2010年、秋葉原にオープンした「なでしこ寿司」が昨年12月に閉店した。2016年頃から海外メディアなどで、伝統的な男性社会が色濃く残る職人の業界で奮闘する、女性だけの寿司屋として話題を集め、国内外のメディアで取り上げられてきた同店。一方で、SNS時代と歩みをともにしてきた「なでしこ寿司」は、ネット上でも多くの“ネタ”を提供し、何かと炎上も目立っていた。同店で店長を務め、板前として腕をふるってきた千津井由貴氏に、これまでの振り返りと今後の展望を聞いた。メディアで注目される一方、“抜かり”も多かった「なでしこ寿司」「売上がピークに達していたコロナ禍の直前でした。その頃は客層の8割がインバウンド客で、その対応を最優先させていたことが結果的には失敗でしたね。ピーク時の1/5ほどに売上が激減し、そこから大きく回復することなく去年12月の閉店に至りました」

2010年のオープンから店長として「なでしこ寿司」を切り盛りしてきた千津井氏。“寿司のグローバル化”や女性の社会進出に伴い、2010年代半ば頃から伝統的に男性だけの世界とされてきた「職人の世界」に挑む女性職人だけの寿司屋として、頻繁にメディアで取り上げられてきた。Photo by Ryo Ito 衛生上問題のない範囲ならメイクOK、女性が華やかな着物姿で盛り付けにもこだわり、本格的な寿司を提供する「なでしこ寿司」のスタイルは、カウンターで提供する高級カテゴリの寿司業界では異端の存在だったようだ。「私は伝統的な寿司屋を否定していたわけではないんです。女性が男性の職人さんに混じって、短髪に刈り上げたりせずに働ける高級カテゴリの寿司屋が、目指す職場の選択肢にあっても良いというのが私の考えでした」旧態依然とした価値観も色濃く残る寿司業界にありながら、自身の考えを発信する場として積極的に活用していたのがTwitterだ。「女は体温が高いし、生理もあるから握るな」「化粧の粉が寿司に落ちる」「板場に立つには10年必要」といった匿名の言説がネット上に氾濫。冷やかしで来店する客や店への誹謗中傷被害も少なくなかったそうで、2018年、千津井氏は3年以上にわたるストーカー被害も告白した。「炎上マーケティングじゃないですけど、スタッフに自信を持って働いてもらうためにも自分の考えとして言うべきことは言っていました。ただ、お客様も盛り上がるプロレス的なエンタメと捉えてSNSが楽しくなっていたところもありました。Twitterを始めて変な武器を覚えたというか。今となってはやり方として間違っていた部分もあったと思っています」Photo by Ryo Ito 掲げる“理念”とは別に、店舗の運営面での問題もあって何かと炎上も目立った。2019年には取材で撮影された映像でお店の制服である着物の袖がまな板についていたこと、指に絆創膏を貼って寿司を握っていたことが衛生的に問題あると指摘され、激しく燃え上がる。加えて、過去に利用していたお店の公式Twitterアカウントで、他社の画像を無断転用していたことが発覚。千津井氏は以前の運営会社の行為でその転用には関与していないと釈明するに至った(『なでしこ寿司』は2015年に運営会社・オーナーが変わっている)。「撮影直前にケガをしてしまい、絆創膏を貼って撮影を優先してしまいましたが、絶対に取材をキャンセルするべきでした。画像転用も私の監督責任であることは確かです。いまもネット上でいろんな私のコラージュ画像が出回っている状況で、そこは今後しっかり対応していくつもりですが、炎上の原因に関しては反省すべき点がたくさんあります」後編【海外からも依頼が絶えない元「なでしこ寿司」店長…「日本の寿司職人」文化に違和感を抱くワケ】に続く。
2010年、秋葉原にオープンした「なでしこ寿司」が昨年12月に閉店した。2016年頃から海外メディアなどで、伝統的な男性社会が色濃く残る職人の業界で奮闘する、女性だけの寿司屋として話題を集め、国内外のメディアで取り上げられてきた同店。
「売上がピークに達していたコロナ禍の直前でした。その頃は客層の8割がインバウンド客で、その対応を最優先させていたことが結果的には失敗でしたね。ピーク時の1/5ほどに売上が激減し、そこから大きく回復することなく去年12月の閉店に至りました」
2010年のオープンから店長として「なでしこ寿司」を切り盛りしてきた千津井氏。“寿司のグローバル化”や女性の社会進出に伴い、2010年代半ば頃から伝統的に男性だけの世界とされてきた「職人の世界」に挑む女性職人だけの寿司屋として、頻繁にメディアで取り上げられてきた。
Photo by Ryo Ito
衛生上問題のない範囲ならメイクOK、女性が華やかな着物姿で盛り付けにもこだわり、本格的な寿司を提供する「なでしこ寿司」のスタイルは、カウンターで提供する高級カテゴリの寿司業界では異端の存在だったようだ。「私は伝統的な寿司屋を否定していたわけではないんです。女性が男性の職人さんに混じって、短髪に刈り上げたりせずに働ける高級カテゴリの寿司屋が、目指す職場の選択肢にあっても良いというのが私の考えでした」旧態依然とした価値観も色濃く残る寿司業界にありながら、自身の考えを発信する場として積極的に活用していたのがTwitterだ。「女は体温が高いし、生理もあるから握るな」「化粧の粉が寿司に落ちる」「板場に立つには10年必要」といった匿名の言説がネット上に氾濫。冷やかしで来店する客や店への誹謗中傷被害も少なくなかったそうで、2018年、千津井氏は3年以上にわたるストーカー被害も告白した。「炎上マーケティングじゃないですけど、スタッフに自信を持って働いてもらうためにも自分の考えとして言うべきことは言っていました。ただ、お客様も盛り上がるプロレス的なエンタメと捉えてSNSが楽しくなっていたところもありました。Twitterを始めて変な武器を覚えたというか。今となってはやり方として間違っていた部分もあったと思っています」Photo by Ryo Ito 掲げる“理念”とは別に、店舗の運営面での問題もあって何かと炎上も目立った。2019年には取材で撮影された映像でお店の制服である着物の袖がまな板についていたこと、指に絆創膏を貼って寿司を握っていたことが衛生的に問題あると指摘され、激しく燃え上がる。加えて、過去に利用していたお店の公式Twitterアカウントで、他社の画像を無断転用していたことが発覚。千津井氏は以前の運営会社の行為でその転用には関与していないと釈明するに至った(『なでしこ寿司』は2015年に運営会社・オーナーが変わっている)。「撮影直前にケガをしてしまい、絆創膏を貼って撮影を優先してしまいましたが、絶対に取材をキャンセルするべきでした。画像転用も私の監督責任であることは確かです。いまもネット上でいろんな私のコラージュ画像が出回っている状況で、そこは今後しっかり対応していくつもりですが、炎上の原因に関しては反省すべき点がたくさんあります」後編【海外からも依頼が絶えない元「なでしこ寿司」店長…「日本の寿司職人」文化に違和感を抱くワケ】に続く。
衛生上問題のない範囲ならメイクOK、女性が華やかな着物姿で盛り付けにもこだわり、本格的な寿司を提供する「なでしこ寿司」のスタイルは、カウンターで提供する高級カテゴリの寿司業界では異端の存在だったようだ。
「私は伝統的な寿司屋を否定していたわけではないんです。女性が男性の職人さんに混じって、短髪に刈り上げたりせずに働ける高級カテゴリの寿司屋が、目指す職場の選択肢にあっても良いというのが私の考えでした」
旧態依然とした価値観も色濃く残る寿司業界にありながら、自身の考えを発信する場として積極的に活用していたのがTwitterだ。
「女は体温が高いし、生理もあるから握るな」「化粧の粉が寿司に落ちる」「板場に立つには10年必要」といった匿名の言説がネット上に氾濫。冷やかしで来店する客や店への誹謗中傷被害も少なくなかったそうで、2018年、千津井氏は3年以上にわたるストーカー被害も告白した。
「炎上マーケティングじゃないですけど、スタッフに自信を持って働いてもらうためにも自分の考えとして言うべきことは言っていました。ただ、お客様も盛り上がるプロレス的なエンタメと捉えてSNSが楽しくなっていたところもありました。Twitterを始めて変な武器を覚えたというか。今となってはやり方として間違っていた部分もあったと思っています」
Photo by Ryo Ito
掲げる“理念”とは別に、店舗の運営面での問題もあって何かと炎上も目立った。2019年には取材で撮影された映像でお店の制服である着物の袖がまな板についていたこと、指に絆創膏を貼って寿司を握っていたことが衛生的に問題あると指摘され、激しく燃え上がる。加えて、過去に利用していたお店の公式Twitterアカウントで、他社の画像を無断転用していたことが発覚。千津井氏は以前の運営会社の行為でその転用には関与していないと釈明するに至った(『なでしこ寿司』は2015年に運営会社・オーナーが変わっている)。「撮影直前にケガをしてしまい、絆創膏を貼って撮影を優先してしまいましたが、絶対に取材をキャンセルするべきでした。画像転用も私の監督責任であることは確かです。いまもネット上でいろんな私のコラージュ画像が出回っている状況で、そこは今後しっかり対応していくつもりですが、炎上の原因に関しては反省すべき点がたくさんあります」後編【海外からも依頼が絶えない元「なでしこ寿司」店長…「日本の寿司職人」文化に違和感を抱くワケ】に続く。
掲げる“理念”とは別に、店舗の運営面での問題もあって何かと炎上も目立った。2019年には取材で撮影された映像でお店の制服である着物の袖がまな板についていたこと、指に絆創膏を貼って寿司を握っていたことが衛生的に問題あると指摘され、激しく燃え上がる。
加えて、過去に利用していたお店の公式Twitterアカウントで、他社の画像を無断転用していたことが発覚。千津井氏は以前の運営会社の行為でその転用には関与していないと釈明するに至った(『なでしこ寿司』は2015年に運営会社・オーナーが変わっている)。
「撮影直前にケガをしてしまい、絆創膏を貼って撮影を優先してしまいましたが、絶対に取材をキャンセルするべきでした。画像転用も私の監督責任であることは確かです。いまもネット上でいろんな私のコラージュ画像が出回っている状況で、そこは今後しっかり対応していくつもりですが、炎上の原因に関しては反省すべき点がたくさんあります」
後編【海外からも依頼が絶えない元「なでしこ寿司」店長…「日本の寿司職人」文化に違和感を抱くワケ】に続く。