凛々しい表情で卒業アルバムに収まる青年。連続強盗・窃盗事件で、「ルフィ」と名乗る「指示役」のリーダーとみられる、渡辺優樹(わたなべ・ゆうき)容疑者の高校時代の姿だ。
高校時代の同級生:(渡辺容疑者は当時)普通に陽気な感じだったのかなと思います。体格も良かったので。
渡辺容疑者と同じ剣道部だった高校時代の同級生:体育祭・学校祭の時にクラスを盛り上げていた。学校の中心みたいな感じで。いい男だったんじゃないかなと、モテたのではないかと。
同級生たちが語る、当時の人柄。さらに…
渡辺容疑者と同じ剣道部だった高校時代の同級生:剣道部の主将をやっていた。(練習を)とりあえず毎日ひたすら夕方もやっていた。特に真面目だった。
明るく、真面目で、文武両道。そんな渡辺容疑者はどこで道を踏み外したのか…。
Mr.サンデーは渡辺容疑者のルーツ・北海道と、今、収容されているフィリピンを取材。「ルフィ」と名乗る指示役の輪郭が徐々に浮かび上がってきた。
カメラはフィリピンの首都・マニラ郊外へ。目指したのは「ビクタン収容所」。
2022年から日本各地で相次いでいる、同一犯行グループが関与しているとみられる強盗・窃盗事件。日本の実行犯に遠隔で指示している「ルフィ」と名乗る指示役が、ビクタン収容所に入っているという。
フィリピン当局は、その「ルフィ」が複数いて、リーダーが「渡辺優樹」だと明らかにした。
到着したのは現地の警察署。その敷地内にビクタン収容所はあった。取材に応じてくれたのは、週5日収容所内で働いている清掃員。渡辺容疑者の写真を見てもらうと…。
ビクタン収容所で働く清掃員:中にいます。見たことがあります。「ワタナベ」という者です。
ディレクター:なぜ彼の名前を知っているのですか?
ビクタン収容所で働く清掃員:よく見かける人ですし、彼が名前を呼ばれている時がありますから。
この収容所の中から、携帯電話で犯行の指示を出していたとみられるが…。
ディレクター:彼は携帯を持っていますか?
ビクタン収容所で働く清掃員:携帯などは事務室でキープされていますから。携帯を使えるのは朝の9時から夕方の5時までです。
ディレクター:携帯で何をしているのですか?
ビクタン収容所で働く清掃員:そこまでは分からないですね。さっぱり理解できないんです、日本語で会話しているから。
不法滞在で、5カ月ほどビクタン収容所に収監されていた、作家のキム氏は…。
約4年前に「ビクタン収容所」入所 キム・ユニョン氏:収容所は刑務所とは明確に違います。日本人はそれが理解できないので、「どうやって中から携帯で指示できるの」と言いますが、収容所はお金も使えるし、体が出られないだけで、基本的なことはできます。だから携帯の使用時間が与えられますし、時間外も使おうとする人たちは普通、携帯を2、3台持っています。
キム氏は、今も収容所内にいる人たちとSNSで繋がり、中からの情報を得ているというが、27日、渡辺容疑者を巡って大きな変化があったという。実際のやり取りを見せてもらうと…
収容者:渡辺はVIPルームで中国人3、4人と一緒に生活しているけど、きのうの夕方、入管の職員7人が入って、部屋を全部漁っていったらしいです。
約4年前に「ビクタン収容所」入所 キム・ユニョン氏:携帯を没収されたんですか?
収容者:すべて没収したからその可能性が高いでしょう。どうせ入管の職員らも、携帯電話が一番の手掛かりなので。
自らは収容所の中にいて、日本とフィリピンを揺るがす渡辺容疑者。どんな人物かメッセージで問い合わせると…
収容者:渡辺は“フィッシング詐欺のゴッドファーザー”として知られるほど、鋭敏な頭とカリスマ性を持っている、各種の詐欺犯罪をした人物だ。ビクタンの中にいる日本人のほとんどはフィッシングやオンラインカジノをやって捕まったので、渡辺に忠誠を尽くしている可能性が高く、ビクタン内で渡辺の雑務を担っていると思われる。
さらに、収容所内の人物とSNSでつながるキム氏も…。
約4年前に「ビクタン収容所」入所 キム・ユニョン氏:(中の人に)渡辺のことを集中的に聞きました。人柄は穏やかで親切だと。ボスは存在感があるので、収容所内では紳士です。
さらに、渡辺容疑者の足跡を追って訪れたのは、ビクタン収容所から車で約2時間半のリゾート地。2年前、渡辺容疑者はここにフィリピン人を含む約10人のグループで来たという。
リゾート施設の従業員:渡辺は車を使っていた。フィリピン人のドライバーと女性が一緒だった。ボディーガードとドライバー、フィリピン人の女性4人ぐらいと一緒にいた。スキューバダイビングした後、ボートに乗っていた。
当時、この海を望むレストランで食事をしたというのだが…。
リゾート施設の従業員:女が携帯で電話していた。その後すぐにそこを去った。
なぜか、グループの中で渡辺容疑者と女性だけがこの場を去った。その直後…
リゾート施設の従業員:警察がやってきて捜査を始めた。彼らがここに来た時にはみんな逃げていた。
渡辺容疑者は事前に、警察の動きをつかんでいたのか。その後、収容所に拘束された後も…
約4年前に「ビクタン収容所」入所 キム・ユニョン氏:渡辺容疑者はフィリピンで訴訟中だそうです。日本に連れ戻されないよう女性の秘書を動かして、わざと訴訟を起こすんです。渡辺クラスなら秘書はいます。1日1回~2日に1回、電話すると来て雑務をするんです。
狡猾さと、組織の中での強い力がうかがえる渡辺容疑者。一体、その原点はどこにあるのか。
渡辺容疑者の出身地、北海道・別海町(べつかいちょう)。ここで幼少期から知る同級生が取材に答えてくれた。
渡辺容疑者と同じ剣道部だった高校時代の同級生:(渡辺容疑者を)“ゆうき”と呼んでいました。保育所が一緒で、小・中・高校は剣道で一緒でした。(高校では)2年生3年生差し置いても1年生の時からレギュラーをとって、北海道でも個人でベスト4とか、そんな感じの強さでした。僕は途中で妥協してしまったが、彼はそこを妥協せずにもう絶対に強くなるって思いだけでやっていたのではないかと思っていますね。
同級生によると、高校時代は主将を務め、新たに朝練を取り入れるほど剣道に打ち込んでいたという。さらに…
渡辺容疑者と同じ剣道部だった高校時代の同級生:いろいろな行事に取り組んでいました。明朗快活で学校の中心みたいな感じで一生懸命やっていた印象。
その後、大学への進学も…
渡辺容疑者と同じ剣道部だった高校時代の同級生:確か推薦で(大学)行ってます。ものすごく向上心しかない感じでしたね。ひたすら物事に励むところが純粋だったな。
まるで優等生を絵にかいたような評判。しかし、高校卒業からわずか2か月後、大学進学のために別海町から札幌に移った渡辺容疑者と再会すると、様子が一変していたという。
渡辺容疑者と同じ剣道部だった高校時代の同級生:2003年のゴールデンウィークですね。ススキノ通りですね。その時くらいから夜の世界に、昼夜問わずバイトしていたころもあったから、学校に行ってないっていうところもあったんじゃないかな。進学で札幌に行ってからものすごく人が変わったんじゃないかって思います。
優等生だった男に何が…?その後、渡辺容疑者が24歳の頃から札幌で親交があったという男性を取材すると、当時の印象をこう語った。
札幌時代の渡辺容疑者を知る飲食店経営者:頭の回転が速く、楽しく会話ができる人。女性に優しくて、モテていました。
男性によると、渡辺容疑者は若くして繁華街・ススキノで女性の接客を伴う飲食店を経営していた。その当時…
札幌時代の渡辺容疑者を知る飲食店経営者:自分のお店で人気ナンバーワンだった22歳の女性スタッフと結婚しました。子供が1人生まれたと聞きましたが、すぐに別れたようです。
一方、店の経営は順調だったといい、2010年にいったん店を閉めると…
札幌時代の渡辺容疑者を知る飲食店経営者:その後、ススキノの一等地で、100坪という大きなお店をオープンしました。
渡辺容疑者はさらにグレードアップした店を立ち上げたという。ところが…
札幌時代の渡辺容疑者を知る飲食店経営者:とてもいい立地で数回だけ遊びに行きました。しかし、そのお店はすぐになくなってしまいました。はやったイメージもなく、いつの間にか閉店していました。
こうした経緯が、その後の一連の事件に繋がったのか。2019年、フィリピンで摘発された特殊詐欺グループで主要メンバーとして関わった疑いがもたれ、フィリピンの収容所で拘束されている間、組織的な強盗や窃盗を、実行犯に遠隔で指示してきたとみられている。
札幌で親交があった男性は…
札幌時代の渡辺容疑者を知る飲食店経営者:容疑者の名前が出た時は驚きました。でも、あいつだったら何かやりかねないなとも思いました。
一方、同級生は、渡辺容疑者に対しこんな思いを口にした。
渡辺容疑者と同じ剣道部だった高校時代の同級生:今でも同級生の中では、信じられないという声は上がっている。夢であってほしいが、夢じゃないんだなと。早く帰ってきてほしい、早めに帰国してほしいかなって。逃げずに償ってほしいですね。
(「Mr.サンデー」1月29日放送より)