24~25日の寒波に伴う強風の影響により、熊本県沖の有明海で、養殖ノリの漁場に深刻な被害が出た。
県漁業協同組合連合会が26日に始めた調査に同行すると、支柱が折れて傾き、普段は海面付近に整然と広がるノリ網が巻き付いて海上につるされていた。赤潮被害による不作に改善の兆しが出てきた中での打撃に、漁業者は「育てたノリが一日で皆無になった」と落胆した。
調査には県漁連や県、熊本市の職員らが参加。漁船で同市の沿岸に広がる漁場を回り、支柱やノリ網の被害状況を確認した。
熊本地方気象台によると、県内では24日午後に宇城市三角町で最大瞬間風速23・3メートルとなり、1月の観測史上最高を記録した。
県漁連によると、ノリを養殖する16漁協のうち、15漁協から被害報告があり、荒尾や熊本北部など県北の漁協では壊滅状態に近いという。熊本市の小島漁協も被害は深刻で、惨状を目の当たりにした吉本勢治組合長は「目の前が真っ暗になった。せっかく育てたノリが一日で皆無になり、むなしい」と涙をにじませた。
有明海では今季、赤潮や少雨の影響で色落ちなどの被害が出て、生産量が前年の6割に減少。最近は黒みが回復傾向で、質の良いノリが育っていたという。
川口漁協(熊本市)所属の漁業者(57)は、約2500本の支柱のうち1~2割が被害を受け、支柱の差し替えやロープの締め直しなど修復作業に追われた。「ノリ養殖40年で初めての経験。自然相手なので仕方がないが、歯がゆい気持ちでいっぱいだ」と肩を落とした。
ノリの収穫は今が最盛期で、3月頃まで続く予定だが、復旧が困難な漁場もあるとみられる。また、共済の補償が適用されない支柱や網の修復・購入費用も漁業者の大きな負担になるため、県漁連の藤森隆美会長は「みなさんが安心できるよう県や市には応援をお願いしたい」と訴えた。(石原圭介)