこと・よくないこと
木村 俊雄
元東京電力福島第一原発エンジニア