“住宅を購入するなら頭金をしっかり貯めて家族構成や居住地が定まってから。”
これは、住宅取得におけるセオリーとも言える考え方ですが、近年この基本を逸した形で住宅を取得し、問題に直面する方が目立っています。前編記事<「世帯年収980万円」の40代夫婦を襲った悲劇…「マイホームの買い替え」で直面したまさかの「大誤算」> に引き続き、詳しく解説していきます。
まず三橋様の場合、大きかったと推察されるのは買替えに見積もる物件価格の増加です。
最近の住宅価格の上昇を受け、自分たちの保有するマンションも高く売れるのではないかとの期待を持って買替えを検討した三橋様ですが、ここに1つ目の誤算がありました。マイホームを売却するということは、住まいを失うということですから、新たにご自身の住まいを用意しなければいけないのです。もちろん住まいは賃貸でも用意できますが、多くの住宅ローンは残っており完済は無理そうです。また三橋様ご夫婦も買替えを希望されていますから、当然のことながら住宅価格が高く上がっているタイミングでご自身も購入しなければいけません。三橋様ご夫婦が居住されているエリアの土地価格は購入後連続上昇し、購入時よりも16%程度上昇していました。
Photo by iStock
加えて三橋様ご夫婦の場合、現状よりも広い間取りの物件を希望されていますから、物件予算は更に上がります。一方、住宅取得にあたっては様々な費用も必要も必要となります。諸費用も考慮しながら、リサーチを行った結果、最終的に物件予算を5,800万円としました。誤算その2:フラット35の金利はこの半年でも0.5%上がった!物件予算を5,800万円に増やした結果、住宅ローンで調達が必要な金額も増えました。もちろん審査はありますが、全額を住宅ローンで用意することは不可能ではないでしょう。しかし、頭金を出さないことにより想定されるリスクや不利益はあります。幸い三橋様ご夫婦にはまとまった蓄えがありましたから、頭金を300万円ずつ出し、2,600万円ずつ借入れると仮定しました。現状のマンションの購入時に利用した住宅ローンの金額は4,000万円でした。ご夫婦合わせて5,200万円の借入であれば、借入金額増加分は多くても1,200万円に抑えることができそうです。ところが、ここで三橋様ご夫婦は2つめの誤算に直面します。それは、フラット35の金利上昇です。フラット35は住宅金融支援機構が提供する住宅ローンで、一定の条件と住宅性能基準を満たした住宅であれば借りる人の職業を問わず利用できることが特長です。その名称のとおり借入期間は最長35年です。その間適用される金利は変わらない、全期間固定金利型の住宅ローンです。三橋様ご夫婦は現在フラット35を利用しており、今後も固定金利での借入を希望されていました。共働きでお忙しいお二人ですから、やはり支払金額が固定され、その他のライフイベントに備える資金計画を立てやすいという点をメリットとお考えのようです。Photo by iStock 実は、三橋様ご夫婦が住宅ローンを契約した2016年は、フラット35の金利は過去最低水準だった時期でした。三橋様ご夫婦も実際、団体信用生命保険分を含めても年1.4%で借入れという好条件で契約されています。ところがフラット35の最頻金利は昨年末あたりから上昇を続け、3月には年1.96%程度にまで上がりました。一度落ち着いた今月、4月の時点でも年1.76%程度の水準となっています。低金利の流れを受け、これまでのフラット35の最頻金利は年1.4%程度で推移していましたから、この半年程度の間で年0.5%程度の金利が上がったことになります。住宅ローンの金利は変化していますから、住宅取得をシミュレーションするにあたっては、時期に合わせた調整が必要となります。三橋様ご夫婦が買替えを想定されているのは2024年です。そこで、今後の金利上昇の可能性も考慮し、年2%の金利を想定しました。その結果、想定される利息負担額は2,000万円程度となることが判明しました。現在の利息負担額と比較すると、差額はおよそ1,300万円です。(いずれも35年返済、元利均等返済)借入金額を1,200万円増やしたことも大きく影響していることでしょう。もちろん2%まで上昇するかどうかはわかりません。しかし、このように大きな差となる以上、今買い換えを検討するなら、金利上昇の大きな影響は見逃せません。買替え時にはこれまでの住宅ローン契約と同じ返済期間とすれば、完済年齢もさらに伸びます。返済期間を短縮したいところですが、これまでと同じ完済年齢に揃えた場合、利息負担額は500万円減るものの毎月の返済額はおよそ6.5万円増えます。現状の家計の水準を維持するとした場合、当面は問題なさそうですが、万が一の備えは手薄で、退職後の家計はかなり厳しい見通しになることが推測されました。誤算その3:物件価格アップで諸費用負担はさらにかさむ不動産を買替える、ということは不動産の売却契約、不動産の購入契約2つの契約を同時期に結ぶということとなります。不確定要素もありますがするべきことは多くあり、それに伴い発生する費用もあります。例えばマイホームを売却する際、住宅ローンがなく、ご自身で売却先を見つけ、様々な契約手続きをとることができれば費用もかからないのですが、通常は不動産会社に売却の仲介を依頼します。その場合、仲介手数料が必要となります。仲介手数料は不動産会社が独自に決めていますが、法律によって上限が設けられています。仲介手数料の上限は以下の算式で求めることができます。仲介手数料の上限=1+2+31 物件価格のうち200万円以下の金額×5.5%2 物件価格のうち200万円を超え400万円以下の金額×4.4%3 物件価格のうち400万円を超える金額×3.3%※消費税率10%の場合Photo by iStock この計算式にあてはめて計算してみると、仮に物件価格が3,300万円なら、115万5,000円となります。4,000万円であれば138万6000円です。三橋様ご夫婦の場合、現在の住宅ローンの残高はおよそ3,300万円でした。住宅ローン残高を超える売却額を期待されていますが、高く売れた場合には差し引かれる仲介手数料は増えることが見込まれます。またその他に、売却時には印紙税や抵当権抹消登記に関する費用、住宅ローン繰り上げ返済手数料、ハウスクリーニング費用等の費用もあります。三橋様の場合、ご夫婦それぞれで住宅ローンを契約されていますから、通常の2倍の金額が必要になるものもあります。また、住宅ローンを組み、マンションを買うことで、新たに必要になる費用もあります。例えば住宅ローン契約に伴う費用として、例えば融資手数料や住宅ローン印紙税、抵当権設定登記に伴う費用などが挙げられます。今回もご夫婦それぞれで住宅ローンを契約するとのことであれば、費用は売却時と同様に通常の2倍必要でしょう。登録免許税や不動産取得税といった税金の支払いや、マンションによっては引き渡し時に修繕積立一時金の一括支払いが必要になる場合もあります。諸費用には物件価格や借入金額等によって増減する費用も多いため、物件予算を増やしたことで見込まれる金額は現状のマンション取得時よりも増えました。また、買替え後のランニングコストも確認しておきたいところです。今回のライフプランシミュレーションには費用の増減を組み込みませんでしたが、マンションによっては管理費や駐車場代、修繕積立金等の費用負担が増えるケースもあるでしょう。このように、マイホームの買替えには様々な諸費用が想定されます。誤算その4:住宅ローン控除は縮小・厳格化実は最近、今後住宅を取得する多くの方にとって誤算となることが見込まれる変化がいくつかありました。とりわけ注目したいのは、住宅ローン控除の改正です。住宅ローン控除は「住宅ローン減税」とも呼ばれています。正式には住宅借入金等特別控除と言います。一言で表せば、住宅ローンを利用してマイホームを取得する方が、一定の要件を満たしていれば受けられる税金の還付のしくみと言えます。住宅ローン控除の内容には、令和4年税制改正で以下のようないくつかの変更が加えられました。・控除率 1%→0.7%に縮小・借入限度額 住宅の種類により2パターンのみ→入居期間・住宅の種類により6パターン・入居期限 2022年末→2025年末・所得要件 合計所得金額3,000万円以下→2,000万円以下一見すると、それほど大きな変化はないと思われます。ところが、深堀りしていくと大きな変更が明らかになってきます。以下の図をご覧ください。こちらは令和4年以降の住宅ローン控除の変更を細かくまとめたものです。※図は著者作成。無断転載・コピーを禁じます。 住宅の種類と居住年によって、借入限度額の上限額と控除期間に細かな差がつけられています。中古住宅でも買い取り再販であれば新築と同様の扱いがなされます。加えて、その他の中古住宅であっても一定の省エネ技術基準を満たしていれば、借入限度額は新築と同水準の3,000万円が2025年まで維持されます。反対に一定の省エネ技術基準を満たしていない住宅は、新築住宅であっても2024年以降は2,000万円が借入限度額となり、中古住宅と同等以下の扱いに集約されます。中古・新築を問わず高い省エネ性能をもつ住宅の取得を促進したい国の意向が推察されるのではないでしょうか。ちなみに、こちらの図には記載されていませんが、中古住宅に適用される耐震要件は大きく緩和されています。一方、法改正により省エネ性能の上位等級が創設されたことに紐づいているのでしょう。住宅ローン控除に適用される認定住宅等の省エネ基準は底上げされています。高い省エネ基準を満たす住宅を取得するにあたっては費用がかさむケースがほとんどでしょう。一方住宅の種類によって借入額上限が細分化されたことで、頭金なしでは借入額は上限を上回ってしまうケースも想定されます。三橋様のようにペアローンを利用するのであれば、頭金なしでも住宅ローン控除をフル活用できる可能性も見込まれますが、その場合も一定の省エネ性能を満たさない住宅であれば借入額上限は2,000万円となります。このような住宅ローン控除をとりまく変化は、来年以降買替えを検討している三橋様ご夫婦にとっても非常にインパクトの大きい誤算だったようです。マイホームはやはり大きなお買い物。国の施策に振り回されない計画性をさまざまな誤算に直面した三橋様は、最終的に2024年に検討していたマイホームの買替えを再検討することとなりました。一方、妻は団体信用生命保険に未加入で、その他の死亡保険にも加入しておらず、万が一の保障が大きく不足していることが明らかになりました。またご夫婦の老後資金も不足していました。そのため、必要な保障を確保しつつ、現在の家計を見直したのち、再び買替えについて検討されることとしました。最初からもう少し広いマンションにすればよかったと嘆いていらっしゃいましたが、今となっては住み替えるのであれば、住宅ローンを完済して買い替える他に選択肢はありません。現在お住まいのマンションに住み続けることも含めてもう一度今後の生活設計についてご家族で話し合いをされてから、中古物件まで視野を広げてエリアも広げつつ、物件予算を下げて検討されるそうです。Photo by iStock 近年、法改正をはじめ住宅に関する様々な変更が続いています。住宅はやはり大きなお買い物ですから、取得する際には国の打ち出す支援策の存在感は小さくありません。とはいえ、住宅の取得は生活における選択肢の一つです。国の支援策を受けられて、おトクな時期だからと住宅を無理して取得した結果、その後の生活における選択肢を大きく減らしたなどという結果になれば本末転倒でしょう。頭金をつくっていたら住宅ローンを組めなくなる。頭金なしで住宅を購入した方のお話しを伺うと、そんなご不安の入り混じった焦りの声もお聞きします。しかし頭金をつくることができたとすると、家計管理のスキルをもち、貯蓄習慣が身についているということです。キャリアの見直しなど大きな決断を伴うケースも考えられますが取得後も家計にゆとりを持てる可能性は高まりますし、成し遂げた自信はなによりもご自身の財産となります。マイホームが夢という方は確かに多いですが、時代は変化しています。住宅を自ら買わない場合の選択肢も最近では増えてきています。人生100年時代の今、本当にご自身にとって財産となるものはどんなものなのでしょうか。資金には限りがあります。その一方で使いみちは自由に決めることができます。大切なポイントはしっかりと押さえつつ、ご自身の明るい未来につなげられるお金の使い方をしていきたいものです。
加えて三橋様ご夫婦の場合、現状よりも広い間取りの物件を希望されていますから、物件予算は更に上がります。
一方、住宅取得にあたっては様々な費用も必要も必要となります。諸費用も考慮しながら、リサーチを行った結果、最終的に物件予算を5,800万円としました。
物件予算を5,800万円に増やした結果、住宅ローンで調達が必要な金額も増えました。もちろん審査はありますが、全額を住宅ローンで用意することは不可能ではないでしょう。しかし、頭金を出さないことにより想定されるリスクや不利益はあります。幸い三橋様ご夫婦にはまとまった蓄えがありましたから、頭金を300万円ずつ出し、2,600万円ずつ借入れると仮定しました。
現状のマンションの購入時に利用した住宅ローンの金額は4,000万円でした。ご夫婦合わせて5,200万円の借入であれば、借入金額増加分は多くても1,200万円に抑えることができそうです。ところが、ここで三橋様ご夫婦は2つめの誤算に直面します。
それは、フラット35の金利上昇です。フラット35は住宅金融支援機構が提供する住宅ローンで、一定の条件と住宅性能基準を満たした住宅であれば借りる人の職業を問わず利用できることが特長です。その名称のとおり借入期間は最長35年です。その間適用される金利は変わらない、全期間固定金利型の住宅ローンです。
三橋様ご夫婦は現在フラット35を利用しており、今後も固定金利での借入を希望されていました。共働きでお忙しいお二人ですから、やはり支払金額が固定され、その他のライフイベントに備える資金計画を立てやすいという点をメリットとお考えのようです。
Photo by iStock
実は、三橋様ご夫婦が住宅ローンを契約した2016年は、フラット35の金利は過去最低水準だった時期でした。三橋様ご夫婦も実際、団体信用生命保険分を含めても年1.4%で借入れという好条件で契約されています。ところがフラット35の最頻金利は昨年末あたりから上昇を続け、3月には年1.96%程度にまで上がりました。一度落ち着いた今月、4月の時点でも年1.76%程度の水準となっています。低金利の流れを受け、これまでのフラット35の最頻金利は年1.4%程度で推移していましたから、この半年程度の間で年0.5%程度の金利が上がったことになります。住宅ローンの金利は変化していますから、住宅取得をシミュレーションするにあたっては、時期に合わせた調整が必要となります。三橋様ご夫婦が買替えを想定されているのは2024年です。そこで、今後の金利上昇の可能性も考慮し、年2%の金利を想定しました。その結果、想定される利息負担額は2,000万円程度となることが判明しました。現在の利息負担額と比較すると、差額はおよそ1,300万円です。(いずれも35年返済、元利均等返済)借入金額を1,200万円増やしたことも大きく影響していることでしょう。もちろん2%まで上昇するかどうかはわかりません。しかし、このように大きな差となる以上、今買い換えを検討するなら、金利上昇の大きな影響は見逃せません。買替え時にはこれまでの住宅ローン契約と同じ返済期間とすれば、完済年齢もさらに伸びます。返済期間を短縮したいところですが、これまでと同じ完済年齢に揃えた場合、利息負担額は500万円減るものの毎月の返済額はおよそ6.5万円増えます。現状の家計の水準を維持するとした場合、当面は問題なさそうですが、万が一の備えは手薄で、退職後の家計はかなり厳しい見通しになることが推測されました。誤算その3:物件価格アップで諸費用負担はさらにかさむ不動産を買替える、ということは不動産の売却契約、不動産の購入契約2つの契約を同時期に結ぶということとなります。不確定要素もありますがするべきことは多くあり、それに伴い発生する費用もあります。例えばマイホームを売却する際、住宅ローンがなく、ご自身で売却先を見つけ、様々な契約手続きをとることができれば費用もかからないのですが、通常は不動産会社に売却の仲介を依頼します。その場合、仲介手数料が必要となります。仲介手数料は不動産会社が独自に決めていますが、法律によって上限が設けられています。仲介手数料の上限は以下の算式で求めることができます。仲介手数料の上限=1+2+31 物件価格のうち200万円以下の金額×5.5%2 物件価格のうち200万円を超え400万円以下の金額×4.4%3 物件価格のうち400万円を超える金額×3.3%※消費税率10%の場合Photo by iStock この計算式にあてはめて計算してみると、仮に物件価格が3,300万円なら、115万5,000円となります。4,000万円であれば138万6000円です。三橋様ご夫婦の場合、現在の住宅ローンの残高はおよそ3,300万円でした。住宅ローン残高を超える売却額を期待されていますが、高く売れた場合には差し引かれる仲介手数料は増えることが見込まれます。またその他に、売却時には印紙税や抵当権抹消登記に関する費用、住宅ローン繰り上げ返済手数料、ハウスクリーニング費用等の費用もあります。三橋様の場合、ご夫婦それぞれで住宅ローンを契約されていますから、通常の2倍の金額が必要になるものもあります。また、住宅ローンを組み、マンションを買うことで、新たに必要になる費用もあります。例えば住宅ローン契約に伴う費用として、例えば融資手数料や住宅ローン印紙税、抵当権設定登記に伴う費用などが挙げられます。今回もご夫婦それぞれで住宅ローンを契約するとのことであれば、費用は売却時と同様に通常の2倍必要でしょう。登録免許税や不動産取得税といった税金の支払いや、マンションによっては引き渡し時に修繕積立一時金の一括支払いが必要になる場合もあります。諸費用には物件価格や借入金額等によって増減する費用も多いため、物件予算を増やしたことで見込まれる金額は現状のマンション取得時よりも増えました。また、買替え後のランニングコストも確認しておきたいところです。今回のライフプランシミュレーションには費用の増減を組み込みませんでしたが、マンションによっては管理費や駐車場代、修繕積立金等の費用負担が増えるケースもあるでしょう。このように、マイホームの買替えには様々な諸費用が想定されます。誤算その4:住宅ローン控除は縮小・厳格化実は最近、今後住宅を取得する多くの方にとって誤算となることが見込まれる変化がいくつかありました。とりわけ注目したいのは、住宅ローン控除の改正です。住宅ローン控除は「住宅ローン減税」とも呼ばれています。正式には住宅借入金等特別控除と言います。一言で表せば、住宅ローンを利用してマイホームを取得する方が、一定の要件を満たしていれば受けられる税金の還付のしくみと言えます。住宅ローン控除の内容には、令和4年税制改正で以下のようないくつかの変更が加えられました。・控除率 1%→0.7%に縮小・借入限度額 住宅の種類により2パターンのみ→入居期間・住宅の種類により6パターン・入居期限 2022年末→2025年末・所得要件 合計所得金額3,000万円以下→2,000万円以下一見すると、それほど大きな変化はないと思われます。ところが、深堀りしていくと大きな変更が明らかになってきます。以下の図をご覧ください。こちらは令和4年以降の住宅ローン控除の変更を細かくまとめたものです。※図は著者作成。無断転載・コピーを禁じます。 住宅の種類と居住年によって、借入限度額の上限額と控除期間に細かな差がつけられています。中古住宅でも買い取り再販であれば新築と同様の扱いがなされます。加えて、その他の中古住宅であっても一定の省エネ技術基準を満たしていれば、借入限度額は新築と同水準の3,000万円が2025年まで維持されます。反対に一定の省エネ技術基準を満たしていない住宅は、新築住宅であっても2024年以降は2,000万円が借入限度額となり、中古住宅と同等以下の扱いに集約されます。中古・新築を問わず高い省エネ性能をもつ住宅の取得を促進したい国の意向が推察されるのではないでしょうか。ちなみに、こちらの図には記載されていませんが、中古住宅に適用される耐震要件は大きく緩和されています。一方、法改正により省エネ性能の上位等級が創設されたことに紐づいているのでしょう。住宅ローン控除に適用される認定住宅等の省エネ基準は底上げされています。高い省エネ基準を満たす住宅を取得するにあたっては費用がかさむケースがほとんどでしょう。一方住宅の種類によって借入額上限が細分化されたことで、頭金なしでは借入額は上限を上回ってしまうケースも想定されます。三橋様のようにペアローンを利用するのであれば、頭金なしでも住宅ローン控除をフル活用できる可能性も見込まれますが、その場合も一定の省エネ性能を満たさない住宅であれば借入額上限は2,000万円となります。このような住宅ローン控除をとりまく変化は、来年以降買替えを検討している三橋様ご夫婦にとっても非常にインパクトの大きい誤算だったようです。マイホームはやはり大きなお買い物。国の施策に振り回されない計画性をさまざまな誤算に直面した三橋様は、最終的に2024年に検討していたマイホームの買替えを再検討することとなりました。一方、妻は団体信用生命保険に未加入で、その他の死亡保険にも加入しておらず、万が一の保障が大きく不足していることが明らかになりました。またご夫婦の老後資金も不足していました。そのため、必要な保障を確保しつつ、現在の家計を見直したのち、再び買替えについて検討されることとしました。最初からもう少し広いマンションにすればよかったと嘆いていらっしゃいましたが、今となっては住み替えるのであれば、住宅ローンを完済して買い替える他に選択肢はありません。現在お住まいのマンションに住み続けることも含めてもう一度今後の生活設計についてご家族で話し合いをされてから、中古物件まで視野を広げてエリアも広げつつ、物件予算を下げて検討されるそうです。Photo by iStock 近年、法改正をはじめ住宅に関する様々な変更が続いています。住宅はやはり大きなお買い物ですから、取得する際には国の打ち出す支援策の存在感は小さくありません。とはいえ、住宅の取得は生活における選択肢の一つです。国の支援策を受けられて、おトクな時期だからと住宅を無理して取得した結果、その後の生活における選択肢を大きく減らしたなどという結果になれば本末転倒でしょう。頭金をつくっていたら住宅ローンを組めなくなる。頭金なしで住宅を購入した方のお話しを伺うと、そんなご不安の入り混じった焦りの声もお聞きします。しかし頭金をつくることができたとすると、家計管理のスキルをもち、貯蓄習慣が身についているということです。キャリアの見直しなど大きな決断を伴うケースも考えられますが取得後も家計にゆとりを持てる可能性は高まりますし、成し遂げた自信はなによりもご自身の財産となります。マイホームが夢という方は確かに多いですが、時代は変化しています。住宅を自ら買わない場合の選択肢も最近では増えてきています。人生100年時代の今、本当にご自身にとって財産となるものはどんなものなのでしょうか。資金には限りがあります。その一方で使いみちは自由に決めることができます。大切なポイントはしっかりと押さえつつ、ご自身の明るい未来につなげられるお金の使い方をしていきたいものです。
実は、三橋様ご夫婦が住宅ローンを契約した2016年は、フラット35の金利は過去最低水準だった時期でした。三橋様ご夫婦も実際、団体信用生命保険分を含めても年1.4%で借入れという好条件で契約されています。ところがフラット35の最頻金利は昨年末あたりから上昇を続け、3月には年1.96%程度にまで上がりました。一度落ち着いた今月、4月の時点でも年1.76%程度の水準となっています。低金利の流れを受け、これまでのフラット35の最頻金利は年1.4%程度で推移していましたから、この半年程度の間で年0.5%程度の金利が上がったことになります。
住宅ローンの金利は変化していますから、住宅取得をシミュレーションするにあたっては、時期に合わせた調整が必要となります。三橋様ご夫婦が買替えを想定されているのは2024年です。そこで、今後の金利上昇の可能性も考慮し、年2%の金利を想定しました。
その結果、想定される利息負担額は2,000万円程度となることが判明しました。現在の利息負担額と比較すると、差額はおよそ1,300万円です。(いずれも35年返済、元利均等返済)借入金額を1,200万円増やしたことも大きく影響していることでしょう。もちろん2%まで上昇するかどうかはわかりません。しかし、このように大きな差となる以上、今買い換えを検討するなら、金利上昇の大きな影響は見逃せません。買替え時にはこれまでの住宅ローン契約と同じ返済期間とすれば、完済年齢もさらに伸びます。返済期間を短縮したいところですが、これまでと同じ完済年齢に揃えた場合、利息負担額は500万円減るものの毎月の返済額はおよそ6.5万円増えます。現状の家計の水準を維持するとした場合、当面は問題なさそうですが、万が一の備えは手薄で、退職後の家計はかなり厳しい見通しになることが推測されました。
不動産を買替える、ということは不動産の売却契約、不動産の購入契約2つの契約を同時期に結ぶということとなります。不確定要素もありますがするべきことは多くあり、それに伴い発生する費用もあります。
例えばマイホームを売却する際、住宅ローンがなく、ご自身で売却先を見つけ、様々な契約手続きをとることができれば費用もかからないのですが、通常は不動産会社に売却の仲介を依頼します。その場合、仲介手数料が必要となります。仲介手数料は不動産会社が独自に決めていますが、法律によって上限が設けられています。仲介手数料の上限は以下の算式で求めることができます。
仲介手数料の上限=1+2+3
1 物件価格のうち200万円以下の金額×5.5%2 物件価格のうち200万円を超え400万円以下の金額×4.4%3 物件価格のうち400万円を超える金額×3.3%
※消費税率10%の場合
Photo by iStock
この計算式にあてはめて計算してみると、仮に物件価格が3,300万円なら、115万5,000円となります。4,000万円であれば138万6000円です。三橋様ご夫婦の場合、現在の住宅ローンの残高はおよそ3,300万円でした。住宅ローン残高を超える売却額を期待されていますが、高く売れた場合には差し引かれる仲介手数料は増えることが見込まれます。またその他に、売却時には印紙税や抵当権抹消登記に関する費用、住宅ローン繰り上げ返済手数料、ハウスクリーニング費用等の費用もあります。三橋様の場合、ご夫婦それぞれで住宅ローンを契約されていますから、通常の2倍の金額が必要になるものもあります。また、住宅ローンを組み、マンションを買うことで、新たに必要になる費用もあります。例えば住宅ローン契約に伴う費用として、例えば融資手数料や住宅ローン印紙税、抵当権設定登記に伴う費用などが挙げられます。今回もご夫婦それぞれで住宅ローンを契約するとのことであれば、費用は売却時と同様に通常の2倍必要でしょう。登録免許税や不動産取得税といった税金の支払いや、マンションによっては引き渡し時に修繕積立一時金の一括支払いが必要になる場合もあります。諸費用には物件価格や借入金額等によって増減する費用も多いため、物件予算を増やしたことで見込まれる金額は現状のマンション取得時よりも増えました。また、買替え後のランニングコストも確認しておきたいところです。今回のライフプランシミュレーションには費用の増減を組み込みませんでしたが、マンションによっては管理費や駐車場代、修繕積立金等の費用負担が増えるケースもあるでしょう。このように、マイホームの買替えには様々な諸費用が想定されます。誤算その4:住宅ローン控除は縮小・厳格化実は最近、今後住宅を取得する多くの方にとって誤算となることが見込まれる変化がいくつかありました。とりわけ注目したいのは、住宅ローン控除の改正です。住宅ローン控除は「住宅ローン減税」とも呼ばれています。正式には住宅借入金等特別控除と言います。一言で表せば、住宅ローンを利用してマイホームを取得する方が、一定の要件を満たしていれば受けられる税金の還付のしくみと言えます。住宅ローン控除の内容には、令和4年税制改正で以下のようないくつかの変更が加えられました。・控除率 1%→0.7%に縮小・借入限度額 住宅の種類により2パターンのみ→入居期間・住宅の種類により6パターン・入居期限 2022年末→2025年末・所得要件 合計所得金額3,000万円以下→2,000万円以下一見すると、それほど大きな変化はないと思われます。ところが、深堀りしていくと大きな変更が明らかになってきます。以下の図をご覧ください。こちらは令和4年以降の住宅ローン控除の変更を細かくまとめたものです。※図は著者作成。無断転載・コピーを禁じます。 住宅の種類と居住年によって、借入限度額の上限額と控除期間に細かな差がつけられています。中古住宅でも買い取り再販であれば新築と同様の扱いがなされます。加えて、その他の中古住宅であっても一定の省エネ技術基準を満たしていれば、借入限度額は新築と同水準の3,000万円が2025年まで維持されます。反対に一定の省エネ技術基準を満たしていない住宅は、新築住宅であっても2024年以降は2,000万円が借入限度額となり、中古住宅と同等以下の扱いに集約されます。中古・新築を問わず高い省エネ性能をもつ住宅の取得を促進したい国の意向が推察されるのではないでしょうか。ちなみに、こちらの図には記載されていませんが、中古住宅に適用される耐震要件は大きく緩和されています。一方、法改正により省エネ性能の上位等級が創設されたことに紐づいているのでしょう。住宅ローン控除に適用される認定住宅等の省エネ基準は底上げされています。高い省エネ基準を満たす住宅を取得するにあたっては費用がかさむケースがほとんどでしょう。一方住宅の種類によって借入額上限が細分化されたことで、頭金なしでは借入額は上限を上回ってしまうケースも想定されます。三橋様のようにペアローンを利用するのであれば、頭金なしでも住宅ローン控除をフル活用できる可能性も見込まれますが、その場合も一定の省エネ性能を満たさない住宅であれば借入額上限は2,000万円となります。このような住宅ローン控除をとりまく変化は、来年以降買替えを検討している三橋様ご夫婦にとっても非常にインパクトの大きい誤算だったようです。マイホームはやはり大きなお買い物。国の施策に振り回されない計画性をさまざまな誤算に直面した三橋様は、最終的に2024年に検討していたマイホームの買替えを再検討することとなりました。一方、妻は団体信用生命保険に未加入で、その他の死亡保険にも加入しておらず、万が一の保障が大きく不足していることが明らかになりました。またご夫婦の老後資金も不足していました。そのため、必要な保障を確保しつつ、現在の家計を見直したのち、再び買替えについて検討されることとしました。最初からもう少し広いマンションにすればよかったと嘆いていらっしゃいましたが、今となっては住み替えるのであれば、住宅ローンを完済して買い替える他に選択肢はありません。現在お住まいのマンションに住み続けることも含めてもう一度今後の生活設計についてご家族で話し合いをされてから、中古物件まで視野を広げてエリアも広げつつ、物件予算を下げて検討されるそうです。Photo by iStock 近年、法改正をはじめ住宅に関する様々な変更が続いています。住宅はやはり大きなお買い物ですから、取得する際には国の打ち出す支援策の存在感は小さくありません。とはいえ、住宅の取得は生活における選択肢の一つです。国の支援策を受けられて、おトクな時期だからと住宅を無理して取得した結果、その後の生活における選択肢を大きく減らしたなどという結果になれば本末転倒でしょう。頭金をつくっていたら住宅ローンを組めなくなる。頭金なしで住宅を購入した方のお話しを伺うと、そんなご不安の入り混じった焦りの声もお聞きします。しかし頭金をつくることができたとすると、家計管理のスキルをもち、貯蓄習慣が身についているということです。キャリアの見直しなど大きな決断を伴うケースも考えられますが取得後も家計にゆとりを持てる可能性は高まりますし、成し遂げた自信はなによりもご自身の財産となります。マイホームが夢という方は確かに多いですが、時代は変化しています。住宅を自ら買わない場合の選択肢も最近では増えてきています。人生100年時代の今、本当にご自身にとって財産となるものはどんなものなのでしょうか。資金には限りがあります。その一方で使いみちは自由に決めることができます。大切なポイントはしっかりと押さえつつ、ご自身の明るい未来につなげられるお金の使い方をしていきたいものです。
この計算式にあてはめて計算してみると、仮に物件価格が3,300万円なら、115万5,000円となります。4,000万円であれば138万6000円です。
三橋様ご夫婦の場合、現在の住宅ローンの残高はおよそ3,300万円でした。住宅ローン残高を超える売却額を期待されていますが、高く売れた場合には差し引かれる仲介手数料は増えることが見込まれます。またその他に、売却時には印紙税や抵当権抹消登記に関する費用、住宅ローン繰り上げ返済手数料、ハウスクリーニング費用等の費用もあります。三橋様の場合、ご夫婦それぞれで住宅ローンを契約されていますから、通常の2倍の金額が必要になるものもあります。
また、住宅ローンを組み、マンションを買うことで、新たに必要になる費用もあります。例えば住宅ローン契約に伴う費用として、例えば融資手数料や住宅ローン印紙税、抵当権設定登記に伴う費用などが挙げられます。今回もご夫婦それぞれで住宅ローンを契約するとのことであれば、費用は売却時と同様に通常の2倍必要でしょう。登録免許税や不動産取得税といった税金の支払いや、マンションによっては引き渡し時に修繕積立一時金の一括支払いが必要になる場合もあります。諸費用には物件価格や借入金額等によって増減する費用も多いため、物件予算を増やしたことで見込まれる金額は現状のマンション取得時よりも増えました。
また、買替え後のランニングコストも確認しておきたいところです。今回のライフプランシミュレーションには費用の増減を組み込みませんでしたが、マンションによっては管理費や駐車場代、修繕積立金等の費用負担が増えるケースもあるでしょう。このように、マイホームの買替えには様々な諸費用が想定されます。
実は最近、今後住宅を取得する多くの方にとって誤算となることが見込まれる変化がいくつかありました。とりわけ注目したいのは、住宅ローン控除の改正です。住宅ローン控除は「住宅ローン減税」とも呼ばれています。正式には住宅借入金等特別控除と言います。一言で表せば、住宅ローンを利用してマイホームを取得する方が、一定の要件を満たしていれば受けられる税金の還付のしくみと言えます。住宅ローン控除の内容には、令和4年税制改正で以下のようないくつかの変更が加えられました。
・控除率 1%→0.7%に縮小・借入限度額 住宅の種類により2パターンのみ→入居期間・住宅の種類により6パターン・入居期限 2022年末→2025年末・所得要件 合計所得金額3,000万円以下→2,000万円以下
一見すると、それほど大きな変化はないと思われます。ところが、深堀りしていくと大きな変更が明らかになってきます。以下の図をご覧ください。こちらは令和4年以降の住宅ローン控除の変更を細かくまとめたものです。
※図は著者作成。無断転載・コピーを禁じます。 住宅の種類と居住年によって、借入限度額の上限額と控除期間に細かな差がつけられています。中古住宅でも買い取り再販であれば新築と同様の扱いがなされます。加えて、その他の中古住宅であっても一定の省エネ技術基準を満たしていれば、借入限度額は新築と同水準の3,000万円が2025年まで維持されます。反対に一定の省エネ技術基準を満たしていない住宅は、新築住宅であっても2024年以降は2,000万円が借入限度額となり、中古住宅と同等以下の扱いに集約されます。中古・新築を問わず高い省エネ性能をもつ住宅の取得を促進したい国の意向が推察されるのではないでしょうか。ちなみに、こちらの図には記載されていませんが、中古住宅に適用される耐震要件は大きく緩和されています。一方、法改正により省エネ性能の上位等級が創設されたことに紐づいているのでしょう。住宅ローン控除に適用される認定住宅等の省エネ基準は底上げされています。高い省エネ基準を満たす住宅を取得するにあたっては費用がかさむケースがほとんどでしょう。一方住宅の種類によって借入額上限が細分化されたことで、頭金なしでは借入額は上限を上回ってしまうケースも想定されます。三橋様のようにペアローンを利用するのであれば、頭金なしでも住宅ローン控除をフル活用できる可能性も見込まれますが、その場合も一定の省エネ性能を満たさない住宅であれば借入額上限は2,000万円となります。このような住宅ローン控除をとりまく変化は、来年以降買替えを検討している三橋様ご夫婦にとっても非常にインパクトの大きい誤算だったようです。マイホームはやはり大きなお買い物。国の施策に振り回されない計画性をさまざまな誤算に直面した三橋様は、最終的に2024年に検討していたマイホームの買替えを再検討することとなりました。一方、妻は団体信用生命保険に未加入で、その他の死亡保険にも加入しておらず、万が一の保障が大きく不足していることが明らかになりました。またご夫婦の老後資金も不足していました。そのため、必要な保障を確保しつつ、現在の家計を見直したのち、再び買替えについて検討されることとしました。最初からもう少し広いマンションにすればよかったと嘆いていらっしゃいましたが、今となっては住み替えるのであれば、住宅ローンを完済して買い替える他に選択肢はありません。現在お住まいのマンションに住み続けることも含めてもう一度今後の生活設計についてご家族で話し合いをされてから、中古物件まで視野を広げてエリアも広げつつ、物件予算を下げて検討されるそうです。Photo by iStock 近年、法改正をはじめ住宅に関する様々な変更が続いています。住宅はやはり大きなお買い物ですから、取得する際には国の打ち出す支援策の存在感は小さくありません。とはいえ、住宅の取得は生活における選択肢の一つです。国の支援策を受けられて、おトクな時期だからと住宅を無理して取得した結果、その後の生活における選択肢を大きく減らしたなどという結果になれば本末転倒でしょう。頭金をつくっていたら住宅ローンを組めなくなる。頭金なしで住宅を購入した方のお話しを伺うと、そんなご不安の入り混じった焦りの声もお聞きします。しかし頭金をつくることができたとすると、家計管理のスキルをもち、貯蓄習慣が身についているということです。キャリアの見直しなど大きな決断を伴うケースも考えられますが取得後も家計にゆとりを持てる可能性は高まりますし、成し遂げた自信はなによりもご自身の財産となります。マイホームが夢という方は確かに多いですが、時代は変化しています。住宅を自ら買わない場合の選択肢も最近では増えてきています。人生100年時代の今、本当にご自身にとって財産となるものはどんなものなのでしょうか。資金には限りがあります。その一方で使いみちは自由に決めることができます。大切なポイントはしっかりと押さえつつ、ご自身の明るい未来につなげられるお金の使い方をしていきたいものです。
※図は著者作成。無断転載・コピーを禁じます。
住宅の種類と居住年によって、借入限度額の上限額と控除期間に細かな差がつけられています。中古住宅でも買い取り再販であれば新築と同様の扱いがなされます。加えて、その他の中古住宅であっても一定の省エネ技術基準を満たしていれば、借入限度額は新築と同水準の3,000万円が2025年まで維持されます。反対に一定の省エネ技術基準を満たしていない住宅は、新築住宅であっても2024年以降は2,000万円が借入限度額となり、中古住宅と同等以下の扱いに集約されます。中古・新築を問わず高い省エネ性能をもつ住宅の取得を促進したい国の意向が推察されるのではないでしょうか。ちなみに、こちらの図には記載されていませんが、中古住宅に適用される耐震要件は大きく緩和されています。一方、法改正により省エネ性能の上位等級が創設されたことに紐づいているのでしょう。住宅ローン控除に適用される認定住宅等の省エネ基準は底上げされています。高い省エネ基準を満たす住宅を取得するにあたっては費用がかさむケースがほとんどでしょう。一方住宅の種類によって借入額上限が細分化されたことで、頭金なしでは借入額は上限を上回ってしまうケースも想定されます。三橋様のようにペアローンを利用するのであれば、頭金なしでも住宅ローン控除をフル活用できる可能性も見込まれますが、その場合も一定の省エネ性能を満たさない住宅であれば借入額上限は2,000万円となります。このような住宅ローン控除をとりまく変化は、来年以降買替えを検討している三橋様ご夫婦にとっても非常にインパクトの大きい誤算だったようです。マイホームはやはり大きなお買い物。国の施策に振り回されない計画性をさまざまな誤算に直面した三橋様は、最終的に2024年に検討していたマイホームの買替えを再検討することとなりました。一方、妻は団体信用生命保険に未加入で、その他の死亡保険にも加入しておらず、万が一の保障が大きく不足していることが明らかになりました。またご夫婦の老後資金も不足していました。そのため、必要な保障を確保しつつ、現在の家計を見直したのち、再び買替えについて検討されることとしました。最初からもう少し広いマンションにすればよかったと嘆いていらっしゃいましたが、今となっては住み替えるのであれば、住宅ローンを完済して買い替える他に選択肢はありません。現在お住まいのマンションに住み続けることも含めてもう一度今後の生活設計についてご家族で話し合いをされてから、中古物件まで視野を広げてエリアも広げつつ、物件予算を下げて検討されるそうです。Photo by iStock 近年、法改正をはじめ住宅に関する様々な変更が続いています。住宅はやはり大きなお買い物ですから、取得する際には国の打ち出す支援策の存在感は小さくありません。とはいえ、住宅の取得は生活における選択肢の一つです。国の支援策を受けられて、おトクな時期だからと住宅を無理して取得した結果、その後の生活における選択肢を大きく減らしたなどという結果になれば本末転倒でしょう。頭金をつくっていたら住宅ローンを組めなくなる。頭金なしで住宅を購入した方のお話しを伺うと、そんなご不安の入り混じった焦りの声もお聞きします。しかし頭金をつくることができたとすると、家計管理のスキルをもち、貯蓄習慣が身についているということです。キャリアの見直しなど大きな決断を伴うケースも考えられますが取得後も家計にゆとりを持てる可能性は高まりますし、成し遂げた自信はなによりもご自身の財産となります。マイホームが夢という方は確かに多いですが、時代は変化しています。住宅を自ら買わない場合の選択肢も最近では増えてきています。人生100年時代の今、本当にご自身にとって財産となるものはどんなものなのでしょうか。資金には限りがあります。その一方で使いみちは自由に決めることができます。大切なポイントはしっかりと押さえつつ、ご自身の明るい未来につなげられるお金の使い方をしていきたいものです。
住宅の種類と居住年によって、借入限度額の上限額と控除期間に細かな差がつけられています。中古住宅でも買い取り再販であれば新築と同様の扱いがなされます。加えて、その他の中古住宅であっても一定の省エネ技術基準を満たしていれば、借入限度額は新築と同水準の3,000万円が2025年まで維持されます。反対に一定の省エネ技術基準を満たしていない住宅は、新築住宅であっても2024年以降は2,000万円が借入限度額となり、中古住宅と同等以下の扱いに集約されます。中古・新築を問わず高い省エネ性能をもつ住宅の取得を促進したい国の意向が推察されるのではないでしょうか。
ちなみに、こちらの図には記載されていませんが、中古住宅に適用される耐震要件は大きく緩和されています。一方、法改正により省エネ性能の上位等級が創設されたことに紐づいているのでしょう。住宅ローン控除に適用される認定住宅等の省エネ基準は底上げされています。
高い省エネ基準を満たす住宅を取得するにあたっては費用がかさむケースがほとんどでしょう。一方住宅の種類によって借入額上限が細分化されたことで、頭金なしでは借入額は上限を上回ってしまうケースも想定されます。三橋様のようにペアローンを利用するのであれば、頭金なしでも住宅ローン控除をフル活用できる可能性も見込まれますが、その場合も一定の省エネ性能を満たさない住宅であれば借入額上限は2,000万円となります。
このような住宅ローン控除をとりまく変化は、来年以降買替えを検討している三橋様ご夫婦にとっても非常にインパクトの大きい誤算だったようです。
さまざまな誤算に直面した三橋様は、最終的に2024年に検討していたマイホームの買替えを再検討することとなりました。
一方、妻は団体信用生命保険に未加入で、その他の死亡保険にも加入しておらず、万が一の保障が大きく不足していることが明らかになりました。またご夫婦の老後資金も不足していました。そのため、必要な保障を確保しつつ、現在の家計を見直したのち、再び買替えについて検討されることとしました。
最初からもう少し広いマンションにすればよかったと嘆いていらっしゃいましたが、今となっては住み替えるのであれば、住宅ローンを完済して買い替える他に選択肢はありません。
現在お住まいのマンションに住み続けることも含めてもう一度今後の生活設計についてご家族で話し合いをされてから、中古物件まで視野を広げてエリアも広げつつ、物件予算を下げて検討されるそうです。
Photo by iStock
近年、法改正をはじめ住宅に関する様々な変更が続いています。住宅はやはり大きなお買い物ですから、取得する際には国の打ち出す支援策の存在感は小さくありません。とはいえ、住宅の取得は生活における選択肢の一つです。国の支援策を受けられて、おトクな時期だからと住宅を無理して取得した結果、その後の生活における選択肢を大きく減らしたなどという結果になれば本末転倒でしょう。頭金をつくっていたら住宅ローンを組めなくなる。頭金なしで住宅を購入した方のお話しを伺うと、そんなご不安の入り混じった焦りの声もお聞きします。しかし頭金をつくることができたとすると、家計管理のスキルをもち、貯蓄習慣が身についているということです。キャリアの見直しなど大きな決断を伴うケースも考えられますが取得後も家計にゆとりを持てる可能性は高まりますし、成し遂げた自信はなによりもご自身の財産となります。マイホームが夢という方は確かに多いですが、時代は変化しています。住宅を自ら買わない場合の選択肢も最近では増えてきています。人生100年時代の今、本当にご自身にとって財産となるものはどんなものなのでしょうか。資金には限りがあります。その一方で使いみちは自由に決めることができます。大切なポイントはしっかりと押さえつつ、ご自身の明るい未来につなげられるお金の使い方をしていきたいものです。
近年、法改正をはじめ住宅に関する様々な変更が続いています。住宅はやはり大きなお買い物ですから、取得する際には国の打ち出す支援策の存在感は小さくありません。とはいえ、住宅の取得は生活における選択肢の一つです。国の支援策を受けられて、おトクな時期だからと住宅を無理して取得した結果、その後の生活における選択肢を大きく減らしたなどという結果になれば本末転倒でしょう。
頭金をつくっていたら住宅ローンを組めなくなる。頭金なしで住宅を購入した方のお話しを伺うと、そんなご不安の入り混じった焦りの声もお聞きします。しかし頭金をつくることができたとすると、家計管理のスキルをもち、貯蓄習慣が身についているということです。キャリアの見直しなど大きな決断を伴うケースも考えられますが取得後も家計にゆとりを持てる可能性は高まりますし、成し遂げた自信はなによりもご自身の財産となります。
マイホームが夢という方は確かに多いですが、時代は変化しています。住宅を自ら買わない場合の選択肢も最近では増えてきています。人生100年時代の今、本当にご自身にとって財産となるものはどんなものなのでしょうか。資金には限りがあります。その一方で使いみちは自由に決めることができます。大切なポイントはしっかりと押さえつつ、ご自身の明るい未来につなげられるお金の使い方をしていきたいものです。