ヤングケアラー(若者介護者)の存在が、クローズアップされるようなった昨今。その火付け役となったのが、『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』の著者で、自身もヤングケアラーとしての経験を持つ、奥村シンゴさんだ。
そんな奥村さんが今回取材したのは、介護と育児のダブルケア経験がある女性。彼女のお子さんはかつて「発達障害グレーゾーン」と呼ばれる状態にあり、周囲から理解を得られず精神的に参ってしまったという。発達障害グレーゾーンの子どもとその親に必要な支援とは。
ミキさんは、大阪府在住の30代。現在、パート勤務をしながら、がん末期の父親と育児が重なったダブルケアの経験を生かして著書を出版後、団体を立ち上げた。現在はダブルケアの啓発や1月末から2月初めにはパネル展も開催と、精力的に活動を続けている。
そんな彼女が結婚後、1人の子宝に恵まれた。しかし、ミキさんは3歳半の頃から息子Aくんの落ち着きのなさに気がつきはじめ、精神保健福祉センターの保健師師に相談。
「知的障害の問題はありませんでした。おそらく個々がもつ性格ではないでしょうか」(保育士)
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Aくんはいわゆる「発達障害グレーゾーン」と呼ばれる状態だった。「発達障害グレーゾーン」とは、明確な定義は存在しないが、定型発達と発達障害の間の境界領域を指す俗称だ。グレーゾーンには、その人の持つ症状や特性の程度やその現れ方が、体調や環境・場面によって左右されるという特徴がある。例えば、学校にいるときは症状が強く出るが、家では比較的症状が弱くなるといったことが起こりえる。Aくんはしばしば癇癪(かんしゃく)を引き起こす。普通の癇癪と発達障害の癇癪の見極めは医者でさえ困難なケースがある。例えば、自宅のみで癇癪を起こす時「普通の癇癪」、自宅や屋外でも癇癪を起こす場合は「発達障害の癇癪」で区別される。Aくんの場合は家と外両方で癇癪があり、ミキさんは「これは発達障害ではないか」と疑問をもちつつ生活を送っていた。Aくんが保育園の年長の時、突然怒りだし何人かの友達をたたいたり、殴ったりすることがたびたび繰り返された。ミキさんはAくんに「お友達に手を出したのだからちゃんと謝りなさい」と怒っても聞いてくれない。しばらくすると、再びたたき出してしまうことの繰り返し……。被害を及ぼした親に保育園で「この度は、息子に傷をつけてしまい申し訳ございません」と謝罪に回る毎日だった。「(Aくんは)知的遅れがないのでしょ?大丈夫、個性だって。あんた(ミキさん)真面目すぎるのよ」(保護者)保育園の保護者はAくんの言動に対して慰めるだけで、なかなかミキさんの想いを受け止める人がいなかった。 子どもの癇癪の日々に疲れ果てうつ状態にその後、Aくんが小学校に進学。ミキさんのもとには今度は学童保育(主に昼間に保護者不在の小学生の授業終了後の放課後遊びや生活の場を提供)から「今日は遊び先で癇癪を起こしましたよ」と目に余る癇癪があったときや友達のケガにつながるような行為があったときに連絡があった。学童側はこちらが「どうですか?」と聞いたときに、今日はこんな様子でしたよと教えてくれることは度々あった。「毎日腹が立って、小さいことでイライラ気味でした。まあいいかと気分を切り替えるようにしていましたが、もう限界でした」(ミキさん)Photo by iStockAくんを学童保育に送っても精神的に休まるどころか常に緊張感が走る日々……。「仕事があるので学童には預けるけど、問題を起こさないか不安だった。心のよりどころがなくうつになっていたのかもしれません。夏休みになっても誰ともLINEをしていないし、絵文字も使用していないことに気がつきました」(ミキさん)このように、発達障害グレーゾーンの子をもつ親は周囲から理解が得られない場合、一人で孤立したり、悩みを抱えこんでしまう傾向がある。ただ、現在、発達障害の子を持つ親同士が集まり悩みを話し合う場が全国各地にある(筆者が主催する支援団体「よしてよせての会」でも、LINEオプチャを使い「ケアとも」という名称で365日ほぼ24時間無料でサポート中。気軽に連絡してきてほしい)。発達障害の疑いから1460日目、ようやく出た診断は…これまでAくんのことがなかなか理解されず苦しみ悩んできたミキさんに転機が訪れる。ミキさんは、ある相談センターの心理士にAくんの症状を伝えると、「必要な療育を受けるために、一度発達検査をチェックしてみてはいかがですか?」とアドバイスをうけた。そして、心理士から紹介された病院の医師の診察結果は、「自閉症スペクトラム」と「ADHD」。 「自閉症スペクトラム」とは、主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害の1つ。 この障害特性により、日常生活や社会生活において困難さを感じることがある。特徴は、下記の1.~7.の7つだ。1. 社会的な関係のもちづらさ 2. コミュニケーションの困難 3. 特徴的な行動や動作 4. 活動や興味の範囲が狭い 5. 変化に対する不安や抵抗 6. 社会的なイマジネーションの課題 7. 感覚の過敏さと鈍さ「ADHD(注意欠如・多動症)」とは、発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難、順序立てて行動することが苦手、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態。12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断される。ミキさんがAくんを「知的な遅れはないものの発達障害じゃないかな?」と疑問をもちはじめた1460日目の出来事。Aくんの場合、「自閉症スペクトラム」は、上記の1、3、5でADHDは「落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難」に以前から該当しているように思える。診断がつくまで3年半も要するのは今後の課題である。一時保育の年齢制限延長などの支援が必要現在Aくんが7歳になったミキさんは、知的障害がない発達障害の子どもについて認知度のアップや一時保育の年齢制限の見直しが不可欠と話す。「知的障害がないから発達障害じゃないとは限らないので理解が深まればと思いますし一人ひとりに細かいケアが必要です。学童があるので仕事にはそれほど差し支えませんが、親がリフレッシュや自己研鑽したいとき、市内のイベントなどの一時保育はすべて未就学児対象なので、それでは諦めないといけませんよね。例えば、一時保育は小学校就学前までが対象です。小学1年生は一時保育対象外です」(ミキさん) ミキさんのように共働き家庭が増える中、現場のマンパワーの問題もあるが、一時保育をせめて小学校低学年までに延長してはどうか。 さらに、ミキさんは発達障害の現在の高校受験体制に不安があるという。「発達障害で通級指導でない場合、高校進学時に内申点が低くなる可能性があるんです。まだまだ未整備なことが多いです」(ミキさん)現在、全国で発達障害の優遇処置を実施しているのは、主に東京都と神奈川県の2県のみ。東京都は「エンカレッジスクール」、神奈川県の「クリエイティブスクール」は入学試験も内申もない公立高校。その他の地域の高校も今後増加が見込まれる。昨年末、文部科学省が全国の小中高生で発達障害の可能性がある人数を公表した。それによると、小中学生の8.8%が発達障害の可能性があるのが分かり、前回調査から2.3ポイント上昇。小学1年は12.0%で、小学2年の12.4%についで2番目に多い。35人学級で計算すれば、1クラス4人とけっして少なくない数字であり、発達障害グレーゾーンを含めるとさらに多いだろう。また、「授業時間内に教室内で個別の配慮・支援を行っているか」については、小学・中学校は行っているが54.9%、「行っていない」が43.2%とほぼ半々である。今、学校は教員不足が問題視され個別指導や配慮に限界はあるだろう。できる学校から一歩ずつ進めていくことに期待したい。
Aくんはいわゆる「発達障害グレーゾーン」と呼ばれる状態だった。
「発達障害グレーゾーン」とは、明確な定義は存在しないが、定型発達と発達障害の間の境界領域を指す俗称だ。
グレーゾーンには、その人の持つ症状や特性の程度やその現れ方が、体調や環境・場面によって左右されるという特徴がある。例えば、学校にいるときは症状が強く出るが、家では比較的症状が弱くなるといったことが起こりえる。
Aくんはしばしば癇癪(かんしゃく)を引き起こす。
普通の癇癪と発達障害の癇癪の見極めは医者でさえ困難なケースがある。
例えば、自宅のみで癇癪を起こす時「普通の癇癪」、自宅や屋外でも癇癪を起こす場合は「発達障害の癇癪」で区別される。Aくんの場合は家と外両方で癇癪があり、ミキさんは「これは発達障害ではないか」と疑問をもちつつ生活を送っていた。
Aくんが保育園の年長の時、突然怒りだし何人かの友達をたたいたり、殴ったりすることがたびたび繰り返された。
ミキさんはAくんに「お友達に手を出したのだからちゃんと謝りなさい」と怒っても聞いてくれない。しばらくすると、再びたたき出してしまうことの繰り返し……。被害を及ぼした親に保育園で「この度は、息子に傷をつけてしまい申し訳ございません」と謝罪に回る毎日だった。
「(Aくんは)知的遅れがないのでしょ?大丈夫、個性だって。
あんた(ミキさん)真面目すぎるのよ」(保護者)
保育園の保護者はAくんの言動に対して慰めるだけで、なかなかミキさんの想いを受け止める人がいなかった。
子どもの癇癪の日々に疲れ果てうつ状態にその後、Aくんが小学校に進学。ミキさんのもとには今度は学童保育(主に昼間に保護者不在の小学生の授業終了後の放課後遊びや生活の場を提供)から「今日は遊び先で癇癪を起こしましたよ」と目に余る癇癪があったときや友達のケガにつながるような行為があったときに連絡があった。学童側はこちらが「どうですか?」と聞いたときに、今日はこんな様子でしたよと教えてくれることは度々あった。「毎日腹が立って、小さいことでイライラ気味でした。まあいいかと気分を切り替えるようにしていましたが、もう限界でした」(ミキさん)Photo by iStockAくんを学童保育に送っても精神的に休まるどころか常に緊張感が走る日々……。「仕事があるので学童には預けるけど、問題を起こさないか不安だった。心のよりどころがなくうつになっていたのかもしれません。夏休みになっても誰ともLINEをしていないし、絵文字も使用していないことに気がつきました」(ミキさん)このように、発達障害グレーゾーンの子をもつ親は周囲から理解が得られない場合、一人で孤立したり、悩みを抱えこんでしまう傾向がある。ただ、現在、発達障害の子を持つ親同士が集まり悩みを話し合う場が全国各地にある(筆者が主催する支援団体「よしてよせての会」でも、LINEオプチャを使い「ケアとも」という名称で365日ほぼ24時間無料でサポート中。気軽に連絡してきてほしい)。発達障害の疑いから1460日目、ようやく出た診断は…これまでAくんのことがなかなか理解されず苦しみ悩んできたミキさんに転機が訪れる。ミキさんは、ある相談センターの心理士にAくんの症状を伝えると、「必要な療育を受けるために、一度発達検査をチェックしてみてはいかがですか?」とアドバイスをうけた。そして、心理士から紹介された病院の医師の診察結果は、「自閉症スペクトラム」と「ADHD」。 「自閉症スペクトラム」とは、主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害の1つ。 この障害特性により、日常生活や社会生活において困難さを感じることがある。特徴は、下記の1.~7.の7つだ。1. 社会的な関係のもちづらさ 2. コミュニケーションの困難 3. 特徴的な行動や動作 4. 活動や興味の範囲が狭い 5. 変化に対する不安や抵抗 6. 社会的なイマジネーションの課題 7. 感覚の過敏さと鈍さ「ADHD(注意欠如・多動症)」とは、発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難、順序立てて行動することが苦手、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態。12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断される。ミキさんがAくんを「知的な遅れはないものの発達障害じゃないかな?」と疑問をもちはじめた1460日目の出来事。Aくんの場合、「自閉症スペクトラム」は、上記の1、3、5でADHDは「落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難」に以前から該当しているように思える。診断がつくまで3年半も要するのは今後の課題である。一時保育の年齢制限延長などの支援が必要現在Aくんが7歳になったミキさんは、知的障害がない発達障害の子どもについて認知度のアップや一時保育の年齢制限の見直しが不可欠と話す。「知的障害がないから発達障害じゃないとは限らないので理解が深まればと思いますし一人ひとりに細かいケアが必要です。学童があるので仕事にはそれほど差し支えませんが、親がリフレッシュや自己研鑽したいとき、市内のイベントなどの一時保育はすべて未就学児対象なので、それでは諦めないといけませんよね。例えば、一時保育は小学校就学前までが対象です。小学1年生は一時保育対象外です」(ミキさん) ミキさんのように共働き家庭が増える中、現場のマンパワーの問題もあるが、一時保育をせめて小学校低学年までに延長してはどうか。 さらに、ミキさんは発達障害の現在の高校受験体制に不安があるという。「発達障害で通級指導でない場合、高校進学時に内申点が低くなる可能性があるんです。まだまだ未整備なことが多いです」(ミキさん)現在、全国で発達障害の優遇処置を実施しているのは、主に東京都と神奈川県の2県のみ。東京都は「エンカレッジスクール」、神奈川県の「クリエイティブスクール」は入学試験も内申もない公立高校。その他の地域の高校も今後増加が見込まれる。昨年末、文部科学省が全国の小中高生で発達障害の可能性がある人数を公表した。それによると、小中学生の8.8%が発達障害の可能性があるのが分かり、前回調査から2.3ポイント上昇。小学1年は12.0%で、小学2年の12.4%についで2番目に多い。35人学級で計算すれば、1クラス4人とけっして少なくない数字であり、発達障害グレーゾーンを含めるとさらに多いだろう。また、「授業時間内に教室内で個別の配慮・支援を行っているか」については、小学・中学校は行っているが54.9%、「行っていない」が43.2%とほぼ半々である。今、学校は教員不足が問題視され個別指導や配慮に限界はあるだろう。できる学校から一歩ずつ進めていくことに期待したい。
その後、Aくんが小学校に進学。ミキさんのもとには今度は学童保育(主に昼間に保護者不在の小学生の授業終了後の放課後遊びや生活の場を提供)から「今日は遊び先で癇癪を起こしましたよ」と目に余る癇癪があったときや友達のケガにつながるような行為があったときに連絡があった。
学童側はこちらが「どうですか?」と聞いたときに、今日はこんな様子でしたよと教えてくれることは度々あった。
「毎日腹が立って、小さいことでイライラ気味でした。まあいいかと気分を切り替えるようにしていましたが、もう限界でした」(ミキさん)
Photo by iStock
Aくんを学童保育に送っても精神的に休まるどころか常に緊張感が走る日々……。
「仕事があるので学童には預けるけど、問題を起こさないか不安だった。心のよりどころがなくうつになっていたのかもしれません。夏休みになっても誰ともLINEをしていないし、絵文字も使用していないことに気がつきました」(ミキさん)
このように、発達障害グレーゾーンの子をもつ親は周囲から理解が得られない場合、一人で孤立したり、悩みを抱えこんでしまう傾向がある。
ただ、現在、発達障害の子を持つ親同士が集まり悩みを話し合う場が全国各地にある(筆者が主催する支援団体「よしてよせての会」でも、LINEオプチャを使い「ケアとも」という名称で365日ほぼ24時間無料でサポート中。気軽に連絡してきてほしい)。
これまでAくんのことがなかなか理解されず苦しみ悩んできたミキさんに転機が訪れる。
ミキさんは、ある相談センターの心理士にAくんの症状を伝えると、「必要な療育を受けるために、一度発達検査をチェックしてみてはいかがですか?」とアドバイスをうけた。
そして、心理士から紹介された病院の医師の診察結果は、「自閉症スペクトラム」と「ADHD」。
「自閉症スペクトラム」とは、主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害の1つ。 この障害特性により、日常生活や社会生活において困難さを感じることがある。特徴は、下記の1.~7.の7つだ。1. 社会的な関係のもちづらさ 2. コミュニケーションの困難 3. 特徴的な行動や動作 4. 活動や興味の範囲が狭い 5. 変化に対する不安や抵抗 6. 社会的なイマジネーションの課題 7. 感覚の過敏さと鈍さ「ADHD(注意欠如・多動症)」とは、発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難、順序立てて行動することが苦手、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態。12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断される。ミキさんがAくんを「知的な遅れはないものの発達障害じゃないかな?」と疑問をもちはじめた1460日目の出来事。Aくんの場合、「自閉症スペクトラム」は、上記の1、3、5でADHDは「落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難」に以前から該当しているように思える。診断がつくまで3年半も要するのは今後の課題である。一時保育の年齢制限延長などの支援が必要現在Aくんが7歳になったミキさんは、知的障害がない発達障害の子どもについて認知度のアップや一時保育の年齢制限の見直しが不可欠と話す。「知的障害がないから発達障害じゃないとは限らないので理解が深まればと思いますし一人ひとりに細かいケアが必要です。学童があるので仕事にはそれほど差し支えませんが、親がリフレッシュや自己研鑽したいとき、市内のイベントなどの一時保育はすべて未就学児対象なので、それでは諦めないといけませんよね。例えば、一時保育は小学校就学前までが対象です。小学1年生は一時保育対象外です」(ミキさん) ミキさんのように共働き家庭が増える中、現場のマンパワーの問題もあるが、一時保育をせめて小学校低学年までに延長してはどうか。 さらに、ミキさんは発達障害の現在の高校受験体制に不安があるという。「発達障害で通級指導でない場合、高校進学時に内申点が低くなる可能性があるんです。まだまだ未整備なことが多いです」(ミキさん)現在、全国で発達障害の優遇処置を実施しているのは、主に東京都と神奈川県の2県のみ。東京都は「エンカレッジスクール」、神奈川県の「クリエイティブスクール」は入学試験も内申もない公立高校。その他の地域の高校も今後増加が見込まれる。昨年末、文部科学省が全国の小中高生で発達障害の可能性がある人数を公表した。それによると、小中学生の8.8%が発達障害の可能性があるのが分かり、前回調査から2.3ポイント上昇。小学1年は12.0%で、小学2年の12.4%についで2番目に多い。35人学級で計算すれば、1クラス4人とけっして少なくない数字であり、発達障害グレーゾーンを含めるとさらに多いだろう。また、「授業時間内に教室内で個別の配慮・支援を行っているか」については、小学・中学校は行っているが54.9%、「行っていない」が43.2%とほぼ半々である。今、学校は教員不足が問題視され個別指導や配慮に限界はあるだろう。できる学校から一歩ずつ進めていくことに期待したい。
「自閉症スペクトラム」とは、主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害の1つ。 この障害特性により、日常生活や社会生活において困難さを感じることがある。特徴は、下記の1.~7.の7つだ。
1. 社会的な関係のもちづらさ 2. コミュニケーションの困難 3. 特徴的な行動や動作 4. 活動や興味の範囲が狭い 5. 変化に対する不安や抵抗 6. 社会的なイマジネーションの課題 7. 感覚の過敏さと鈍さ
「ADHD(注意欠如・多動症)」とは、発達水準からみて不相応に注意を持続させることが困難、順序立てて行動することが苦手、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であるなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こっている状態。12歳以前からこれらの行動特徴があり、学校、家庭、職場などの複数の場面で困難がみられる場合に診断される。
ミキさんがAくんを「知的な遅れはないものの発達障害じゃないかな?」と疑問をもちはじめた1460日目の出来事。
Aくんの場合、「自閉症スペクトラム」は、上記の1、3、5でADHDは「落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難」に以前から該当しているように思える。診断がつくまで3年半も要するのは今後の課題である。
現在Aくんが7歳になったミキさんは、知的障害がない発達障害の子どもについて認知度のアップや一時保育の年齢制限の見直しが不可欠と話す。
「知的障害がないから発達障害じゃないとは限らないので理解が深まればと思いますし一人ひとりに細かいケアが必要です。学童があるので仕事にはそれほど差し支えませんが、親がリフレッシュや自己研鑽したいとき、市内のイベントなどの一時保育はすべて未就学児対象なので、それでは諦めないといけませんよね。例えば、一時保育は小学校就学前までが対象です。小学1年生は一時保育対象外です」(ミキさん)
ミキさんのように共働き家庭が増える中、現場のマンパワーの問題もあるが、一時保育をせめて小学校低学年までに延長してはどうか。 さらに、ミキさんは発達障害の現在の高校受験体制に不安があるという。「発達障害で通級指導でない場合、高校進学時に内申点が低くなる可能性があるんです。まだまだ未整備なことが多いです」(ミキさん)現在、全国で発達障害の優遇処置を実施しているのは、主に東京都と神奈川県の2県のみ。東京都は「エンカレッジスクール」、神奈川県の「クリエイティブスクール」は入学試験も内申もない公立高校。その他の地域の高校も今後増加が見込まれる。昨年末、文部科学省が全国の小中高生で発達障害の可能性がある人数を公表した。それによると、小中学生の8.8%が発達障害の可能性があるのが分かり、前回調査から2.3ポイント上昇。小学1年は12.0%で、小学2年の12.4%についで2番目に多い。35人学級で計算すれば、1クラス4人とけっして少なくない数字であり、発達障害グレーゾーンを含めるとさらに多いだろう。また、「授業時間内に教室内で個別の配慮・支援を行っているか」については、小学・中学校は行っているが54.9%、「行っていない」が43.2%とほぼ半々である。今、学校は教員不足が問題視され個別指導や配慮に限界はあるだろう。できる学校から一歩ずつ進めていくことに期待したい。
ミキさんのように共働き家庭が増える中、現場のマンパワーの問題もあるが、一時保育をせめて小学校低学年までに延長してはどうか。
さらに、ミキさんは発達障害の現在の高校受験体制に不安があるという。
「発達障害で通級指導でない場合、高校進学時に内申点が低くなる可能性があるんです。まだまだ未整備なことが多いです」(ミキさん)
現在、全国で発達障害の優遇処置を実施しているのは、主に東京都と神奈川県の2県のみ。東京都は「エンカレッジスクール」、神奈川県の「クリエイティブスクール」は入学試験も内申もない公立高校。その他の地域の高校も今後増加が見込まれる。
昨年末、文部科学省が全国の小中高生で発達障害の可能性がある人数を公表した。それによると、小中学生の8.8%が発達障害の可能性があるのが分かり、前回調査から2.3ポイント上昇。小学1年は12.0%で、小学2年の12.4%についで2番目に多い。35人学級で計算すれば、1クラス4人とけっして少なくない数字であり、発達障害グレーゾーンを含めるとさらに多いだろう。
また、「授業時間内に教室内で個別の配慮・支援を行っているか」については、小学・中学校は行っているが54.9%、「行っていない」が43.2%とほぼ半々である。
今、学校は教員不足が問題視され個別指導や配慮に限界はあるだろう。できる学校から一歩ずつ進めていくことに期待したい。