美しい海に囲まれ、厳しい寒さが続く2月であっても温暖な沖縄は、日本中から人々が集まる人気の旅行先だ。休暇を終えて帰路に就く観光客は、ちんすこうや紅芋タルトなど、定番の土産物を手に取る。そんな中、若者を中心に根強い人気を誇るのが、小さな瓶に入った「星の砂」だ。
沖縄の言い伝えでは、星が産んだ子たちが「星の砂」となって砂浜に流れ着いたとされている。この事から、願い事の成就や幸せのお守りとして重宝されている。
しかし、このなんとも美しい形をした幸運の砂の正体は、星の子でも、自然の奇跡が生み出した宝石でもなく、原生生物である有孔虫の一種(バキュロジプシナ)の死骸なのだ。
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バキュロジプシナは西太平洋の熱帯海域に分布しており、体内に共生させている珪藻類からエネルギーを得て1年半ほどの寿命を全うする。その後、炭酸カルシウムを主成分とする殻だけが残って海底の白い砂の一部となり、太陽光を反射してエメラルドグリーンの海を作り出す。沖縄をはじめとする南の島のビーチが白いのはこのためだ。「星の砂」は八重山諸島の竹富島や西表島でよく採取される。一方で、沖縄本島で豊富に採取できる可能性が高いのは、「エメラルドビーチ」「トロピカルビーチ」など、カタカナの名前がついた人工ビーチだ。これらは、バキュロジプシナの殻を豊富に含む慶良間諸島の海底(水深数十メートルほど)からくみ上げてきた砂を使って、自然の海を埋め立ててできているからだ。ハワイにある有名な「ワイキキビーチ」も、アメリカ本土から運んできた砂を使用した人工ビーチで、本来ハワイでは発見されることのない貝殻が含まれていることも少なくないという。500万年前からこの地球上に生息していた生き物の殻と考えれば多少はロマンチックかもしれないが、海底からくみ上げてきた生き物の死骸を瓶に詰め、幸運のお守りとして知人に配るというのは、なんとも不思議な習慣である。(若)「週刊現代」2023年2月25日号より
バキュロジプシナは西太平洋の熱帯海域に分布しており、体内に共生させている珪藻類からエネルギーを得て1年半ほどの寿命を全うする。その後、炭酸カルシウムを主成分とする殻だけが残って海底の白い砂の一部となり、太陽光を反射してエメラルドグリーンの海を作り出す。沖縄をはじめとする南の島のビーチが白いのはこのためだ。
「星の砂」は八重山諸島の竹富島や西表島でよく採取される。一方で、沖縄本島で豊富に採取できる可能性が高いのは、「エメラルドビーチ」「トロピカルビーチ」など、カタカナの名前がついた人工ビーチだ。
これらは、バキュロジプシナの殻を豊富に含む慶良間諸島の海底(水深数十メートルほど)からくみ上げてきた砂を使って、自然の海を埋め立ててできているからだ。
ハワイにある有名な「ワイキキビーチ」も、アメリカ本土から運んできた砂を使用した人工ビーチで、本来ハワイでは発見されることのない貝殻が含まれていることも少なくないという。
500万年前からこの地球上に生息していた生き物の殻と考えれば多少はロマンチックかもしれないが、海底からくみ上げてきた生き物の死骸を瓶に詰め、幸運のお守りとして知人に配るというのは、なんとも不思議な習慣である。(若)
「週刊現代」2023年2月25日号より