GWに楽しい予定を立てている方も多いと思いますが、今一度、SNSを通じた個人情報流出のリスクを心にとめておきましょう(写真:y.uemura/PIXTA)
昨今、「SNSでの誹謗中傷はやめましょう」、「第三者の名誉、プライバシー権等の権利を侵害するようなSNS投稿をしないように」といった注意喚起が様々な報道を通じてなされています。
しかし、SNSを通じた自分自身の個人情報流出のリスクについてはどうでしょうか。第三者への権利侵害となるリスクに比べて、それほど危機感を持たれていないように思います。
GWに帰省、旅行、外食等楽しい予定を立てている方も多いと思いますが、今一度、SNSを通じた自分の個人情報流出のリスクを心にとめておきましょう。
2022年10月、11月に、札幌市内で留守宅を狙った窃盗事件が相次ぎましたが、これらの窃盗事件に関与したとする窃盗グループが、被害者のSNSへの投稿をもとに侵入先の狙いをつけていた疑いがあると、NHKで報道されました。
2022年10月、札幌市中央区で20代の女性が住むマンションの部屋に侵入し、現金およそ1300万円を盗んだとして知人ら2人が逮捕されました。被害者の女性は旅行で数日間、留守にすることをインスタグラムに書き込んでいたということで、警察は2人がこの書き込みを読んで盗みに入ったとみて捜査しています。また、11月には、札幌市中央区でマンションに住む会社役員の男性が食事に出かけている間に空き巣被害に遭い、ブランド品の財布やバッグなどおよそ75万円相当を盗まれました。捜査関係者によりますと、この事件で逮捕・起訴された被告らは被害者と面識がなく、SNSに投稿された車などの写真から住んでいるマンションを特定していたということです。そして、事件当日はSNSの書き込みで飲食店にいることを確認したうえで留守宅に侵入していました。(出典:NHK NEWS WEB 「SNSに帰省・旅行情報書き込まないで 札幌で高額窃盗事件相次ぐ」)
2022年10月、札幌市中央区で20代の女性が住むマンションの部屋に侵入し、現金およそ1300万円を盗んだとして知人ら2人が逮捕されました。
被害者の女性は旅行で数日間、留守にすることをインスタグラムに書き込んでいたということで、警察は2人がこの書き込みを読んで盗みに入ったとみて捜査しています。
また、11月には、札幌市中央区でマンションに住む会社役員の男性が食事に出かけている間に空き巣被害に遭い、ブランド品の財布やバッグなどおよそ75万円相当を盗まれました。
捜査関係者によりますと、この事件で逮捕・起訴された被告らは被害者と面識がなく、SNSに投稿された車などの写真から住んでいるマンションを特定していたということです。
そして、事件当日はSNSの書き込みで飲食店にいることを確認したうえで留守宅に侵入していました。
(出典:NHK NEWS WEB 「SNSに帰省・旅行情報書き込まないで 札幌で高額窃盗事件相次ぐ」)
帰省、旅行、外食等で楽しい時間を過ごしている場合、その楽しい雰囲気を伝えたいという気持ちから、それらの最中にSNSで投稿する方は少なくないと思います。また、自分と連絡がつきにくくなる時期を知らせる等の理由から、事前に旅行等の情報をSNSで投稿する方もいるかもしれません。
しかし、その投稿は、自分が自宅にいないという非常に重要な情報を投稿し、設定によっては、誰もが見られる状態で公表していることになります。
窃盗等の目的で留守宅への侵入を考えている者からすれば、その投稿は、犯行可能な時期を投稿者自身が公表してくれているということになります。
帰省、旅行、外食等の情報は、事前又は最中のSNS投稿は避け、事後のSNS投稿にすることを習慣化しましょう。
また、友達や友達家族と一緒に旅行しているときには、別の注意も必要です。
友達や友達家族の了承を得ることなく旅行の事実をSNSで投稿した場合、その友達や友達家族のプライバシー権侵害となりえます。どのような情報を第三者に公表したいかという基準は人により異なり、旅行の事実を第三者に知られたくないという場合や、自分の顔をSNSで公表されたくないという場合がありうるためです。
さらに、同行の友達や友達家族の了承を得ることなく旅行の事実を事前や最中にSNSで投稿した場合、自分自身が窃盗等の被害者となるリスクだけでなく、友達や友達家族が窃盗等の被害者となるリスクをも招くことになってしまいます。
自分や友達に関する楽しい投稿内容であっても、内容によってはそれがプライバシー権侵害や個人情報の流出となり、時には犯罪被害者にもなる危険があります。自分自身や友達等の大事な人を守るためにも、この点を心にとめておきましょう。
「帰省、旅行、外食等の情報だけわかっても、自宅がわからなければ危険はないでしょう」と思う方もいるかもしれません。たしかに、1つの投稿内容それ自体から流出する個人情報はそれほど多くないでしょう。
しかし、愛犬との自宅近所での散歩写真、気に入っていてよく行く自宅近所のカフェや飲食店の写真、愛用車や愛用バイクの写真、駐車場の写真等、それらを細かく確認していった場合、自宅場所の見当をつけることは可能になることがあります。
SNS上の「現金プレゼント」企画を目にした方は多いと思います。著名人が本当に現金をプレゼントするケースもありますが、ほとんどの場合は、応募をしても現金がプレゼントされることはありません。
そして、「現金をプレゼントするのに必要だから」という理由で、現金プレゼント企画者の要求に応じて振込先口座、住所、本名等の個人情報を提供してしまうと、詐欺等の対象リストの中に自分の個人情報が組み込まれるといったリスクがあります。
さらに、振込先口座として伝えた自分の金融機関口座が、別の詐欺等の犯罪の振込先口座として利用される危険もあります。現金プレゼント企画の金額よりも多額が振り込まれた後、「間違えて多い金額を振り込んでしまったので、手数料として●●円を受け取っていいから残りを返金してほしい」と頼まれそれに応じた結果、別の犯罪の収益移動に加担した形となってしまうことがあるのです。
個人情報の重要性・保護の必要性から、個人情報が適正に扱われることを目的に個人情報保護法(略称)が定められており、個人情報を取り扱う事業者の義務内容は法改正により厳格になってきています。
しかし、個人情報保護法は自ら行う個人情報の流出までフォローするものではありません。個人情報を必要以上に自ら流出させないよう、SNS投稿をする前に、改めて内容を確認することが大事です。
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(宮川 舞 : 銀座数寄屋通り法律事務所 弁護士)