昨年のクリスマスイブ、寒波が染み入る夜にファストフードチェーン大手『ケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)』の都内店舗には、チキンを求める長蛇の列があった。欧米圏での“クリスマスに七面鳥を食べる”という文化は、“クリスマスにはフライドチキン”と日本風にアレンジされて定着し、昨年も『KFC』の強さを再確認させられた。
そんな『KFC』や、もはや日本で不動の地位を築いているハンバーガーチェーン最大手『マクドナルド(以下、マック)』、ドーナツチェーンの代名詞ともなっている『ミスタードーナツ(以下、ミスド)』などとは対照的に、タコスなどを扱うアメリカ発のファストフードチェーン『タコベル』は日本でかなりの苦戦を強いられている。
全世界に約7000店舗を有している世界的チェーンでありながら、日本では2015年の再上陸後、一時12店舗まで拡大したものの伸び悩み、現在は9店舗に落ち着いてしまっているのである。
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この他にも、世界的にはメジャーでも日本では広まらないアメリカ発のファストフードチェーンは多い。ドーナツチェーンの『ダンキンドーナツ』は、アメリカ本国では2021年時点で9370店舗という大盛況ぶりを見せているにもかかわらず、日本では1970年代に上陸したものの、1998年に撤退するという憂き目に遭っているのだ。そこで今回は、食品業界事情に詳しいフードアナリスト・重盛高雄氏に、日本に根付くアメリカ発のファストフードチェーンと根付かないものの違いについて、各社の経営戦略などをもとに分析していただいた(以下、「」内は氏のコメント)。“文化”を持ちこむ意識重盛氏いわく、アメリカ発のファストフードチェーンが日本に進出するときに重要なのは、“風土の違い”を読めているか否かだという。「世界最大の移民国家であるアメリカと日本では、その風土がかなり異なっています。例えば『タコベル』が扱うタコスは、アメリカと隣り合わせのメキシコ発のソウルフードで、メキシコ系アメリカ人たちを経由して国内で広く親しまれてきました。このように、移民国家では出身国のソウルフードを扱ったチェーンは比較的に拡散しやすいわけです。一方で、そういったバックボーンがない日本で新たな料理を広めるというのは、料理を取り巻く“文化そのもの”を根付かせるのと同義です。『タコベル』を例に見ると“タコスの正しい食べ方”、“どんな時間帯に食べるものなのか”、“味のイメージ”、“王道の具材はなんなのか”といった基本情報から浸透させないと、客足が安定しないのです。この部分を意識しないと、本国でどれほど人気を博していても容易には広まりません」Photo by gettyimages 一方で、『マック』や『KFC』はアメリカと同様に日本でも広く浸透している。これらのチェーンが成功を収めたのには、何か共通する理由があるのか。「『マック』に関しては日本独自の『てりやきマックバーガー』を生み出し、さらに『月見バーガー』や『グラコロ』といった日本オリジナル、かつ“季節物メニュー”を生み出したのが強みになったのでしょう。『KFC』は唐揚げという類似料理がもともと日本にあったゆえの親和性や、『和風チキンカツサンド』、『カーネルクリスピー』といった日本オリジナルメニューの開発の成功が一因としてあります。そして、1970年代から大々的に宣伝を実施して、今や文化として根付くまでに至った“クリスマスにはフライドチキンを食べる”という習慣を打ち出すなど、定着に向けた戦略を積極的に行なったのが成功につながったのでしょう」“ローカライズ戦略”が鍵だった余談だが、1989年に日本人の嗜好に合わせて誕生した「てりやきマックバーガー」の大ヒットが、『マック』の世界的な経営戦略にも影響を及ぼしたというのは有名な話。それまでの『マック』には、世界中のどこの国でも同じメニューを提供するというルールがあったそうだが、日本の「てりやきマックバーガー」の大ヒットを受け、それぞれの国の食文化に合わせたメニュー開発が進められるようになったのだという。重盛氏はそういった『マック』や『KFC』の成功を実現した“ローカライズ戦略”の視点で見ると、『ダンキンドーナツ』や『タコベル』などが失速した理由がわかると語る。「『ダンキンドーナツ』は、アメリカ風のかなり甘い味付けが日本人にあまり響かなかったことや、お持ち帰りが中心のアメリカンスタイルをそのまま持ち込んだがゆえに、ドリンク系メニューのラインナップなどが微妙で、店舗で楽しみたい傾向が強い日本人には合わなかった印象がありますね。『タコベル』に関して言えば、先ほども言った料理への馴染みのなさを打破するきっかけとなりえた“日本風のメニュー”を用意しなかったことが敗因でしょう」Photo by iStock 日本風のメニューを用意する以外にも、ローカライズ戦略にはさまざまな攻め方があるという。「アメリカ本国では、『ダンキンドーナツ』にほぼ壊滅状態になるまで追いやられてしまった『ミスド』がいい例ですね。日本での同チェーンは、1990年代に飲茶などの塩気のある軽食メニューを展開したり、ポケモンなどとのコラボ系商品やイベントの充実、さらに日本オリジナルメニューの大ヒット商品『ポン・デ・リング』を開発したりと、日本人に受け入れられるための努力をこれまでかなりやってきた印象があります」本国での成功体験に縛られない柔軟さローカライズ戦略を敷いたことで息を長引かせたり、窮地からの復活を見せたりしたチェーンも多いそうだ。「その代表例が、2021年時点で世界31ヶ国に1600店舗を展開し、日本でも2006年に1号店をオープンさせ大行列を作るムーブメントを巻き起こした『クリスピー・クリーム・ドーナツ』。2015年には64店舗まで増やしたのですが、人気がピークアウトして2017年には46店舗にまで減少してしまいました。けれども、近年は往時ほどではありませんが、ローカライズ戦略が功を奏して人気が安定してきています。再建の立役者として語られるクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン社長の若月貴子氏は、テレビのインタビューで、“もっと甘くないドーナツ”を求める声が多く、商品を改良したことを語っていましたね。Photo by gettyimages また、日本には1992年に上陸したサンドイッチチェーンの『サブウェイ』は、具材を細かく指定するアメリカ式の注文スタイルが倦厭(けんえん)されて、2019年ごろに大量閉店が相次ぐ苦境に立たされました。ですが『あんこ&マスカルポーネ』という日本独自の商品がヒットしたことなどが受けて、持ち直しつつあります」重盛氏は、新たに日本進出を狙う海外チェーンが、大成功を収めた『マック』や『KFC』をお手本にする場合は、上陸直後ばかりに目を向けるのではいけないと指摘する。「上陸当時は割と本国のスタイルそのままで勝負していたので勘違いされがちですが、『マック』や『KFC』の成功は、大阪万博の影響で日本が文化的に開かれていたタイミングだったゆえの珍しい事例です。実際、両チェーンは後年ローカライズ戦略を積極的に行なっていますし、そうした実情を見るとローカライズ戦略がどれだけ重要かがわかるでしょう」アメリカ本国でいくら大成功したチェーンであっても、郷に入っては郷に従うという柔軟なスタイルを実践できるかどうかが、日本に定着するか否かの分水嶺なのかもしれない。
この他にも、世界的にはメジャーでも日本では広まらないアメリカ発のファストフードチェーンは多い。ドーナツチェーンの『ダンキンドーナツ』は、アメリカ本国では2021年時点で9370店舗という大盛況ぶりを見せているにもかかわらず、日本では1970年代に上陸したものの、1998年に撤退するという憂き目に遭っているのだ。
そこで今回は、食品業界事情に詳しいフードアナリスト・重盛高雄氏に、日本に根付くアメリカ発のファストフードチェーンと根付かないものの違いについて、各社の経営戦略などをもとに分析していただいた(以下、「」内は氏のコメント)。
重盛氏いわく、アメリカ発のファストフードチェーンが日本に進出するときに重要なのは、“風土の違い”を読めているか否かだという。
「世界最大の移民国家であるアメリカと日本では、その風土がかなり異なっています。例えば『タコベル』が扱うタコスは、アメリカと隣り合わせのメキシコ発のソウルフードで、メキシコ系アメリカ人たちを経由して国内で広く親しまれてきました。このように、移民国家では出身国のソウルフードを扱ったチェーンは比較的に拡散しやすいわけです。
一方で、そういったバックボーンがない日本で新たな料理を広めるというのは、料理を取り巻く“文化そのもの”を根付かせるのと同義です。
『タコベル』を例に見ると“タコスの正しい食べ方”、“どんな時間帯に食べるものなのか”、“味のイメージ”、“王道の具材はなんなのか”といった基本情報から浸透させないと、客足が安定しないのです。この部分を意識しないと、本国でどれほど人気を博していても容易には広まりません」
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一方で、『マック』や『KFC』はアメリカと同様に日本でも広く浸透している。これらのチェーンが成功を収めたのには、何か共通する理由があるのか。「『マック』に関しては日本独自の『てりやきマックバーガー』を生み出し、さらに『月見バーガー』や『グラコロ』といった日本オリジナル、かつ“季節物メニュー”を生み出したのが強みになったのでしょう。『KFC』は唐揚げという類似料理がもともと日本にあったゆえの親和性や、『和風チキンカツサンド』、『カーネルクリスピー』といった日本オリジナルメニューの開発の成功が一因としてあります。そして、1970年代から大々的に宣伝を実施して、今や文化として根付くまでに至った“クリスマスにはフライドチキンを食べる”という習慣を打ち出すなど、定着に向けた戦略を積極的に行なったのが成功につながったのでしょう」“ローカライズ戦略”が鍵だった余談だが、1989年に日本人の嗜好に合わせて誕生した「てりやきマックバーガー」の大ヒットが、『マック』の世界的な経営戦略にも影響を及ぼしたというのは有名な話。それまでの『マック』には、世界中のどこの国でも同じメニューを提供するというルールがあったそうだが、日本の「てりやきマックバーガー」の大ヒットを受け、それぞれの国の食文化に合わせたメニュー開発が進められるようになったのだという。重盛氏はそういった『マック』や『KFC』の成功を実現した“ローカライズ戦略”の視点で見ると、『ダンキンドーナツ』や『タコベル』などが失速した理由がわかると語る。「『ダンキンドーナツ』は、アメリカ風のかなり甘い味付けが日本人にあまり響かなかったことや、お持ち帰りが中心のアメリカンスタイルをそのまま持ち込んだがゆえに、ドリンク系メニューのラインナップなどが微妙で、店舗で楽しみたい傾向が強い日本人には合わなかった印象がありますね。『タコベル』に関して言えば、先ほども言った料理への馴染みのなさを打破するきっかけとなりえた“日本風のメニュー”を用意しなかったことが敗因でしょう」Photo by iStock 日本風のメニューを用意する以外にも、ローカライズ戦略にはさまざまな攻め方があるという。「アメリカ本国では、『ダンキンドーナツ』にほぼ壊滅状態になるまで追いやられてしまった『ミスド』がいい例ですね。日本での同チェーンは、1990年代に飲茶などの塩気のある軽食メニューを展開したり、ポケモンなどとのコラボ系商品やイベントの充実、さらに日本オリジナルメニューの大ヒット商品『ポン・デ・リング』を開発したりと、日本人に受け入れられるための努力をこれまでかなりやってきた印象があります」本国での成功体験に縛られない柔軟さローカライズ戦略を敷いたことで息を長引かせたり、窮地からの復活を見せたりしたチェーンも多いそうだ。「その代表例が、2021年時点で世界31ヶ国に1600店舗を展開し、日本でも2006年に1号店をオープンさせ大行列を作るムーブメントを巻き起こした『クリスピー・クリーム・ドーナツ』。2015年には64店舗まで増やしたのですが、人気がピークアウトして2017年には46店舗にまで減少してしまいました。けれども、近年は往時ほどではありませんが、ローカライズ戦略が功を奏して人気が安定してきています。再建の立役者として語られるクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン社長の若月貴子氏は、テレビのインタビューで、“もっと甘くないドーナツ”を求める声が多く、商品を改良したことを語っていましたね。Photo by gettyimages また、日本には1992年に上陸したサンドイッチチェーンの『サブウェイ』は、具材を細かく指定するアメリカ式の注文スタイルが倦厭(けんえん)されて、2019年ごろに大量閉店が相次ぐ苦境に立たされました。ですが『あんこ&マスカルポーネ』という日本独自の商品がヒットしたことなどが受けて、持ち直しつつあります」重盛氏は、新たに日本進出を狙う海外チェーンが、大成功を収めた『マック』や『KFC』をお手本にする場合は、上陸直後ばかりに目を向けるのではいけないと指摘する。「上陸当時は割と本国のスタイルそのままで勝負していたので勘違いされがちですが、『マック』や『KFC』の成功は、大阪万博の影響で日本が文化的に開かれていたタイミングだったゆえの珍しい事例です。実際、両チェーンは後年ローカライズ戦略を積極的に行なっていますし、そうした実情を見るとローカライズ戦略がどれだけ重要かがわかるでしょう」アメリカ本国でいくら大成功したチェーンであっても、郷に入っては郷に従うという柔軟なスタイルを実践できるかどうかが、日本に定着するか否かの分水嶺なのかもしれない。
一方で、『マック』や『KFC』はアメリカと同様に日本でも広く浸透している。これらのチェーンが成功を収めたのには、何か共通する理由があるのか。
「『マック』に関しては日本独自の『てりやきマックバーガー』を生み出し、さらに『月見バーガー』や『グラコロ』といった日本オリジナル、かつ“季節物メニュー”を生み出したのが強みになったのでしょう。
『KFC』は唐揚げという類似料理がもともと日本にあったゆえの親和性や、『和風チキンカツサンド』、『カーネルクリスピー』といった日本オリジナルメニューの開発の成功が一因としてあります。
そして、1970年代から大々的に宣伝を実施して、今や文化として根付くまでに至った“クリスマスにはフライドチキンを食べる”という習慣を打ち出すなど、定着に向けた戦略を積極的に行なったのが成功につながったのでしょう」
余談だが、1989年に日本人の嗜好に合わせて誕生した「てりやきマックバーガー」の大ヒットが、『マック』の世界的な経営戦略にも影響を及ぼしたというのは有名な話。
それまでの『マック』には、世界中のどこの国でも同じメニューを提供するというルールがあったそうだが、日本の「てりやきマックバーガー」の大ヒットを受け、それぞれの国の食文化に合わせたメニュー開発が進められるようになったのだという。
重盛氏はそういった『マック』や『KFC』の成功を実現した“ローカライズ戦略”の視点で見ると、『ダンキンドーナツ』や『タコベル』などが失速した理由がわかると語る。
「『ダンキンドーナツ』は、アメリカ風のかなり甘い味付けが日本人にあまり響かなかったことや、お持ち帰りが中心のアメリカンスタイルをそのまま持ち込んだがゆえに、ドリンク系メニューのラインナップなどが微妙で、店舗で楽しみたい傾向が強い日本人には合わなかった印象がありますね。
『タコベル』に関して言えば、先ほども言った料理への馴染みのなさを打破するきっかけとなりえた“日本風のメニュー”を用意しなかったことが敗因でしょう」
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日本風のメニューを用意する以外にも、ローカライズ戦略にはさまざまな攻め方があるという。「アメリカ本国では、『ダンキンドーナツ』にほぼ壊滅状態になるまで追いやられてしまった『ミスド』がいい例ですね。日本での同チェーンは、1990年代に飲茶などの塩気のある軽食メニューを展開したり、ポケモンなどとのコラボ系商品やイベントの充実、さらに日本オリジナルメニューの大ヒット商品『ポン・デ・リング』を開発したりと、日本人に受け入れられるための努力をこれまでかなりやってきた印象があります」本国での成功体験に縛られない柔軟さローカライズ戦略を敷いたことで息を長引かせたり、窮地からの復活を見せたりしたチェーンも多いそうだ。「その代表例が、2021年時点で世界31ヶ国に1600店舗を展開し、日本でも2006年に1号店をオープンさせ大行列を作るムーブメントを巻き起こした『クリスピー・クリーム・ドーナツ』。2015年には64店舗まで増やしたのですが、人気がピークアウトして2017年には46店舗にまで減少してしまいました。けれども、近年は往時ほどではありませんが、ローカライズ戦略が功を奏して人気が安定してきています。再建の立役者として語られるクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン社長の若月貴子氏は、テレビのインタビューで、“もっと甘くないドーナツ”を求める声が多く、商品を改良したことを語っていましたね。Photo by gettyimages また、日本には1992年に上陸したサンドイッチチェーンの『サブウェイ』は、具材を細かく指定するアメリカ式の注文スタイルが倦厭(けんえん)されて、2019年ごろに大量閉店が相次ぐ苦境に立たされました。ですが『あんこ&マスカルポーネ』という日本独自の商品がヒットしたことなどが受けて、持ち直しつつあります」重盛氏は、新たに日本進出を狙う海外チェーンが、大成功を収めた『マック』や『KFC』をお手本にする場合は、上陸直後ばかりに目を向けるのではいけないと指摘する。「上陸当時は割と本国のスタイルそのままで勝負していたので勘違いされがちですが、『マック』や『KFC』の成功は、大阪万博の影響で日本が文化的に開かれていたタイミングだったゆえの珍しい事例です。実際、両チェーンは後年ローカライズ戦略を積極的に行なっていますし、そうした実情を見るとローカライズ戦略がどれだけ重要かがわかるでしょう」アメリカ本国でいくら大成功したチェーンであっても、郷に入っては郷に従うという柔軟なスタイルを実践できるかどうかが、日本に定着するか否かの分水嶺なのかもしれない。
日本風のメニューを用意する以外にも、ローカライズ戦略にはさまざまな攻め方があるという。
「アメリカ本国では、『ダンキンドーナツ』にほぼ壊滅状態になるまで追いやられてしまった『ミスド』がいい例ですね。日本での同チェーンは、1990年代に飲茶などの塩気のある軽食メニューを展開したり、ポケモンなどとのコラボ系商品やイベントの充実、さらに日本オリジナルメニューの大ヒット商品『ポン・デ・リング』を開発したりと、日本人に受け入れられるための努力をこれまでかなりやってきた印象があります」
ローカライズ戦略を敷いたことで息を長引かせたり、窮地からの復活を見せたりしたチェーンも多いそうだ。
「その代表例が、2021年時点で世界31ヶ国に1600店舗を展開し、日本でも2006年に1号店をオープンさせ大行列を作るムーブメントを巻き起こした『クリスピー・クリーム・ドーナツ』。2015年には64店舗まで増やしたのですが、人気がピークアウトして2017年には46店舗にまで減少してしまいました。
けれども、近年は往時ほどではありませんが、ローカライズ戦略が功を奏して人気が安定してきています。再建の立役者として語られるクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン社長の若月貴子氏は、テレビのインタビューで、“もっと甘くないドーナツ”を求める声が多く、商品を改良したことを語っていましたね。
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また、日本には1992年に上陸したサンドイッチチェーンの『サブウェイ』は、具材を細かく指定するアメリカ式の注文スタイルが倦厭(けんえん)されて、2019年ごろに大量閉店が相次ぐ苦境に立たされました。ですが『あんこ&マスカルポーネ』という日本独自の商品がヒットしたことなどが受けて、持ち直しつつあります」重盛氏は、新たに日本進出を狙う海外チェーンが、大成功を収めた『マック』や『KFC』をお手本にする場合は、上陸直後ばかりに目を向けるのではいけないと指摘する。「上陸当時は割と本国のスタイルそのままで勝負していたので勘違いされがちですが、『マック』や『KFC』の成功は、大阪万博の影響で日本が文化的に開かれていたタイミングだったゆえの珍しい事例です。実際、両チェーンは後年ローカライズ戦略を積極的に行なっていますし、そうした実情を見るとローカライズ戦略がどれだけ重要かがわかるでしょう」アメリカ本国でいくら大成功したチェーンであっても、郷に入っては郷に従うという柔軟なスタイルを実践できるかどうかが、日本に定着するか否かの分水嶺なのかもしれない。
また、日本には1992年に上陸したサンドイッチチェーンの『サブウェイ』は、具材を細かく指定するアメリカ式の注文スタイルが倦厭(けんえん)されて、2019年ごろに大量閉店が相次ぐ苦境に立たされました。ですが『あんこ&マスカルポーネ』という日本独自の商品がヒットしたことなどが受けて、持ち直しつつあります」
重盛氏は、新たに日本進出を狙う海外チェーンが、大成功を収めた『マック』や『KFC』をお手本にする場合は、上陸直後ばかりに目を向けるのではいけないと指摘する。
「上陸当時は割と本国のスタイルそのままで勝負していたので勘違いされがちですが、『マック』や『KFC』の成功は、大阪万博の影響で日本が文化的に開かれていたタイミングだったゆえの珍しい事例です。実際、両チェーンは後年ローカライズ戦略を積極的に行なっていますし、そうした実情を見るとローカライズ戦略がどれだけ重要かがわかるでしょう」
アメリカ本国でいくら大成功したチェーンであっても、郷に入っては郷に従うという柔軟なスタイルを実践できるかどうかが、日本に定着するか否かの分水嶺なのかもしれない。