和歌山県内で寺を運営する二つの宗教法人が2021年、大阪国税局の税務調査を受け、各法人の代表を務める住職2人が檀家(だんか)らからのお布施計約1億5000万円を私的に流用していたとして、所得税の源泉徴収漏れを指摘されていたことがわかった。
国税局は流用分を源泉徴収の対象となる「給与」と認定。2法人は重加算税を含む計約7000万円を追徴課税されたという。
宗教法人は税制上の優遇措置があり、お布施など宗教活動による収入は法人税の課税対象にならない。しかし、住職らに支払う給与などについては一般企業と同様、所得税を事前に天引きして納付する義務がある。
指摘されたのは同県田辺市と、すさみ町にある2法人。代表の2人は、それぞれ7~8か所の寺の住職を兼務していた。
関係者によると、2人は21年までの7年間で、読経などで得たお布施を自分名義の口座に入れ、個人的に使ったり、預金したりしていた。これらの流用が仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う不正行為と認定され、ペナルティーとなる重加算税を含め、追徴課税された。
田辺市の法人の住職は取材に「お布施は少額だったので帳簿も付けず、個人口座で管理していた」とし、すさみ町の法人の住職は「徴収漏れはミスでしてしまった」と話した。
宗教法人による源泉徴収漏れは相次いでおり、国税当局は調査を強化している。
国税庁が22年6月までの1年間で1490の宗教法人に実施した調査では、約7割で源泉徴収漏れがあり、1件あたりの追徴税額は88万2000円だった。過去5年間、徴収漏れは全体の7割前後で推移し、一般企業よりも高水準とされる。
国税OBの税理士は「お布施は現金のため、記録が残らないことが多い。こうした事情から私的流用が後を絶たない」としている。